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飛び降り現場はこんなもん

午後11:30分頃だっただろうか。
あの日は雨が降っていた。

10階から飛び降りたらしい。

現場に着いた頃には、赤色灯を炯々とさせた消防やら警察やらがごった返していた。


自販機の隣に設置されてるプラスチックのゴミ箱は粉々に破壊されている。

無数の空き缶は道路へ散乱していた。

植栽を掻き分け、同業の人溜まりから探す。

多量の血液が地面へ流れ出ているのを目撃し、そこに彼女はいた。

傷だらけの顔と腕。髪には血がへばりついている。

右下肢は外旋し、腕もあらぬ方向へ向いている。

呼吸はあった。恐らく植栽がクッションになったんだろう。

早急にロングボードに固定し車内へ搬送する。

バイタルをとる。サットがかなり低い。

リザーバを口にあてがい「堕ちるなよ」と訴えかける。

車は病院へ向かい始める。

「痛い……痛い……」

微かな声が車内に響く。

検眼ライトを当てるため目を開けた。白目を剥いている。

プローブやら体温計やら血圧計やら、諸々が赤く染まる。

病院に到着した。

ストレッチャーから移乗させると救急医達は一斉に彼女を囲む。

裁ち鋏で服を切り上裸にさせる。

私たちの仕事は市民の非日常へ駆けつけ、助けを求める傷病者を引っ張り出し、病院へ引き継ぎをするここまで。

CPAには至らなかったが、もう間に合わないだろう。

そんなことを考えながら私は、私たちの日常へ戻った。

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