通学路と妹

2022年

流院 れつ子

卒業文集というのは学校生活に関することを書くのが一般的だとされている。しかしながら私は、学校とはあまり関係ないことを書こうと思う。まあ、架空ヶ埼高校で「ふつう」なんてことを気にする方がバカだ、ということはこれを読む皆にも納得してもらえると思う。

と、前置きをしておいてなんだが、学校に全く関係がないことというわけでもない。簡単に言うと通学路と、妹のことである。通学路と言うのは文字通り架空ヶ崎高校に通うための道のことで、道路、海路、空路からなる。妹と言うのは一学年下の妹だ。同じ学校に、つまりはここに通っている。

それで、妹と私は同じ学校に、同じ時間に登校する以上は、ほぼ同じ時間に家を出るのは当たり前だ、ということは読者にも納得してもらえるだろうと思う。だがある日、私は忘れ物をしたことに気付いた。

「ちょっと忘れ物取ってくる」

「お姉ちゃんはしょうがないなあ、待っててあげる」

そう会話を交わして、ウラヌスガスの瓶を震える手でひっつかんで外に出ると、家の手前に人が倒れていた。脈を取ってみると止まっていた。

どうせ死んでいるのだから、わざわざ遅刻の罰に先生にひどい目にあわされるよりも見捨てたほうが良いのではないかと考えたが、後から文句を言われるのも嫌なので救急車を呼んだ。そんなことはどうでもいい。

問題は、妹が死体に気付かなかったことだ。

私が家まで往復したのはおよそ2分程度。その間に死体が勝手に歩いてきて我が家の前で倒れるなんてことはありえないはずだ。仮に車で持ってきたとしたら、なぜ我が家の前で捨てたのか意味不明だ。

その日から、なぜか妹は冷たくなった。受験のストレスだろうか、私が話しかけても反応しないことが増えた。姉として心配である。けれども私もネクロマンサーに就職が決まったのだし、来年の今頃は立派に卒業できていると思う。人生、生きていれば山あり谷ありだから頑張ってほしい。

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