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平場で起こるエモ
お笑いの平場の好きな瞬間がありまして。
一生懸命やったのになぜかハマらずめっちゃすべっちゃって皆が膝崩れる瞬間も、普段イジられる人じゃないのに、なぜか今日の主役的ポジになって逐一ピックアップされてウケ続ける瞬間とかも好きだけど、やっぱり僕がとびきり好きな瞬間が
誰か1人の言動でその人の周りの人、客席も含めてが全員が手を叩いて拍手笑いしてる瞬間。
あの「笑いの輪」ができてる瞬間。
この瞬間がガチンコ好き。自分でも他人でも可。
とにかく笑いの輪が発生した瞬間の配信の映像は何度も見返したりする。
神保町漫才劇場のXアカウントでコーナーの切り抜きアップされてるのも観れると嬉しい。
あの光景は眺めていて「楽しい」もあるけどもはや「エモい」が乗っかっている。
本来、自分以外の芸人がウケるなんて商売としては芳しくない。
競争の社会なので他の誰よりも自分がウケなきゃいけない。
極論、自分以外は敵。
ただこれ本当に謎なんだけど、僕ら芸人は平場で自分以外の芸人が面白いことをしたらそれはそれでめちゃ笑いたいという感情も常にある。
他人がウケていたら悔しいもあるけどそれ通り越して仲間の面白いことに対して腹抱えて笑いたいし見たいってのも本音で、そんなわずかな葛藤がほんのり舞台上には漂っている。
ただ、それでもやっぱり面白けりゃ笑う。
全員が「お前がナンバーワンだ」とシリーズ末期のベジータの如く優しいツラを浮かべて。
あの時の悟空を認めたベジータのエモさったら無い。それと同じ。敵なのに認める素敵さ。
つい最近のこの配信なんてめっちゃそう。
みんなが杉本さんと京極さんを中心に拍手バカ笑いしてる。
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別に皆は笑わなくても良いんです。極論商売敵なので。でも面白くて最高だから笑う。友達だから笑う。
不思議でエモい光景。
ここにお客さんが入るとまたさらに素敵になる。
お客さんの中には推しの活躍を見に行く人もいるし、単にライブそのものを楽しみに行く人もいる。内容関係無くフラッと行く人だっている。多種多様な人たちが劇場に一堂に会す。
この一期一会のメンツで、笑いの輪が広がってどでかい笑いが客席にも起こった時、これはもうエモさ上乗せ特化ゾーンである。
僕自身、何度か客席でお笑いを観た経験上、声を出して笑うってのは隣に人がいるので中々に難しいし、ましてや拍手笑いという行為は、感情の吐き出しを“笑う”だけじゃ持て余すから手の運動へ及ぶという相当ハードルの高い貴重な現象だと思っている。
だからこそ演者1人の言動1発で舞台上、客席へとあの波動が広がっていき笑いの輪が完成する瞬間が何とも異常かつかけがえの無いものを見てる気分にさせられる。だから好き。だから上乗せ特化ゾーン。
もうONE PIECEの宴的良さ。
空島で皆、ルフィも笑ってるけどワイパーとガンフォールも笑ってるじゃんみたいな。
平場での「笑いの輪」はネタで起こる拍手笑いとはまた違う、予期できない偶然性、高い即興性による当意即妙さ、この時の演者とお客さんはもうこの時でしか無い一期一会的な儚さ。この全てが凝縮されてるかけがえの無さを感じで僕はたまらなく興奮する。
ちなみに去年経験した寄席のモノボケで僕だけ7連発スベりという、「静寂の輪」ってのも別にあって、それは全然“ダメ”です。
ぼくはウケたいのにスベって、お客さんは笑いたいのに笑えない。MCだったオダウエダさんお2人に「なんでやろなぁ〜…」と気を遣わせてしまったあんな輪は作ってはならない。
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