猫の保護には早起きを!
全身にアドレナリンが満ちた私の目の前に仔猫の姿が見えた。今でも信じられないが、私はタイミングを見計らって手を突き出し見事に仔猫をがっちり掴んだのだ。保護する才能あると言われる。いやいや私だけならとっくに寝ている。さすがNPO法人の方々。意識が違う、執着が違うのだ!
さて、ついに目的の仔猫達も捕まえた。あのリフォームし終えた部屋を開けると捕獲器や猫のケージがところ狭しと並んでいる。私は気分が悪くなりそうだった。そう、この時、心から後悔していた。とんでもないことを思い立ってしまったと泣きたくなった。何せ総勢20匹の猫たちが、怒ってフーフー、にゃーにゃー鳴いているのだから。とにかく、私は一旦、思考を止める。まずは寝なくては。ドアを閉めると、ふらふらとソファに倒れこみそのまま寝てしまった。
今となっては、どうしていたか、はっきりとは思い出せない。猫を保護していた時のルーティンは、朝5時に起きる、飼い猫達に餌をやる、意を決して保護猫の部屋をあける、餌をやる、水を替える、トイレの掃除をする、といった流れ。大人猫はTNRを施すまで1週間ほど待たねばならなかったから、しばらく続くことになった。
だから捕まえられて不安な猫たちが哀れで、せめて美味しいものを食べさせたいと漁港で作ったのが売りのマグロの缶詰を与えていた。今思えば、普通の餌で良かったのだ。何より餌代が嵩んだ。手間が掛かった。感情移入のし過ぎが私の欠点だよ!
毎朝缶詰を開ける。その音に猫たちが色めきだつ。100円ショップで買ったお皿に、1匹につきスプーン2杯を分けていく。その度にお皿とスプーンが当たり、カツンと音がする。カツン、カツンという音を聞きながら、私、一体何をしてんだろうと自問自答。一体、この保護活動に終わりはあるのだ
ろうか。この猫の糞尿の臭いがこの部屋から消えるのだろうか。果たしてこの部屋が、最初の目的どおり「私のアトリエ」として使えるのだろうか。
寝ぼけた頭で考えてもポジティブな考えにはならない。何より、この案件をおわらせるだけの器量が私にあっただろうか。春だと思っていた季節はいつの間にか初夏になり、蝉の声がせわしなく聞こえてくるようになっていた。