『君だけがいない夏』 考察

主な登場人物

  • そら  (男の子)

  • ひまり (女の子 白猫)

その他 登場人物

  • 父親 母親 (汚い大人)

  • クラスメイト

  • 先生



『ひまり』の名前の由来
名付け親はそらくんだと思われます。
ひまりちゃんは捨てられた子猫であったことから名前は無かったと考えられます。
そらくんのセリフで
「不思議と君と一緒にいるとひだまりのようなあったかい気持ちになれる 〈旧譜歌詞ブックより引用〉
というものがあり、そのことから『ひまり』と名付けたのかもしれません。


曲の時系列

曲を時系列順に並べました。横の数字は月日です。

  1. シャリューゲ   7.20

  2. 並んだ影法師   9.05

  3. サマーフレーム  8.31

  4. 晴ればれアンサー 7.23

  5. 徒然ファクター  7.28

  6. 霞む夏の灯    8.05

  7. 8.32     8.32

  8. エテルノーブ   

  9. さよならの朝   8.42

  10. 泡沫の夢        9.01

  11. 僕らの夏はまた巡って  7.20  

  12. 私だけがいない夏    

となります。日付も重要になってきますが、後ほど説明します。
時系列順に考察していきます。


シャリューゲ 

曲名の意味は『猫と噓つき』です。(*Lunaさん回答)
これは嘘つきになった少年と捨てられた子猫が出会う話です。

この曲にはMVがあり、動画に登場するセリフや歌詞が重要になってきます。

注目すべき点は

  1. そらくんに向かって吹き出しに表示される文字

  2. そらくんから出た吹き出しに表示される文字

  3. 白文字

  4. 赤文字

の4つとなります。それぞれの意味は以下の通りです

1  そらくんガ耳を塞ぎたくなるような言葉 
2.3 そらくんの言葉、本音
4  汚い本音

となります。
それぞれが何番にあたるかは必要な所だけ説明するので気になる方は曲を聴きましょう! 

以下 曲の冒頭に表示されるセリフです。

「落ちた順位、やっと戻ったのね、ほんと心配させないで」
「全く、今は大事な時期なんだ、他のことに現を抜かすな」
「もうすぐ夏休みだからって気を抜かないようにしなさいね」
「お前にはお父さんも期待してるんだ、この調子で頑張れよ」
 嘘に殺される僕

順番に考察していきます。

「落ちた順位、やっと戻ったのね、ほんと心配させないで」

これは母親のセリフです。この心配というのは本来親が持つべき『心配』とはかけ離れたものです。
彼女が心配しているのは子ではなく順位なのです。

「全く、今は大事な時期なんだ、他のことに現を抜かすな」

父親のセリフです。
シャリューゲのイラストでは服装、体系からそらくんは小学生だと思われます。
大事な時期ということから中学受験付近であると考えられ、小学校6年生だと推測できます。

「もうすぐ夏休みだからって気を抜かないようにしなさいね」
「お前にはお父さんも期待してるんだ、この調子で頑張れよ」
嘘に殺される僕


この『嘘』というのは母親の『心配』と父親の『期待』のことだと僕は考えました。
以上のセリフの後、歌い出しです。


死にたさだけじゃ誰も 慰めちゃくれない 癒えない あぁ 真面目に生きて 得したことなんて精々頭の腐った大人に 群がられたことくらい
「はいわかったわかったうるさい」
僕の初恋は玉砕 初めて君に向けられた声
「あれもこれもいらない」
他人の気持ちなんて知らない いつだって自分が一番ね 笑って泣いて どいつもこいつも 腹ん中は真っ黒 平気で人を殺すような 嘘をもう 吐いて吐いて吐いて
騒いで湧いて どいつもこいつも 頭ん中は真っ白 平気で自分捨てるような 嘘をもう 吐いて 吐いて

頭の腐った大人とは父親、母親のことです。

ここの間奏でクラスメイト、先生のセリフが表示されます。

「よっ、暗い顔してどーした?」
「そらくん、消しゴム落ちたよ、はい!」
「何か悩みごととかあったらいつでも言ってくれよ!」
「いつも学年1位で本当にすごいな。皆も見習うように」
「あ、すみません、ノート回収してて…えっと、名前何でしたっけ?」
「なーんかいつも何考えてんのかわかんないよねー」
「ごめーん急用入って!掃除当番、変わってもらってもいい?」
「すまん!今日も宿題、写させて欲しい!いつも助かるよ!」
赤文字「物拾ってあげたのにめっちゃ愛想悪くてやばかったー(笑)」
赤文字「え?席隣じゃん、うわー運悪いねマジどんまーい」
赤文字「あいつちょっと仲良くするだけで全部写させてくれるぜ(笑)」
赤文字「毎日勉強ばっかりしてさ、何が楽しくて生きてんだろうな」

そらくんは学校にも家に居場所がありませんでした。
彼らが吐く嘘で自分を殺して生きているからです。
そらくんは彼らが持つ汚い本音を知っていながらも気づかないふりをして生きています。

2番目からはそらくんが周りと上手くやるために嘘をつくようになります。

皮肉さだけじゃ誰も 聞き耳立てやしない こうはなるまいと どこか線引きしただけ そのくせ同じような笑い声で生きている
「もうどうでもこうでもいいよ」
全部何も意味はないよ いつかの本音を溶かしてゆく
「それはそれはすごいね」
世辞の濃度は今日も濃いめ あっという間に脳がバカになる 暴いて飽いて どいつもこいつも 面の下は真っ青 自分だけを必死に守る 嘘をもう 吐いて吐いて吐いて 繋いで裂いてどいつもこいつも 足元は真っ暗 気づけば何も残らない 嘘をまた 吐いて 吐いて

そらくんはこうはなるまいと線引きしながらも、彼等と同じように笑い『それはそれはすごいね』と思ってもいない嘘を重ねます。

同じように嘘をついているうちに、彼等のもっと深い本音がそらくんには見えていきます。

《並んだ影法師》では『弱い物をいじめるのは』という歌詞がありこの学校でもいじめのようなものがあったのかもしれません。

『どいつもこいつも面の下は真っ青』
『自分だけを必死に守る嘘を吐いて』


誰もが弱い自分を守るために嘘を吐いていたのです。またそれはそらくんも同じでした。

「だってこうしないと淘汰されてしまうんだ」
「これでもう笑われないで済むんだからいいじゃん」
「薄っぺらくて下らない奴らの仲間入り」
「これでよかったんだ」
「虚しいなあ」

『虚しいなあ』 このセリフだけそらくんの胸に表示されていることからそらくんの本音だと考えられます。
その後、周りから向けられるだけだった吹き出しが初めてそらくんから出てCメロに入ります。

「あぁ君と一緒で独りぼっちだな」
捨てられた子猫 頬寄せた 人はみな自分勝手で嘘つきなんだ 君はきっと何も悪くないよ 蝉の声がひどくうるさい 夏だった いつからか心の声が ノイズにまみれて あの頃の僕が隅で埋まって 泣いて泣いて泣いて どうせあのままで良くて 別にそれで良くて 僕は一体全体何のために 誰と笑ってんだっけ どいつもこいつも 腹ん中は真っ黒 平気で人を殺すような 嘘をもう 吐いて吐いて吐いて 黙ってたって あいつもそいつも いつか殺されたんだ だから今日も自分を守る 嘘でまた 泣いて 泣いて

『君と一緒で独りぼっちだな』

そらくんは嘘をつくようになってクラスメイトとも一緒に笑ったりお世辞を言うような『友達』のような関係になれています。
だけどそらくんが自分を独りぼっちだと言うのは、そんな関係を友達とは認識していないのだと思います。

『君はきっと何もわるくないよ』

きっと自分勝手で嘘つきの人間に捨てられたであろう子猫に言います。それが白猫、ひまりちゃんとの出会いでした。

嘘をつき続けていたそらくんは、いつからか心の声がノイズにまみれて聞こえなくなってしまします。
これは『自分を見失った』ということです。
何のために自分が笑っていたのかもわからなくなってしまいます。

「自分なんて簡単に捨てられた」
「でも今の僕はもっと惨めでもっと醜い」
「居場所なんてどこにもなかった」
「信じられる人なんて誰もいなかった」
白文字 「誰か」

最後の白文字の「誰か」 では背景が黒く塗りつぶされてます。
ただ文字と同時に白く残っていたのは白猫でした。
助けを求めた誰かが白猫だったということを示唆していると思われます。
実際次の曲では、そらくんは白猫、つまりひまりちゃんの前では本音を出せるようになっています。
ひまりちゃんのことだけは信じることができた、ということだと思います。

猫に裏表なんてないですからね。

並んだ影法師

曲名は猫と少年の並んだ影を差しています。
その影は何度も伸びては消えて、少しずつ大きくなっていきます。

人は そう簡単に 変われはしない 僕だってそうだ いつかのまま 逃げ続けて 進めないまま 閉じこもっている

『いつか』というのが何を差しているのかは、はっきりとはわかりません。ここは曲を聴いた人がそれぞれ逃げた過去を当てはめるところなのかもしれないですね。

ただ憶測を述べるとすれば、この曲ではそらくんとひまりちゃんがのんびりと夏休みを過ごすことが出来ています。
中学受験はほとんどの場合冬に行われます。

母親も言っていましたが受験も控える忙しい時期に、そんなふうに夏休みを過ごせるとは思えません。
きっと親や先生にも色々言われるだろうと思います。

勉強をすること、
言う通りのいい子であること、

そういったものから逃げ出した日が『いつか』であり今も『逃げ続けて、進めないまま閉じこもってる』ということなのかもしれません。

そんなことができるのもまた、ひまりちゃんが傍にいたからなのだと思います。

下らない愚痴を吐いたり 何気ない時も 気づけば君が傍にいてくれた あぁ 君は喋れない 僕の言葉もわからない それでいいんだ いてくれたら 慰めの台詞も 気休めの愛想笑いも 全部いらない 同じ布団で眠ろうよ

《シャリューゲ》では人の汚い表裏が強調されています。
それらは、そらくんが耳を塞ぎたくなるような言葉ばかりでした。
猫であるひまりちゃんには言葉もなく、愛想笑いもない、ただ傍にいてくれるだけ。
だからこそ安心して一緒にいられたのだと思います。

君は もしかしたら 僕らのことを 嫌ってるかも それもそうだ 人ってやつは この世で一番 残酷なんだよ 弱いものをいじめるのは 誰かの上に 立っていないと不安になるから あぁ 君は笑わない 共に涙も流さない それでいいんだ いてくれたら大げさな台詞も 無理に合わせた本音も 全部いらない 同じ夕日を眺めようよ
並んだ二人の影も 少しは大きくなったかな 信じられないものもいつか 許せる日が来るかな 君と過ごす日々の中で 見えてきたものがあったから

この『見えてきたもの』については旧譜のサマーフレームの歌詞ブックに繋がっていると思われます。

「君と一緒で、独りぼっちだな」
「少しずつだけど、今まで見えていた景色が変わってきたような、そんな気がする」
「不思議と君と一緒にいるとひだまりのようなあったかい気持ちになれる」
「過去は変えられないから、自分が変わらないといけないね」

旧譜歌詞ブック

そらくんはひまりちゃんと出会い、自分がどうするべきか見え始めてきました。しかし、突然に別れがやってきます。

君が歩かない なぜか瞼も開かない 心地いい鈴の 音も聴こえない 特別な想い出も心を満たす幸せも 望まないから 目を開けてよ 君と話せない 君の言葉がわからない ほんとはずっと 色んなことを 聞いてみたかったよ 何もしてあげられなかったけど 温もりは与えられたかな

「……どうして僕を置いて先にいってしまったの?」

ひまりちゃんと出会い、変わりかけていたそらくんですが、ひまりちゃんがいなくなったことで元に戻ってしまいます。

ひまりちゃんとの別れの後、推測ですが、そらくんは部屋に閉じこもるようになります。

学校などには行っているかもしれませんが、少なくとも夏休みの間は外には出ないようになったのは確かです。

何故なら、夏には人の姿になったひまりちゃんがそらくんを探して一人町を歩いているからです。

部屋にこもって幾度か夏が過ぎ、ある夏、そらくんが『ただ、なんとなく』外に出ることで物語は動き出します。
それが《晴ればれアンサー》の場面となりますが、その前にひまりちゃん目線の曲である《サマーフレーム》があります。

サマーフレーム

曲名の意味はそのままだと思います。

あの日の出逢いから 全てが始まった 姿形を変えて 二人の物語は 夏を巡っていく
変わらない風景 変わらない匂い 夏は穏やかに過ぎていく その時間は綺麗で
どこか懐かしい けれど最後はいつも同じ 今年もまた君を見付けられなかった 伝えたい言葉は たった一つだけなのに

『伝えたい言葉』というのは『自分を見失わないで』か『夏を嫌いにならないで』『ありがとう』かなと思います。

ひまりちゃんの姿について

ひまりちゃんは白いワンピースの女の子に姿を変えていますが、これはひまりちゃんが願った結果、起きたことです。

『願い』はこの作品で重要なものとなっていて、この作品における不思議な現象は全てそらくんとひまりちゃんの『願い』と重なります。

『神様的な何か』によってそれは起きているのかもしれないですね。
ここで重要となってくるのが『君だけがいない夏』のAlbum XFDとコンセプトライブのセリフです。

私を見つけてくれたのは 一人の少年だった その小さな背中はどこか寂しげで ずっと傍にいてあげられたら そう思った けれどそれは 過ぎた願いだったのかもしれない それでも私は

『君だけがいない夏』Album XFD

『過ぎた願い』というのは猫であるひまりちゃんはいずれ先に死んでしまうためずっと傍にいることはできない、ということだと思います。
コンセプトライブの言葉についてはうろ覚えなので、こんなニュアンスの言葉だったんだな、程度に見てください。

少年の力になりたい
今は難しくても
もし、同じ言葉を話せたら。
同じ姿だったら。

凪の記憶

といった風の言葉の後に白猫が少女に姿を変えました。
鳥井もありますし、なんかこう『神様的な何か』の不思議な力が作用したんだと思います。

サマーフレームの日付は8.31
そらくんとひまりちゃんが過ごした夏は7月から8月
なのでサマーフレームはそらくんと再会する前の独りで過ごした夏の話です。

予定もなく出かけよう サンダル履いて 白いワンピース 身にまとったら 人影もない地平線 切り取ってゆく 麦わら帽子 飛ばされぬように この町で何度目の夏になるかな なんでだろう もう次の君が恋しいよ さぁこの夏を巡る 数えきれないフレームを 取りこぼさないように 拾ってゆこう 目的地は決めないで 探検しよう ぬけがら一つ 目印に置いて この森で何度目の夕日になるかな あっという間に また一日が終わっちゃう さぁこの夏を巡る 数えきれないフレームを 取りこぼさないように 拾ってゆこう

余談ですが麦わら帽子は誰かの忘れ物らしいです。
ここからは旧譜と新譜で歌詞が異なります。
旧譜

このまま終わらないで 終わらないで 何も変わらないままの夏が嫌いだったの
誰かに見つけて欲しいなんて思った夜は 忘れかけの子守歌で 眠るの

旧譜  サマーフレーム

新譜

いつまでこの世界のことを 美しいと思えるのかな 暑いのはちょっと嫌いだけど忘れかけの子守歌で 眠ればきっと また明日のことを好きになれるはずだから
きっと、出会えるはずだから

新譜 サマーフレーム

皆さんはどっちが好きですか?僕は両方です。
子守歌に関しては、コンセプトライブでわかばやしさんが鼻歌を歌う所から8.32の『ウォーオオ、ウォーオオ、オオオ』だと思います。

《サマーフレーム》はひまりちゃんがそらくんを探す話ですが、注目すべき点は夏が終わっていくのを悔やんでいることです。
まるで夏にしかそらくんに出会えないかの様です。
当然そらくんは秋も冬もいます。
このことからひまりちゃんは夏の間しか存在できないと考えられます。
夏が終わればより『不確かなもの』になるのだと思います。
そして、恐らく8.31日がひまりちゃんが現世にいることができる夏の最後の日となっています。

晴ればれアンサー

ひまりちゃんにとっては再開であり、そらくんにとっては何故か何処か懐かしい少女との出会いの話です。
《アンサー》というのはその出会いが偶然か必然かどちらかを《アンサー》を求めるということだと思います。

気づいたら僕は部屋を出ていた
ただ、なんとなく
いつかの夏を浮かべてしまったから
でもその姿を見た瞬間
僕は

MVの文字

前述しましたが、そらくんは白猫のひまりちゃんと別れた後部屋に閉じこもるようになります。
ただ『いつかの夏』を浮かべたことで外に出ます。
『いつかの夏』というのは白猫と過ごした夏のことを差しています。
その後『でも』と打消しの言葉が続いたのは猫のことを思い出して外に出たのにまったく別の少女に目を奪われてしまったからです。

波打つ海際 トクトク 脈打つ心が なんだかちょっとうるさくて 落ち着かないやいや 揺れてる陽炎 フラフラ 暮れてる自分が なんだかずっと不甲斐なくて 進めないやいや こんな夏には 昔のことを 思い出すんだ あぁ まだ醒めないな
君のこと 見つけちゃったんだ それはストライク 一目見たら もう 目が離せないさ ほら君と今 目が合ったんだ それは偶然か必然かは まだ わからないけど
確かめようか 教えてアンサー

子猫と出会ったのは、自分を見失い不甲斐ない時でした。
この夏でもまた自分を見失っていて、そんな夏には白猫を思い出してしまいます。
あの時白猫と過ごした夏をいまだに忘れられずそれはまだ覚めない夢の中にいるようでした。
そんなとき、海で出会った少女に一目惚れをしてしまいます。

靡いた君の髪 サラサラ 落ちる砂のように 君の奥に落ちてった 呆気ないやいや
こんな僕でも 分け隔てなく笑顔を向ける あぁ 侮れないな 君をまだ 知れてないんだ それはプロブレム 何故か僕は そう 不思議な気分さ ほら君が今 そこに立ってんだ 見失ってしまう前に その手を 繋ぎ留めたい 踏み出そうか 探してアンサー

 彼女に目が惹かれてしまうのは偶然ではなく彼女のことをどこか懐かしく感じることも要因となっています。

そらくんは少女の正体には気づかないものの、どこかで白猫の存在を感じ取っていました。

そしてもう一つ、そらくんがひまりちゃんを魅力的に感じたのは理由があります。
『不確かなものはいつだってどうしようもなく僕を惹きつけて離さない』
そらくんはひまりちゃんの存在の『不確かさ』を感じていたのかもしれません。

それは運命か
偶然か
繋がれた世界で

『繋がれた世界』というのはそらくんが生きる現実の世界とひまりちゃんがいる不確かな世界との繋がりをさしていると考えました。

そらくんがひまりちゃんの手をとったことにより、世界は繋がりました。
この『手を繋ぐ』という行為には大きな意味があり、今後も出てくるので覚えておいていただきたいです。

「どこかでお会いしましたか」 なんてお決まりの文句が 不意に出てしまったのは君が どこか懐かしいような そんな気が したから 暑さにやられてんのかな
君のこと 見つけちゃったんだ それはストライク 一目見たら もう 目が離せないさ 君に今 捧げちゃったんだ それはラビリンス 囚われたら もう 抜け出せやしないさ 物語は 始まってんだ それは偶然も必然も運命も関係ない 僕と君で あぁ 夏を巻き込んで 紡ぐよアンサー

そしてまた、夏が始まる

ひまりちゃんの方はすぐに少年がそらくんであると分かっていたと思います。
ただ正体を明かすわけにはいかず嘘をついてそらくんとまた夏を過ごしていきます。
《シャリューゲ》でわかるようにそらくんは自分を含め『嘘つき』が嫌いです。
そのことを知ってかひまりちゃんはそらくんに嘘をつくことに酷い罪悪感をかかえている事が《霞む夏の灯》ではわかります。
そうまでしてそらくんに嘘をついたのは何か理由があるのかもしれません。それは《霞む夏の灯》で語らせていただきます。

徒然ファクター

これは《晴ればれアンサー》のひまりちゃん目線とその後の話です。
重要な歌詞が多くあり今後の展開に大きく関わってきます。

弾けるように 色づいた砂浜 歌うアイツは 青空を独り占め夏を溶かした 自慢げなお日様 さぁ今日も一人 君を探す旅に出よう 何かすごいこと 起きたりして
そんな妄想 繰り返してる 忘れたころに 君が突然戸をノックした もしも運命的な何かが あるとしたらそれは 私のこと君が 見つけてくれたことだよね 二度とない偶然的な何かで 巡り合えた君だから わかったんだ どんな奇跡だって起こせちゃう きっと君はもう 覚えてないだろうけど 私にとっては まるで宝石のようで 「これでいいんだ」と そう思っていたのに どうしてこんなに ワガママになってしまったのですか

『きっと君はもう覚えていないだとうけど』『これでいいんだ』
の所は、自分のことを思い出してほしいけど、正体を話すわけにはいかないという葛藤だと僕は考えました。

君と過ごす時間が ずっとこのまま続いたらいいな ほんとはだめだってわかってた それでも君にしかこの手は 繋げないことを 隠してたんだ

『それでも君にしかこの手は繋げない』

どうしてそらくんに限定されているのか。それはひまりちゃんが人になった『願い』にそらくんが含まれているからです。
そらくんの傍にいてそらくんと話をしたい、そらくんの力になりたいという願いが『神様的な何か』によって掬われ、ひまりちゃんは人の姿になりました。
『君と過ごす時間が ずっとこのまま続いたらいいな ほんとはだめだってわかってた』
ずっと続いてはいけないのは

『自分はいずれ消えてしまうから』
『自分と一緒にいると連れていってしまうから』

だと思います。
後者については《さよならの朝》でより詳しく書かれます。

どうしてだろう たまに君は 泣いてるような 顔で笑う

これは白猫のひまりちゃんの事を思い出しているのだと思います。
ひまりちゃんと一緒にいるとどうしても白猫の面影が見えてしまうのだと思います。
懐かしく思い、笑みがこぼれるけれど同時に泣きそうにもなってしまうのだと思います。

次は私が 君を支えてあげるから もしも革命的な何かが 繋いだ世界だとしたら 全てを賭けてもいい 何も無駄なんてないんだよ 決められた必然的な何かに 逆らってしまったとしても 信じたんだ 君の未来だってきっと変えられる

『決められた必然的な何かに逆らってしまったとしても』

君夏だけでなく色んな作品で多いのが、不思議な存在には世界の修正力が加わるというものです。過去を変えようとしても、色んな要因で防がれたり元に戻ったり。
ひまりちゃんの様に『死者が現世に現れた場合』には、その者はいずれ消え、記憶や記録が消されてしまう、という作品が多くあります。
『君だけがいない夏』にもおそらく世界の修正力、つまり『決められた必然的な何か』があり

君の未来だってきっと変えられる』

本来存在しないはずのひまりちゃんがそらくんの未来を変えることがそれに逆らうことなのだと考えます。

あの日ボロボロになって 捨てられた私に 震えた手を差し出した 君を今でも思い出すよ 同じような小さな影が 二つ並んで寄り添っていた 頼りなくても 確かな温もりをくれた 神様的な何かが いるとしたらどうか 私が少しでも 君の力になれますように もっと傍で笑っていたいから 下を向いてしまう そんな日も その背中 優しく押してあげられるように

霞む夏の灯

夏の灯とは花火や提灯、夏祭りにある灯をさしていると考えられます。
それが霞むのは彼女がそれよりもずっと美しかったから、秘密を打ち明けられた衝撃か。
あるいはひまりちゃんから見た涙で霞んでしまった世界のことをさしているのか。

これはそらくんがひまりちゃんと夏祭りに行く話です。
新譜と旧譜ではひまりちゃんのセリフが変わっています。

静けさに慣れた夜も 今日は姿を変えて 忘れられない思い出に 君を連れて隠れよう

新譜

「私ね、二人の時間がすごく好き」
「うーん、人多いのちょっと苦手かも」
「君がどうしてもっていうなら」
「待ってお願い、お願いだから」
「私、本当は嘘つき、なんだ」

人多いのが苦手なのは猫がそう、というのもあるのかもしれませんが何より『それでも君にしかこの手は 繋げないことを 隠してたんだ』から分かるように空くん以外はひまりちゃんに触れることができません。
もしかすると見ることもできないのかもしれません。

祭りでは大勢の人とすれ違うことになるため、それがばれてしまうリスクがあります。

旧譜

「なあに、それ、お祭り?」
「そんなにいきたい
「えっと、うーん、どうしようかな」
「えへへ、二人でもいいかなって」
「ちょっと待ってよ、私、ねえ、きいて」
「今まで黙っててごめん」
「私実は」

鈴虫の音さえ消えて 祭囃子も聞こえない 君の霞む声 それだけが全てな気がして
華やかな色を纏って 輝く光を見ていた どれも綺麗だけど 君には敵わないよなぁ
胸の奥を踊らせて ほんの少しの期待を 込めたあの日の僕は 何もわかっていなかった 僕に手を引かれながら 少し寂しそうな目で 君が呟いていたこと 今更思い出した 君と過ごす日々が とても好きだったんだ なのにどうしてかな 遠い 遠い

そらくんはひまりちゃんに告白をされるのかと勘違いしていたようです。夏祭りに真剣な表情で「聞いてほしいことがある」と言われたらそうなるのも無理はないですね。

『君と過ごす日々がとれも好きだった』

これが過去形なのは、一緒にいる今ではなく猫だった頃のことをさしているのだと考えられます。

『なのにどうしてかな 遠い 遠い』

なのには打消しであり、本来は好きだった時間ほど近くにあるものいうことが分かります。
この近い、遠いとは鮮明に思い出せるものを『近い』そうでないものを『遠い』と表しているのかと考えます。
憶測ですが、ひまりちゃんは少しずつ昔の記憶を失っていっている可能性もあります。
それが必然的な何かに逆らった代償か、ひまりちゃんの存在自体消えかけているのかもしれません。

新譜

「浴衣とか、着てみたいなぁ、えへへ、言ってみただけだよ」
「もし、私が、人間じゃなかったら、どうする?」
「ごめんなさい、本当に、ごめん」

旧譜

「私、浴衣、着れないし」
「そんなの、関係ない?」
「人多いのちょっと苦手かも」
「もし、私が人間じゃなかったら」
「ごめん、ごめんね、ごめん」

前述しましたが、謝っているひまりちゃんの悲痛な声からも、そらくんに嘘をついたことをひまりちゃんを酷く悔いています。

それでもひまりちゃんが自分の正体を明かしていなかったのには何か理由があると考えました。

それは
正体を明かすとそらくんと一緒にいられなくなってしまうから
だと考えました。

そらくんと出会い世界が繋がったように『不確かな存在』は認識されることによって明瞭になっていきます。
それは 見る 触れる といった行為をさします。

ただひまりちゃんの正体を知るという行為は、ひまりちゃんが本来は『存在しないはずのもの』と認識することでもあります。
それはひまりちゃんをより『不確かな存在』にしてしまう行為です。
それでもいつかは話さないといけないのはひまりちゃんは夏が終わると消えてしまうからです。

夜空に咲く花を摘んで 瞬く星を束ねて 君にあげる ねぇどうして君は泣いているの 鮮やかな色で灯した 揺らめく明かりを見ていた どれも綺麗だけど 君の涙は止められないなぁ

僕は君の秘密を知ってしまった。君は今、何を考えいる?

8.32MV

そらくんはひまりちゃんの秘密を知ってしまいます。
同時に、ずっと一緒にはいられないことも分かってしまいました。

8.32

《霞む夏の灯》から次の《8.32》までは約1ヵ月も空いています。
そこで何があったかは正確にはわかりません。

『君を隠したもやもやも』

ひまりちゃんを『存在しないはずのもの』と認識したことにより、もやがかかったようにひまりちゃんを認識できなくなったのかもしれません。
ただ『隠した』とあるようにそこにまだひまりちゃんがいることは分かりました。
《8.32》ではひまりちゃんに会うためにもっと一緒にいるために『終わらない夏の夢』に深く堕ちて溺れていく話です。

雲のあいだ 君を隠したもやもやも 全部吹き飛ばせたらな 空に咲いた 僕を隠したもやもやも 全部忘れられたらな いいな

8.32は本来存在しない日付であり、これは間違いなく本来存在しないはずのひまりちゃんが影響しています。
そらくんの『僕は君と共に行く』とひまりちゃんの『共に行く』はまったく別の意味を持っています。前者は『生者に死者がついていくこと』であり後者は『生者が死者についていくこと』です。

夏。僕らは出会った。君との日々はどこまでも透明で、どこまでも青くて。こんな時間がずっと、ずっと続けばいいと思った。たとえ君が、もう*******存在だとしても。

*******には7文字入ります。フォロワーさんがこれだ!という意見を出してくださったので掲載させて頂きます。
『この世にいない』
皆さんもこれだっていうのがあれば是非教えてください。

覗いたものは すべて輝いていつか 消えそうに ゆらゆら揺れて 触れたものは すべて透き通って繋ぎ 留めたくて くらくらしてた 

『覗いたものは すべて輝いていつか 消えそうに ゆらゆら揺れて』

これは夏の思い出のことをさしているのかと考えています。
この後の歌詞にありますが、ひまりちゃんと出会うまでのそらくんが見ていた世界は灰色でした。輝いているのはやはりひまりちゃんと過ごした日々なのだと思います。
それが今は消えそうに揺らいでいる。それは本来存在してはいない日々であるからです。

『触れたものは すべて透き通って繋ぎ 留めたくて くらくらしてた』

そらくんが触れたものには、ひまりちゃんの手が含まれます。それは今は透き通って今にも消えそうになっている。
そらくんはそれを繋ぎ止めたかった。しかしそれをしようとするとくらくらと眩暈がする。

ずっとそこにいたいよ 時を止めておくれよ 何もかも上手くいかない そんな退屈な日々だ そこに君が描いた この色を手放せないんだ 不確かものは いつだって どうしようもなく僕を 惹きつけて離さない 手を伸ばせばほら いつだって 雲をつかむような そんな感覚だ 溺れて

ひまりちゃんに触れようとしても雲をつかむようで出来ない。ひまりちゃんに触れるにはもっと溺れる必要がありました。

ここで『願い』について説明しておきます。
前述しましたが、この作品では『願い』が重要になってきます。そして特に注目してほしいのは『二人の願いが重なったもの』です。
ひまりちゃんが人の姿となり現れたのは、二人の願いでもありました。そらくんもひまりちゃんも、互いに『話したい』と願っています。
これから二人の願いが何なのか、それが重なる時に注目してみていただきたいです。

君の言葉はいつもキラキラ輝いて、
僕には眩しすぎた。
「変わりたい自分がまだ君の中にいるのなら、飛び出してみてよ、汗だくになって走ってみてよ」
だから僕は君から離れられない
「お祭り…?そんなに行きたいの?」
君に惹かれるのをやめられない。

溺れて

「今まで黙っててごめんね」
僕は君の秘密を知ってしまった。君は今、何を考えいる?

手にしたものは すべて抜け落ちて今も 絶え間なく ちくちく痛んで
思い出すのは すべて灰色な記憶 沈んでしまえ 深く深く
もういっそ 僕ごと全部 連れて行ってくれ 不安定な君が いつだって どうしようもないくらいに 愛おしくて放せない 目を閉じればほら いつだって すぐ傍にいるような そんな錯覚だ
溺れて

ひまりちゃんに会うためそらくんはより深く沈んでいきます。
そしてもうそこが本当は存在しない場所であることも知っていました。
それでもそらくんはもう置いていかれるのは嫌でした。
稚拙な願いと知りながら、置いていくなら「僕ごと全部連れて行ってくれ」と願います。

君がいればそれでいい。
僕は君さえいればそれでいいのに。
僕を置いていかないで。
どうか、どうか。

時間は狂っていき、君だけがいる夏へと堕ちていきます

今日が いつまでも 今日じゃないことくらい とっくに気づいていたよ 僕らだけの夏 誰だって 奪えやしないんだ 君が 攫って 眩しい日差しを背に 君は笑っていた 僕の影に凭れ 霞んでく 揺れる白いワンピース 光を通した君を抱きしめた
僕は君と共に行く 終わらない夏の中 終わらない夏の中

深く溺れていったそらくんはついにひまりちゃんを見つけ出します。
『眩しい日差しを背に君は笑っていた』
このシーンがまさに8.32のイラストのシーンだと考えています。
『僕の影に凭れ 霞んでいく』
ここではもうそらくんの影に触れられるほどの距離にいます。ひまりちゃんは水面の上ですが、深く堕ちたそらくんも不確かな存在となり水面の上を歩いていけたのかもしれません。
そして水面に映ったそらくんの影に凭れひまりちゃんは消えていく。
水面なので溺れていくようにも見えたかもしれません。
堕ちていくひまりちゃんを抱きしめたそらくんは、ひまりちゃんと共に堕ちていきます。

ありがとう。僕と出会ってくれて。ありがとう。僕を選んでくれて。これできっと。ずっと。共に。
あの日僕は君と、
終わらない夏の夢に落ちた。

夏の終わりとともにひまりちゃんは消えるはずでした。
実際に消えたのかもしれません。
イラストでは曲の終わりに女の子は消えました。それは現実ではない『終わらない夏の夢』の世界にいったのだと考えられます。そらくんもまたひまりちゃんと共に行ったのだと考えられます。

《さよならの朝》は8.42です。次の《エテルノーブ》という曲はその存在しない8.32から8.42までの10日間を過ごした話となります。

エテルノーブ

意味 永遠の夜明け  君夏検定1級 試験問題

《終わらない夏の夢》の世界では時間が止まっています。空の雲は動くことはなく、咲いた花も枯れることがありません。
空に咲いた花ですら消えることはありません。

呼吸を止めた雲の束 目に映らない明り 水面に揺れる僕を照らした 絵具を溶け合わせたような 無機質な世界の隅 佇む君にただ恋をしてた
切り取って飾れるほど美しい景色を 未来を失った幸せな二人で見よう

未来を失った二人というのは本当にそのままの意味で、二人にはもう本来の未来はこないということだと思います。ただ永遠にとまった夏の世界で過ごし続けるということです。

『願い』の話に戻りますが、この夏が永遠に続いてほしいという願いは二人が持っていた願いだと考えます。この永遠の夏はその願いが重なったことによって作られたのかもしれません。
永遠が終わるとすれば二人の願いに違いが生まれた時、なのかもしれません。

僕を縛るその首輪を 苦そうな目で睨む 君を僕は引きずり込んだ
酷く無責任で稚拙な想いを 優しく攫ってくれた君はいつか 信じてはくれなくなるのだろう 僕にとっての幸せがここにあること

ひまりちゃんは8.32日に一人で消えていくつもりでした。
何故ならこれ以上一緒にいるとそらくんが戻れなくなってしまうからです。その点は《さよならの朝》で詳しく書かれます。

8.32に笑顔で消えていこうとしたひまりちゃんをそらくんが稚拙な願いで引きずり込んみました。

君がいればそれでいい。僕は君さえいればそれでいいのに。僕を置いていかないで。どうか、どうか。
「僕ごと全部、連れて行ってくれ」

8.32

優しいひまりちゃんはその願いを断れなかったのだと思います。またひまりちゃんもそらくんとずっと一緒にいたいと願っていたのだと思います。

摘み取った両手一杯の枯れない花を 未来を失った幸せな二人で見よう 君だけの 僕だから 手繋いで 笑おう 何度でも 僕らは 出会うから 例えば 遠い遠い星でさえ 君が呼んだなら飛んでいけるよ 触れ合うこと声を聴くことも できないなら君のその名前を歌ってみるよ 切り取って飾れるほど美しい景色を 形を失ったいつの日か君と探そう

エテルノーブではひまりちゃんが何をしたのか、どんな表情なのかという描写がほとんどありません。全体的にそらくんがひまりちゃんに語り掛けるような歌詞になっています。

ずっと続くと思っていた永遠の夏は突然に終わります。それはひまりちゃんの選択でした。

さよならの朝

エテルノーブ 永遠の夜明けから、さよならの朝へと向かっていきます。

何も変わらない空 何も変わらない海 そう、全てが変わらない
あの日のまま あの日のまま

時は止まって 世界は青くて 息を潜めて 無限に流れる 僕らの罪だ

存在しない日々を生きるのは罪であり、時間がたつほどその罪は深くなっていきます。罪には代償がつきものです。『僕らの罪』と言うのは二人で罪を背負う、ずっと二人でいようといった意味かもしれません。
でもそれをひまりちゃんは望んではいませんでした。

空飛ぶ鳥はどこへ行く 二人の影はどこへ行く このまま堕ちて行けたら もう二度と戻れないね

このまま堕ちていけたら』ということはまだ今なら間に合うことになります。

『堕ちていったら』ではないのはひまりちゃんもまた一緒に堕ちていきたいという思いが少なからずあるからだと思います。

それでも、ひまりちゃんはそらくんに生きてほしいと思い別れを告げます。だけどまたそらくんが繋ぎ止めようとひまりちゃんの手を握ります。

ひまりちゃんと出会った時もそらくんは彼女を見失わないようにと手を握りました。
手を握るという行為は大きな役割をもっていて、ひまりちゃんが消えかけている今、それは彼女を繋ぎ止めるものではなく彼女に引っ張られてしまうものとなっています。

風よ すべての悲しみも 進めない すべての願いも 止め処なく 溢れる愛しさも 果てのない 闇まで葬って欲しいよ 置いて行って 走って行って もういいんだよ 逃げ去って 捨て去って 忘れてよ 全て背負ってゆくから 一人抱えてゆくから 君を飲み込んでしまう前に この手を 放して欲しいんだよ

気づき始めていた いつまでもこのまま二人 共にいられないということを

時は止まって 世界を隠して 息を合わせて まだ加速する 僕らの罪だ 浮かんだ雲はどこへ行く 二人の声はどこへ響く このまま堕ちてしまう前に この命ごと伝えなくちゃ 波よ すべての過ちも 消せない すべての記憶も 絶え間なく 産まれた心も 届かない 空まで流して欲しいよ 消して行って 拭って行って もう終わりにしよう 引き去って 奪い去って 塞いでよ きっと笑えるから 涙見せないから 君が繋いでくれた証を その手で 掬って欲しいんだよ 救って欲しいんだよ 辿り着いた永遠に 縋りついた僕らは 消えそうに光る夏を 必死に握りしめていた あの日を夢に見たよ いつか溶かした言葉 これ以上のないものを君に 貰ったから

私には十分すぎるほどの幸せだった これ以上は溢れてしまうから 君を、奪ってしまうから
どうか
全てを受け入れてあげて
どうか
夏を嫌いにならないで
どうか
この先何があっても
前を向いて、進んでいけますように
ありがとう
君だけがいた夏が、終わった。

このシーンでは時計の音が鳴り出していて時間が動き出したことを示唆しています。

溢れたら、そらくんを奪ってしまう思い。それは恋心なのではないかと僕は思っています。

そらくんはひまりちゃんと出会う前、猫であったひまりちゃんのいなくなった夏を受け入れることができていませんでした。そして夏を好きにはなれませんでした。

《サマーフレーム》であった伝えたかった言葉はやはり『ありがとう』『夏を嫌いにならないで』『自分を見失わないで』ではないでしょうか。

泡沫の夢

9.01という日付からそらくんが元の世界に戻ってきた事が分かります。
しかし、そこにはもうひまりちゃんはいませんでした。そしてまた自分を見失ってしまします。

当たり前なことなんて いつだって壊れそうだ 手にしたと思ったのは 淡い記憶
今 泣いてしまいたい 一人で静かに 消えてしまいたい また 苦しくて 空しくて あの日の二人のように いつまでも いつまでも 笑った時間は戻って来ますか
思い出せる言葉は 君が僕にくれた パズルのピースみたいな 淡い欠片 今 ひどく汚れたい 意味などないのに 君を待っていたい また 教えてよ 映してよ あのときの色で染め上げてよ いつの日か いつの日か 何もなかったように出てきてよ

何故か 君の声がこだましていた
「もう自分を見失わないで」
どうして今まで忘れていたんだろう 僕の中で君は生きていたのに 散らばった あの日々は もう戻ってくることはない でも きっと いつの日か出会えたら 笑えていますように

再びひまりちゃんの声が聞こえ、その言葉でそらくんは前を向いて歩き出します。
そらくんにはもうひまりちゃんがくれた思い出と言葉があったからです。

僕らの夏はまた巡って

イラストでは大きくなったそらくんの隣にひまりちゃんの影が寄り添っています。この曲は、自分を見失わず夏を好きになったそらくんが書かれています。
それはひまりちゃんがずっと望んでいた事です。

またこの季節がやってきた 目を閉じればいつも あの頃の僕らがそこにいた

夏が僕を呼んだ うだるような空気が 開け放した隙間から忍び込んだ 青春て奴はきっと寒いのが嫌いで 君と同じように不安定なまま 何も知らないままで生きていたかったなぁ "出来ない"のは期待で"分からない"のは希望で 嫌なことも沢山あったんだけどなぁ 思い出せばきっと綺麗に見えた あの日僕らが見てた未来はどんなだったか バカにされたって信じてたものはなんだ 青く光って見えた空をまだ思い出せるなら 何度だって飛び越えていけるよ さぁ一緒に 退屈な毎日を太陽が溶かしたから 僕らそれを持って夏を塗りつぶそうと駆け回ってたんだ 想像もつかないような不思議なことだけど 今でも僕の胸の奥で強く脈を打つようで 転んで擦りむいて泥にまみれたって 大声で泣いたって何がいけないんだろう 汚れて傷つくことってこんなに怖いことだっけ 何度だって教えてくれたよ

今君はどこで何をしているんだろう 僕のことを見ていてくれるのかな
もうあの頃の僕みたいな 淀んだ空は見えていないよと
「何も変わらないままの夏が嫌いだったの」
「ほんとはずっと色んなことを聞いてみたかったよ」
「あぁ君と一緒で独りぼっちだな」
「どこかでお会いしましたか」
「君はもう覚えていないだろうけど」
「人はみな自分勝手で嘘つきなんだ 君はきっと何も悪く無いないよ」
「私、実は」
「僕ごと全部連れて行ってくれ」
「もういいんだよ、忘れてよ」
「何もなかったように出てきてよ」
「もう自分を見失わないで」
君に伝えたいんだ

君が僕にくれた日々はどんなだったか いつの間に暮れた空を恨むくらいで
「変わりたい自分がまだ君の中にいるのなら、飛び出してみてよ、汗だくになって走ってみてよ」
僕らを塗りつぶした夏はどんなだったか 夕日に誓った約束は果たせたか
何も変わらない僕らの夏はまた巡って 君だけがいたあの日々はすぐそこにあって 何度だって踏み出す勇気をくれるから

君がいてくれたから 僕は僕を許していける 
君がいてくれたから 今、僕は進んでいける 
それはいつになっても ずっと僕の中で 巡り続ける

君と二度目のさよならをしてから随分月日が経った
けれど何故だろう 毎年夏になると 君がすぐ近くにいるような そんな気がした
きっとこの先 何年経っても あの不思議な夏のことを 忘れることはないだろう
君が僕にくれたもの その全てが 今も輝き続けている

ここまでが旧譜の『君だけがいない夏』の物語です。
新譜とコンセプトライブではその後が語られています。
まず一番重要なのは、そらくんがひまりちゃんのことを忘れてしまうということです。

以下 コンセプトライブで出た言葉 うろ覚えです。

あの夏の記憶がなくなっていった
ただ悔しさだけが残った
いつしか誰かに見守られている感覚も消えた
―だけがいない夏

―だけがいない夏
 という文字に関してはうろ覚えではなくはっきりと覚えています。大人になったそらくんはひまりちゃんと過ごした夏のことをすべて忘れてしまいました。
その点も踏まえて《私だけがいない夏》を聴いていただきたいです。

私だけがいない夏


君のことを忘れようとして 幾度も夏を見下ろしてた ふんわり揺れた 風鈴の音に あの日隠した想いと 溺れて

『あの日隠した想い』は個人的には恋心だと考えています。
それを表に出してしまってはよりそらくんを居るべきではない場所に引きずり込んでしまうからだと考えます。
あるいはそらくんと離れるという決断が揺らいでしまわぬように自分に嘘をついて『自分から』隠したという見方もできます。

一人街を 飛び回った 夕の景色 風の匂い

ここで注目してほしいのは『街』という漢字です
サマーフレーム、霞む夏の灯では『町』でした。これはそらくんが大人になり生まれ育った『町』をでて別の『街』に行ったところにひまりちゃんが着いていったのだと考えられます。

またサマーフレームではサンダルを履いて歩きまわっていたのいたのに対して《私だけがいない夏》では飛び回っていると書かれています。
これはひまりちゃんがより現実とはかけ離れた存在になったということです。

変わってゆくこの世界に 僕らは引き連れられて歩く ねぇどうして こんなにもまだ 美しいと思うのだろう きっとさ どこかで君が 笑っているからかな もう君の人生に 私はいない ただ願うだけ なら許してもらえますか 昨日も今日も 考えてたよ 君の幸せだけ その影に寄り添いながら 一人旅の終点へと ひとつ ひとつ 近づいてく 変わってゆく君の顔が 少し羨ましかったの

ずっと永遠の夏にいること、本来は人ではないこと、死んでしまっていること
どれが要因かはわかりませんがイラストからも分かるようにひまりちゃんの姿はずっと変わりません。
大人になっていく つまり 生きている そらくんが少し羨ましいということだと思います。

ねぇどうして この夏をまだ 愛おしく思うのだろう きっとさ 何度でも君と
涙流せたから もう君の人生に 私はいない そう決めたから

『そう決めたから』
という言葉からもそらくんが現実に戻ったのはひまりちゃんの選択であったということが分かります。

届かない言葉でも 昨日も今日も 浮かべてしまうよ
「本当にごめんね」
霞ゆく 記憶たち 閉じ込めてよ 忘れたくないよ 僕らの夏よ 消えないで
今 だけ 繋がっていたいの この場所に居たいの いつか君の記憶から 私の影も
声も足音も あの日々の思い出さえも 全部全部 消えてしまっても
それでもいいから
それでもいいから
永遠の夏を 私がずっと覚えているよ
共に行くよ

前述したように、そらくんはひまりちゃんのことを忘れてしまいます。
それでも、そらくんが笑って生きていけるのはひまりちゃんと過ごした夏があったからだと思います。
ひまりちゃんの言葉が何度もそらくんの背中を押してくれて、未来に繋がっているのです。
いつしか見守られているという感覚も消えてしまいます。
それはひまりちゃんが本当に世界から消えてしまったのか、あるいはそらくんが認知できなくなったのかはわかりません。
ただそらくんはもう、ひまりちゃんがいなくても生きていけるということです。凄く寂しいことのように思えますが、それこそがあの夏にひまりちゃんがいた証なのだと思います。

もしいつかまたひまりちゃん巡り合えた時、そらくんはきっと笑えていると思います。

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。

最後に

この美しい物語と音楽を作って下さった*Lunaさんには感謝しかありません。
僕もまた、ひまりちゃんの言葉に何度も救われてきました。そらくんに何度も勇気をもらいました。
本当にありがとうございました。

余談

ここからはただひたすら『君夏』愛を語るだけなので正直読む必要はないです。投稿後にちょくちょく書いていきます。
僕が初めに出会ったのは8.32という曲でした。

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