日本文学で学ぶイタリア語:人間失格7
こんにちは Minori です。
日本文学で学ぶイタリア語
人間失格,第7回目でございます。
本日,読んでいく部分をご紹介しますが,
今回のイタリア語翻訳文は,
私にはかなり難解でした (^_^;)
《はしがき》2枚目の写真の描写。
冒頭,1枚目の写真の少年の笑顔を,
「猿の笑顔だ!」と,罵っていましたが,
2枚目の写真の青年については,
「おそろしく美貌」と褒めちぎります。
では,今回取り上げる部分です。
かなり巧みな微笑み
血の重さ
命の渋さ
そのような充実は少しもなく
ただ白紙一枚
このあたりの日本語,一体,
イタリア語でどう表現するんでしょう。
さっそく一文ずつみていきましょう。
学生服を着て
の部分がありませんが,前の文章で,
indossa un'uniforme scolastica
と書いているので,省略したんでしょうか。
先に進みます。
これ,とことんイタリア語らしい
表現ですよねえ。
私がまったく理解できなかったのが,
gli spunta の部分ですよ。
で,ヴァレに聞きました。
👱♂️ spunta は,spuntare の3人称単数形。
ここでは,自動詞で「出る,姿を表す」
という意味で使われてる。
gli は,間接目的語代名詞
「彼に」「彼から」。
spunta の主語は,
un fazzoletto bianco ね。
一旦 gli をとって
語順を入れ替えてみる。
この文には,《所有》を表す語が
入っていないから,ジャケットのポケットが
誰のものか,これでは分からない。
ジャケットのポケットは,「彼の」だと
いうのを明確にするには,《所有》を表す
語をいれる必要がある。
そこで,このイタリア語翻訳文では,
その役割をする語に,所有形容詞を
使わずに,間接目的語代名詞 gli を
使っているというわけ。
👧 これで,ジャケットのポケット
il taschino が「彼の」だってことに
なるんだ。
👱♂️ そういうこと。
別の例を見てみよう。
これをイタリア語で,翻訳文と
同じ表現を使って言うと ….。
となるよね。で,このリュックが
「彼の」だったら,gli を入ればいい。
👧 zaino に所有形容詞つけて,
dallo suo zaino とは
言わないのね。
👱♂️ これはイタリア語ならではの表現だね。
主語を後ろに持ってくるのもね。
👧 これ,「彼女の」だったら
どうなんの?
👱♂️ gli を le にすればいい。
👧 なるほど。所有形容詞を使った
場合とニュアンスに違いはあるの?
👱♂️ どちらの文も表現したいことは
同じだけど、gli を使った文は,
文脈依存だと言える。つまり,
「彼」の存在が既に知られている、
もしくは文脈上で明らかである
場合に使われる表現。
一方,所有形容詞を使うと,
所有者(彼)が強調される。
「彼の」ということを,より明確に
示したいなら,所有形容詞を
使うだろうけど,ここでは,
ポケットについて強調する必要ないし,
彼のだってことは,話の流れから
分かるしね。だから gli を使ったん
じゃないかな。
次の表現に進みます。
È seduto su una sedia di bambù
籐の椅子に座っている
これは,いいでしょう。
私が気になったのはここ。
tiene i piedi uniti
tenere + 体の部分 + 形容詞
という構造です。
uniti は,形容詞 unito。
結ばれた,結合された。
ここの tenere は,
その状態をキープしている
ってことだから …。
tenere
彼はキープしている
i piedi
彼の足を
uniti
結ばれた状態で
これで,「彼は足を揃えている」
になるってことか。
他にも例があるか調べました。
tenere gli occhi chiusi
目を閉じている
tenere i capelli corti
髪を短くしている
tenere le mani pulite
手を清潔にしている
《 tenere + 名詞 + 形容詞》の形で,
「特定の状態を保つ」ことを現しています。
tenere la porta aperta
ドアを開けたままにしている
形容詞の代わりに,前置詞句を使った
表現もありました。
tenere le mani in tasca
ポケットに手を入れたままで
次に進みます。次が難解(^_^;)
頭から区切ってド直訳します。
Questa volta
今回は
però
しかし
non ha il ghigno
にやにや笑いを
持っていない
↓
にやにや笑ってない
di una scimmia
piena di rughe,
皺くちゃな猿の
一旦日本語を整理します。
しかし,今回は,
皺くちゃな猿のように
にやにや笑っていない
↓
こんどの笑顔は,
皺くちゃの猿の笑いでなく
次に進みます。
c’è qualcosa di
何がある
studiato
計算された,わざとらしい
もったいぶった
nel suo sorriso,
彼の微笑みには
整理します。
彼の微笑みには
計算された何かがある
↓
かなり巧みな微笑みに
なってはいるが
最後の部分です。
この che は何?
いきなり che って ….。
ヴァレに聞いたら,この che は,
関係代名詞 で,先行詞は,
il suo sorriso「彼の笑顔」
なんだとか。
ということは,che 以下の文は,
il suo sorriso の「追加情報」
ってことになるよね。こういうこと?
tuttavia
しかしながら
chissà perché
なぜかは分からないが
を,取っ払って,
頭からド直訳。
il suo sorriso
彼の笑顔
che non si direbbe
そう言われないであろう
quello di un essere umano
人間のそれ
日本語を整えます。
人間のそれ(笑顔)とは(人から)
言われないであろう彼の笑顔
…. ということは ….
という解釈でいいんでしょうか。
絶対こんなイタリア語,
出てこないよねっという,
イタリア語でした (^_^;)
「 … とでも言おうか」の部分は,
Possiamo interpretarlo come 〇〇?
私達はそれを〇〇と解釈することが
できるのか?と表現しています。
un segno di energia
血の重さ
un segno di un certo rigore di vita
命の渋さ
ここの翻訳,翻訳者は,
きっと頭かかえたでしょうね。
次に進みます。
No, lui non dà affatto
quest'impressione di solidità
いや、彼は堅実な印象は
まったく与えていない
solidità は,形容詞で
堅実さ,安定性 という意味です。
これで「充実感」を表現している
と考えられます。
al contrario,
それどころか
sembra leggero…
軽やかに見える
ma non leggero come un uccello,
しかし鳥のように軽いのではなく
piuttosto come una piuma,
un foglio di carta
むしろ,羽毛や一枚の紙
のように
- una piuma o un foglio
di carta che sorridono.
微笑んでいる羽毛,
あるいは一枚の紙
日本語を整理します。
いや、彼は堅実な印象は
まったく与えていない。
それどころか,それは軽やかに見える。
しかし,鳥のように軽いのではなく,
むしろ,羽毛や一枚の紙のように。
微笑んでいる羽毛,あるいは,
一枚の紙。
はい,本日はここまでで
ございますが,翻訳文は原文とは
かなり違った文章ですが,
伝わってくることは確かです。
日本語読んでも難解な,
抽象的な表現が続く太宰の文。
このあと,どうなるのでしょうか。
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日本語が話せるイタリア人です。
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