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キャプションボード

NOTE:
この投稿の初出は、2020年12月26日に自分のホームページで公開したものです。
そのホームページサービスが2021年1月に終了してしまった為、同じ内容をこちらに転載しました。内容は同じですが、書式の一部はHTMLと同じ表現が出来ない為変更しています。

観劇した方を前提にして書かれており、説明不足や所謂「ネタバレ」している点はご了承ください。

尚、文中の情報や所属メンバーは初出当時のものです。

劇団Miss女子会 第四会公演「キャプションボード」を、初回・三日目・最終と三回観て来ました。

今回はなんと、Miss女子会の団長、神谷実玖さんの脚本・演出。

もうそれだけで俄然興味が湧き、観に行かない、という選択肢は無くなりました。

12月24日。 雪の代わりに大粒の雨が降る中、山奥にひっそりと佇む『ちいさな美術館』。 主催者である森奈里沙に集められた個性豊かな女の子達。「メリークリスマス!忘れられない素敵な夜にしましょう!」 どうして美術館でクリスマスパーティーをしているのか?何故彼女達が森奈里沙に招待されているのか? 聖なる夜に起こった忘れられない出来事。 あなたならこの物語にどんな題名をつけますか?

森奈 里沙 ... なりみ
杉川 藍子 ... 北條 愛実
黒田 美帆 ... 磯ヶ谷 典華
白鳥 佐和子 ... 伊藤 雨音
西園寺 櫻 ... 野口 紗世子
金剛時 薺 ... 木村 佳奈枝
今出川 皐 ... 碧乃 美月
佐々木 紅葉 ... 流矢 聖子
菅原 琥珀 ... 明石 渚/みらい
芹沢 美空 ... 伊戸奈 楓/上野 露葉
鳴門 麗央 ... 神谷 実玖
後藤 桃華 ... 宮瀬 いと
CD音声 ... 岡崎ちなみ

あらすじに加えて、先に核心を明かしておくと、主催者・森奈里沙から美術館にクリスマスパーティーと称して招待された10人の女の子達が三々五々集まってくる。 全員が初対面。訝りながらも初めは楽しく準備しているが、最後のひとり、鳴門麗央が来た時に様相は一変。

実は、ここに居るのは里沙も含めみんな亡くなっている女の子達だった。

麗央以外は死んでいる事を自覚しているが、事故にあったばかりの麗央は混乱する。

そして、彼女達を集めた本当の理由はパーティーなどではなく、森奈里沙の「死因」とその理由である生前犯した「罪」を「裁く」為。 それも12月25日を迎える前までに結論を出す。10人全員一致で「許す」のであれば里沙は転生できるが、そうでなければ次のチャンスまで冥界を彷徨い続けるという。

本当の理由を知った女の子達はどの様な審判を下すのか、という物語。

舞台が美術館なので、舞台中央には大きな絵が掲げられています。

話を大まかに分けると

● クリスマスパーティーの準備をする前半。
● 鳴門麗央が来てから一転し、皆が死んでいることが明かされる中盤(便宜上中盤としています)。
● 森奈里沙が皆を集めた本当の理由が明かされてから終幕までの後半。

といった感じでしょうか。

幕開け直後、後藤桃華が警察に追われていて、それが理由で何か事故が起きたらしい描写があります。

その暗転明けから始まる前半はMiss女子会ならではの楽しく展開するコメディパート(かなりファンサービス要素も)でもあり、と同時に、それぞれのキャラクターの性格を観る側に印象付けるパートでもあります。 かなり面白かったのですが、個々のエピソードは各メンバーの感想で。


中盤、鳴門麗央がやってくると雰囲気は一変。

麗央は自分が死んだ(当初は意識不明の重体)ことを事を信じられないが、 彼女の死の原因である後藤桃華が同じ美術館に逃げ込んできた(=桃華は死んでおらず、麗央以外の女の子達には見えないけれど、生と死の境にいた麗央には見えたらしい) ことから死の瞬間がフラッシュバックし、徐々に状況を理解してゆく。そして、茫然自失の麗央を見た他の女の子達は、ポツリポツリと自分の「死因」を語り始める...

楽しいパーティーだと思われていた前半からそれぞれが語る「死因」は、悲しみや苦しみ、怒りが込められていて、それが自然と観ている側に日々生きている事の大切さを訴かける、涙なくしては観れなかったです。


ここまででもひとつの物語として完結しそうですが...


更に展開する後半で明らかになるのは、森奈里沙の「罪」。そして集められた女の子達がその罪を事実上裁かなければならないということ。

里沙の罪とは、彼女の姉は大学生に殺されたが、その犯人は心神喪失を理由に罪に問われてはいなかった。 彼女はその犯人を殺害しバラバラにして報復する。そして、人を殺した苦しみから逃れるために自死してしまう。この里沙の行為は許されるのか?

突然難題を突きつけられた女の子達は、困惑したり混乱したりしつつも、それぞれ自分の考えや想いを吐き出す...

これはもう芸術・学問を問わず、ありとあらゆるところで取り上げられる命題で、ひとつの明確な答えが出せるものでありません。個人はもちろん、国や時代、民族や宗教などでも考え方は異なるのでしょう。ここでは現代日本の「民主主義近代国家としての価値観」をベースに話が進むことを前提にしています。

ちょっとだけ惜しいなと思ったのは、里沙の行為について皆がそれぞれの考えを侃侃諤諤する場面でBGMが流れるのですが、あれが合っていない気がしたことです。
あそこはただ「皆の議論が白熱している」ことを表現できれば良かったのかも知れませんが、BGMの曲調からか白熱はしているが表層的な台詞のやりとりに終始している感じがしてしまったのが残念でした。


結末では明確な答えや、どの様な「審判」が下されたのかは描かれません。

最後の場面で、なぜ美術館に皆を集めたのか、掲げられている絵は誰が描いたのか、その画題と、なぜその名前を付けたのかが語られます。

その絵のキャプションボードを埋めるのは、観ているあなただという事も含めて。

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登場人物と演じるメンバーの感想を順不同で。

なりみ

森奈 里沙
本作の主人公

キービジュアルでも使われている黒い衣装は、登場時からなんとなく「死」を連想するものでもありました。

今回、初主演のなりみさん。
前半の「明るいアテンドお姉さん」ぶりから、後半本当の理由が判ってからの里沙の苦悩までを演じる主演に相応しかったと思います。

最後、美術館に集めた理由を訊かれてから答える場面。

美術館に展示されている絵は、殺された姉の絵であること。そのタイトルは「題名不明」で、それは絵は見た者によって印象が変わるから。

生前の姉からの問いかけ「今の里沙にはどうみえるの?」から、悔恨の念を絞り出すように吐露するまでのシーンは感動的で思い出してこれを書いていても泣きそうなくらい。

僕の観た初回と三日目は、お姉さんの言葉がボイスオーバーする時は絵に向かって、つまり客席に背を向けて、でも里沙が語っている―口が動いているのが判る―演出でした。

ところが最終回を観た時、客席に向かって語る演出に変わっていたのです!これはヤラレた!思わず身を乗り出してしまいました。

いつから切り替わったのか知りませんが、里沙=なりみさんの表情が見えることで、印象が全然違いましたね。大袈裟な解釈を笑われるかもしれませんが、 絵を見て姉を想いながら語るのは過去を、正面を向いて表情を見せながら語るのは未来へと、感情の方向が違う様にも感じました。

北條 愛実

杉川 藍子
出産時、常位胎盤早期剥離を処置中に出血を止められなかった

登場シーンでの印象から、今回は愛実さんは大人しい女性の役かな?と思っていたのが、話が進むにつれ、段々といつもの愛実さんの役になってゆくのが可笑しかったです。

でもそれは、後半への布石でもあって。実は藍子は母親(になる筈だった)で、出産時の事故で亡くなったことが判ると見方が変わってきました。

藍子の「もし子供が殺されたら、殺したやつを許さない。でも自分の子供が殺人犯になったら守ってあげたい。世の中の全員を敵にしても見方でいたいと思う」は、本作中でも 一、二を争う大好きな台詞と場面で、ある意味、あの場の議論の方向性を決める大切な台詞でもあり、同時に僕にとって大号泣ポイントでもありました。

僕に子供は居ないけど姪っ子が居たはずの身だから、藍子の亡くなった経緯から、彼女の台詞や想いはつい重ねてしまうのでした。

伊藤 雨音

白鳥 佐和子
兄が連続通り魔殺人事件の犯人で加害者家族への嫌がらせから自死を選ぶ

やはり前半の印象から、雨音さんも「少し臆病だけど普通の女の子」役なのかな、と思っていたけど、とんでもなかった。

家族に事件加害者が居たことから、世間から白眼視された上、ネットリンチやメディアスクラムに晒され最後は自死を選んだ彼女。

だから、どんな理由があっても森奈里沙の殺人を許すことができず、気持ちが揺れ動く他の女の子と違って最後まで頑なでいる。

前半までとは全く違い、怒りを抑えきれずに爆発させる佐和子を演じる雨音さんが圧巻でした。

しかし看護学生だった琥珀に、兄が殺した被害者の家族の様子を聞かされた後は、何か少し様子が変わった様にも見えます。

彼女は里沙の審判にとってキャプションボードならぬキャスティングボートを握る人物になったかもしれません。

序盤にクリスマスツリーを飾り付けている時、プレゼント何が欲しいと訊かれて、明るく「愛」と答える佐和子。 これって演じる雨音さんが普段から言ってる様な台詞だから軽く笑いも起きてたみたいだけど、実は後半に繋がってたんですね。

碧乃 美月

今出川 皐
小児ガンで闘病の末亡くなった、ちょっとミステリアスな子

真っ暗な美術館に、藍子と佐和子が入ってくる時に、既に暗闇の中座っていた女の子。

暗い所が好き、妙な語尾、妙な仕草、何に対しても興味津々、「フフフッ」と特徴的な笑い方を佐和子に引かれるほどで、リースを頭に載せてスキップする姿は天真爛漫そのもの...

しかしそれらはすべて、病気で大切な時間を失い、思う様に生きる事ができないまま亡くなった悲しみの裏返しでした。

僕がイチ推しの美月さんだからではありませんが、この皐は美月さんしかできない表現だったなと思ってます。激しく感情を爆発させることは無いけれど、内に秘めたものは持っている。今までで一番好きな演技だったかもしれません。

最終回での美月さんといえば、ケーキの箱ふみつぶし。

楽しみにしていた「幻のケーキ」誰かに食べられてしまい、ショックのあまり空き箱を持って皆の前へ現れ、里沙の前に落とす。里沙が拾おうとすると皐が蹴っ飛ばして拾わせない、 という動きを3回繰り返す場面がありました。それが最終回の3回目、最後の最後蹴るのではなく思いっきり箱を踏み潰す!!周りにいたメンバーの殆どはそんな事をするとは 知らされていなかったそうで、素で驚いていました。勿論客席も驚きと爆笑が。

...僕もたいへん怖かったです。

磯ヶ谷 典華

黒田 美帆
火事で亡くなった、風変わりな子

前半での美帆=典華さん(ふみぱん)の破壊力は凄まじく、美帆だけ別格な気がします。終始テキストで表現不可能な話し方で、正に「ふみぱんショー」。前半の印象を殆ど持って行った気がします。

演技している様に見えて、実は素なんじゃないかという疑惑も。 クリスマスツリーを移動しようとして鉢からすっぽ抜けてしまったハプニングがあった時、皆で続けながら元に戻そうとしてる中、あの調子で何の違和感無く続けていたからです。

最終回では破壊力がアドリブと共にパワーアップしていて、一例を挙げるとツイスターゲーム(劇中では「トゥースターゲーム」)をする場面でいきなり「これ、黒が無いねぇ...黒が出たらあたしを触ってぇ。あたし黒田だからぁ」 って何を言ってるんだこの人は?!と爆笑してしましました。もっともコレに載った人が出てくるのですが...

皐のケーキ箱潰しの時も「ご乱心だねぇ~」のアドリブに笑いました。

よくよく考えれると、誰にでも屈託無く自己紹介して懐に入ってゆく美帆が居なかったら、初対面の彼女達が打ち解けるまでもっと時間がかかってたのではないかとも思えてきますね。

木村 佳奈枝

金剛寺 薺
虐待され続けた末自死をした

ずっとおとなしく、オドオドしている薺。それはなぜなのか。

前半では美帆に気に入られて振り回されたりしますが、停電して電気が消えると、暗闇を極度に怖がることが何度かあって「この子何かあるのかな」を匂わせています。

薺は、なんと言っても死因の悲しさと、それを告白した時の佳奈枝さんの演技です。「ああ、もう本当に要らない子なんだなって思ったんです。...本当はもっと生きていたかった。もっと世の中に必要とされたかった」は、最初の号泣場面でした。
おまけに「いいんだよ、世の中に必要・不必要で考えると最終的に優勢思想に行き着いちゃうから、そんな事考えなくてもいいんだよ」なんて慰めにならない様な事を反射的に考えたりして。

「トゥースターゲーム」の時(最終回は)美帆とチームにならずに「良かったぁ」とホッとしている表情は、後で振り返ると一瞬でも悲しい境遇を忘れることが出来て救われる様にも感じました。

流矢 聖子

佐々木 紅葉(くれは)
震災で亡くなった、福岡コンビのひとり

単に「震災で」とだけ言ってますが、多く人は東日本大震災を連想するでしょう(他の固有名詞もぼかしているので単に「震災」なのでしょうが、もしかすると脚本の実玖さんも演じる聖子さんも若いので「震災」といえば自然と東日本大震災を指すのかもしれません)

後からやってくる西園寺櫻とは同じ福岡出身だと知って意気投合します。演じる聖子さんも実際に福岡出身。

大荷物を抱え、クリスマスパーティーを楽しむ気満々でやってきて「トゥースターゲーム」を含む大量のゲームを持ち込んだり、皆が櫻の胸を揶揄したとき「人の身体のことは言っちゃだめ、そういうのはイジメです!」と言って諌めた真面目な紅葉は聖子さんが演じるにぴったり。

登場人物が役者さんそのままと言ってしまうと否定的に取られてしまうかもしれませんが、寧ろ今回多くの人物はその様に設定・配役されてるみたいだから、僕はそれでも全然良いと思ってます。

だから、紅葉をつくるのは、そのまま聖子さんで良い訳です。

ただ、ここでそれを言ってしまうと、せっかく人柄を信頼した櫻が秘密の相談―豊胸しようか悩んでる―をしたのに、あっさり藍子に洩らしたことを屁理屈で回避した挙句「悪いのは男騙すために乳増量しようとした櫻さん」と言い放ったのも聖子さんらしいとなってしまいますが...(勿論違います)

紅葉=聖子さんの見せ場でもあるこの「屁理屈」場面、なにかお笑いのネタ(「かまいたち」のネタ)らしいんだけど、ごめんなさい僕はその方面はさっぱりなので解っていませんでした。客席が過剰に反応してたのもそのためなのかな?

野口 紗世子

西園寺 櫻
車に轢かれて亡くなった、福岡コンビのひとり

佐々木紅葉とは同じ福岡出身だと知って意気投合します。演じる紗世子さんも同じく福岡出身。福岡春秋コンビはそれだけでも役者さんをベースにつくられている事がわかります。

皐が喜んだ有名店のケーキを買ってきたのが櫻。
「いい女風で登場」と「絶叫」と言えば紗世子さんになりつつある感じ。

櫻は前半ではクールで、「トゥースターゲーム」でも(美帆らに呆れて)審判にまわったりと終始冷静。
しかし自身が死んだ原因を語る場面では、自分に責任の無い事故であったため、静かに語っていても最後は気持ちが溢れ絶叫してしまう。

「なんで私なの?!ふざけんな!!」

これは不慮の事故にせよ病気にせよ不幸に見舞われた人誰もが、表に出さなくても持つ気持ちなのではないか?と思わせる重い台詞です。

死を不本意ながら甘受している様に見える麗央以外の子達と違って、櫻はまだ怒りを持ち続けていて受け入れる事が出来ない事が痛いほど伝わりました。

絶叫するまでの櫻のクールな振る舞いと、それを演じた紗世子さんによっていっそう際立っていると思います。


最終回の「トゥースターゲーム」で、「黒が無い」と言い出した美帆=典華さんに載ったのは審判をしていた櫻=紗世子さん。 最後の方で「左手黒」みたいな事を言い出して、張本人の美帆を含めプレーをしていた子達と客席を笑いの渦に巻き込んでました。

もうひとつ櫻と言えば「パニックだよー!」。
紅葉の屁理屈に翻弄された櫻が放った台詞ですが、Miss女子会ファンじゃないとなぜ注目されるのか解らないかもしれませんね。
これ前作舞台「アンダンテ」の中で碧乃美月さんが言った”超有名な”台詞なんです。まさかこれが本作の中で、しかも今度は紗世子さんから聞けるなんて嬉しい驚きでした。

明石 渚/みらい(ダブルキャスト)

菅原 琥珀
心筋梗塞で亡くなる。二十歳の看護学生だった

すこし遅れてやってきた琥珀は、若くして亡くなった看護学生。

前半、「人(美空)が倒れている」と聞かされて率先して助けに行ったり、薺が停電の暗闇で呼吸が上がってしまった時「ゆっくり呼吸してください」と話しかけたりと、この子は医療関係者かな?と予感させる場面があります。

また、皐が病気で死んだ事を知ると看護師を志していたから思わず「ごめんなさい!」と誤ってまうほどの責任感。


琥珀はダブルキャスト。演じる二人はMiss女子会での舞台はこれが最後でしたが、みらいさん版を1回しか観れなかったのが惜しまれます。

同じ人物なのですが、二人が演じることで受ける琥珀の印象がまるで違うのが面白かったです。

例えば、もし正看護師になれていたら、どんな性格だったか?とまで想像してしまいました。
苦悩しつつもひたむきに沈着冷静に仕事をこなしてゆく「慈愛タイプ」の渚さんに対し、 命を救うためなら後先考えず行動し危険な場所に飛び込みそうな「熱血タイプ」のみらいさん、という感じでしょうか。どちらの琥珀もアリですね。

伊戸奈 楓/上野 露葉(ダブルキャスト)

芹沢 美空
ストーカーに殺された

美術館にはとっくに来ていて、待っている間酒を飲んで泥酔し別室で寝ていたところを、美術館内を探検していた皐に「死んでいる」と勘違いされ運ばれてきた美空。 くだを巻き、琥珀を子分扱いして、後はひたすら寝るというやりたい放題だが...亡くなった原因は、ストーカーに殺されたという悲惨なものでした。

美空もダブルキャスト。僕の場合は楓さん2回、露葉さんを1回観ました。現在は候補生の二人ですが頑張ってました。

このふたりについて思った事があるのだけれど...感想の本筋から外れてて適切では無いかもしれないですが、記録として残しておきますね。

泥酔してくだを巻いている時は、楓さんが上手い。もうそのまま。露葉さんは可愛らしさが先に立った感じがしました。

一方「ストーカーに殺されて」しまいそうなのは露葉さんの方。その恐怖をも感じさせました。楓さんがダメなのではなく、泥酔時のイメージから、警察や世論を動かして逆にストーカーをやっつけそうな気が...

(あくまで、僕個人のイメージです。ごめんなさい!)

ちなみに、皐が楽しみにしていたケーキを(美空を巻き込んで)勝手に食べた張本人なのに「どうゆう訳か」犯人探しを執拗に求めるイメージは、楓さんに軍配。

宮瀬 いと

後藤 桃華
鳴門 麗央が死ぬ事故の原因となった女性

登場人物中、唯一生きている女性。コンビニで万引きをし、警察に追われ逃げている途中で麗央とぶつかって車道に突き飛ばしてしまい、死なせてしまう。

生きている人間には、誰も居ないと見える美術館に逃げ込んできて、それを見た麗央が結果として死んだことを自覚することにもなる。

いとさんも、Miss女子会での舞台出演は今回が最後。

出番は少ないけど、キーパーソンなので印象に残ります。

「私、やっちゃた...お父さん...私...取り返しつかないことやっちゃった...」携帯で自分の過ちを認めながら打ち明ける姿は、『殺された』側の麗央にとってもつらい場面です。

台本上(確か初回もそうだったと記憶してますが)では、誰に電話しているのか判らないのですが、実際の台詞には「お父さん」と加えられていて、桃華の心情がより強調されている様に感じました。

劇中、罪を犯したもうひとりの人物として描かれる桃華ですが、 最後は警察に自首した事を伝えるニュース音声で幕を閉じます。 彼女は罪を償って、この先も生きてゆくことになるのでしょう。

神谷 実玖

鳴門 麗央
クリスマス前日、後藤桃華が原因で事故に遭う

もうひとりの主人公と言っても良い人物。彼女だけは本当に訳がわからず美術館にやって来て、自分の身に起きたことを知る。


里沙が「貴方がお亡くなりになったからだと思います。」と麗央に告げてから、場は一変。

「わかった!ドッキリだ!」と死を信じられないでいるやりきれない姿や、自分が死んと解ってからの「生きてるって当たり前だと思っていたけど、当たり前じゃないんですね...」から始まる誰に宛てるでもない独白は、この間に麗央に起こった「現実」が、伝わってきて、本当に胸が締め付けられるような思いでした。


生きていることは当たり前ではない、もっと周りの人に気持ちを伝えて置けばよかった、失ってから気付くって遅いですよね...麗央の後悔は、間違えなく観ている自分にも突きつけられて伝わってきます。


もちろん脚本も良いのだけど、理屈だけではなく、なんと言うのかな...例えば死を理解できず狼狽して動き回ったり、呆然として「プリン食べとけば良かったなぁ」と話す姿は、実玖さんの演技や台詞回しが上手いを通り越して、もう鳴門麗央その人を見ている様な気になってました。本当に彼女の身の上に起きた不幸に涙する感じがして、だからこそ彼女の後悔が真に迫ったのだと思います。

登場人物評は、演じるメンバーさんを通して受けたものです。

文中でも書きましたが、演者のフィルタを通して物語の登場人物を語られるのは、もしかすると役者さんにとって本意では無いかもしれません。 でも特にそれらを切り離さず書いています。本作はMiss女メンバーの個性をベースに組み立てられているキャラクターが多いと感じたからでもあります。

メンバーが「自分の素の性格やイメージ」をそのまま出すのと、「得意とする性格の人物」を表現するのは似て非なる方法ですが、 それらが物語の内容に一致しているのなら、自分はどちらにも肯定的です。

今回は初めて主題歌が付いていて、最後に流れるのですがこれがまた良い曲。Day and Night(デイナイ)さんが、今回の舞台の内容を元に書き下ろしたとの事です。
20日昼公演にはライブもあったのですが、今回は昼夜連続での観劇ができなかったので観ることが出来ず残念でした。


四作目も素敵な作品でした。

これを団長・神谷実玖さんが書いて演出したのは素直に凄いことだと思いますし、ちょっと羨ましくもあります。

初回を観終えた時には、いろいろ考えました。
生と死、罪とは何か...

ところが、2回目3回目と観終えた後に妙に清々しく、3回目など大袈裟ではなく「希望が見え心洗われた」感覚になりました。

直接的に死を扱っていて、登場人物個々の経緯や事情は、 悲惨だったり無念だったりして重たいものばかりだし、混乱する麗央の気持ちを考えるといたたまれないし、里沙の「罪」に皆がどう答えを出したのかも描かれない。
それに審判を下したからといって、10人の女の子達が特にどうなる訳でもなく、希望とか救われるとかの要素はありません。

それでも僕は、結末に向かう流れが、里沙や女の子達、そして観る人にとっても「希望」を持てる様な方向だったのではないかと思っています。 何かが救われる・救われた気がしたんです。まるでおかしな感覚なんですが。

それは、お互い干渉しないというルールを超えてみんなが自分の境遇―死んだ理由―を語り始めたからかもしれないし、その彼女達に「最後に判断してもらえるのがみなさんで良かった」と言えた里沙かもしれないし、桃華が自首したニュースで終わったからかもしれない。

理由は解らないけれど、それが生の舞台を観る意味なのかもしれませんね。


だから、僕のタイトルは「希望」かな。
キャプションボードの内容は観る側に委ねられたのだから、奇妙に見えるタイトルでも許してください。


実玖さんはじめ、Miss女子会メンバーのみなさん、製作にかかわったスタッフ・関係者のみなさんおつかれさまでした。そして素敵な作品をありがとうございました。

★補記

演劇門外漢の僕が、長いだけで読み返すと自分の力不足にがっかりする様な文章でも公開しているのは、この舞台が良いものだったと外に向かって言っておきたいからです。

実際に効果があるかは別にして、観た事無い人・知らない人はに伝えたいし、観た人とは共有したい。勿論、メンバーや製作に関わった方々に伝われば嬉しい。

そして、なによりMiss女子会が続いて欲しいから以外にありません。

どこかの起業家の様に大金を出せる訳じゃ無く、メンバーを励ます気の利いた言葉をかけられる訳でもない。 自分は単なるファンで特別力になれるような事は無いのだけれど、それでも存続して欲しいし続けさせてあげたい。それだけなんです。


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