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ラジオ『空想メディア 20240519』書き起こし

映画『Perect Days』のクリエイティブ・ディレクター高崎拓磨さんが30分間しゃべり倒した表題のWebラジオ。興味深い内容だったのでCLOVA Note を使って書き起こしました。

面白かったポイント

  • 始まりはトイレプロジェクト: ユニクロの柳井康治さんが個人的に行っているトイレプロジェクト。渋谷区の公衆トイレを16人の著名な建築家にオファーしてできあがったものは大いに評価された。しかし人々は公衆トイレを大切にしてくれないという問題に直面し、柳井さんと高崎さんがそれについて話してるうちに、トイレを舞台にした短編映画をつくる案が出てきました。アートの力で深いところまで届けば、人々がしぜんとトイレをきれいに使ってくれるのではないか、というアイデアです。

  • 二人の憧れ、ヴィム・ヴェンダース: 高崎さんにとってヴィム・ヴェンダース監督は若い頃から憧れている天上の人。柳井さんもまたすごく好きな監督で、この人に頼めるなら申し分ないということで、なにをするかも決めずにメールを書いたお二人。その結果、"I'm in"……やるよ、という返事がきて映像化プロジェクトが始動しました。その後、たまたま繋がった役所広司さんにヴェンダース監督のことを話すと、こちらも二つ返事で快諾。予算も決まってないまま、世界的な監督と名優が揃ってしまったという。

  • 平山の家探し: 嬉しさのあまり短編映画のアイデアを山ほど持参した高崎さん。それを読んだヴェンダース監督はいいものがたくさんあるから映画にしよう、ある男の二週間だ、と言ってくれました。主人公、平山の家探しはヴェンダース監督自ら歩いて探すことに。そうやって浅草寺近くの小さなアパートが選ばれたものの、住人がぜったいに退去しないと主張するため高崎さんがまた足で探すことに。紆余曲折ありつつ最終的には完璧なロケーションが見つかりました(編注: 江東天祖神社の隣とのこと)。

  • カンヌ国際映画祭への出品: 撮影が完了したものの、どんな映画になるかは監督も高崎さんもイメージできておらず、二人でこもりきりの編集作業が始まります。こういう風にするとこういう感じになりそうだ、という試行錯誤の積み重ねをで緻密に作り上げたものは、編集のしすぎで二人には良し悪しが判断できない状態。ベルリンの有識者に見てもらったところ、これは傑作だという太鼓判を押してもらえて、それなら世界的に配信しないといけないなとようやく公開方法を考え始めました。たまたま間に合ったカンヌ国際映画祭で高い評価を受けた、というあたりが面白い話です。

  • 商品と作品と役所広司: 成り立ちからしてこの映画は「商品」ではなく「作品」であり、そういうものに出演できる役者はほんとうに少ない。だから自分はこの作品に関われてすごく嬉しいというのが役所広司さんの感想でした。役所さんが涙を流す圧巻のラストシーンは編集前は二倍の長さがあり、脚本にはただ「泣く」とだけあったといいます。ほんとうに素晴らしい名優と名監督がそろって出来上がった奇跡的な映画です。

書き起こし

高須光聖 00:29
こんばんは。放送作家の高須です。dodaプレゼンツ空想メディア今夜のゲストはクリエイティブディレクター高崎拓磨さんです。

ナレーション 00:02
dodaプレゼンツ空想メディア。この番組は放送作家の高須光聖が、世の中をもっと面白くするためにゲストの方と空想し、勝手に企画を提案していく30分間です。
dodaプレゼンツ空想メディア、dodaの提供でお送りします。

高崎拓磨 00:36
よろしくお願いします。

高須光聖 00:37
今回の映画も、パーフェクトデイズの元々ああいう東京のトイレっていう、あの企画自体をやられてたんですか。

高崎拓磨 00:47
トイレはユニクロの柳井さん、柳井康治さんっていう方が、もう自分でやってるんですよ。

高須光聖 00:57
あれ、そうなんですか。あれ、個人なんですか。

高崎拓磨 00:59
個人でやってるんですよ。それ、今、渋谷区のものなんですけど。
だから、自分で企画して、自分で建築家を見つけてきて、建築家にオリエンをして、で、そのプレゼンを受けて、それで、やりましょうって話とかもしてっていうの、ずっと。だから、17個のトイレ全部作ってて。で、彼が僕のところに来て、だいぶ前からちょっと知り合いだったんですけど。

高崎拓磨 01:23
何の話に来たのか分からずに、とりあえず久しぶりだから会いましょうって言って会ったら、実はこういうの作っててって言って、トイレ作ってるって言われて。トイレ作ってるってのがいまいちよくわかんなかったんですよ。でもなんか自分でお金を出して、そういうなんか寄付みたいな形でやってるんだっていうの聞いて、 そんなことする人がいるんだと思ったんですけど、それをなんでこの人は僕に話してるんだろう。

高崎拓磨 01:49
まさかこう、トイレを作ってくれって言われんのかな。建築ってやったことないから面白そうだなとか思いながら聞いてたんですけど、なんかあんま待てど暮らせど、そう言わないんですよ。だから これはなんなんだ。うんん。

高須光聖 02:01
何を頼んできてんのっていう。

高崎拓磨 02:03
頼みに来てるでもなく、なんかこういうの作ったんだけど、 実際、じゃあ、安藤忠雄さんのトイレって、世界的建築家のトイレができました。だけど、見に行くと、やっぱちょっと汚されてたりとか、 傷んでたりとかすぐしちゃう。で、公衆トイレって、なんか人って、

高崎拓磨 02:24
ホテルのトイレは綺麗に使うし、家のトイレは綺麗に使うし、デパートのトイレは綺麗に使うけど、スーパーはちょっと汚したりとか、 なんかそういうグラデーションで、なんかこう、どっかそういう線がある気がするっていう話とかしてて、 なんで人って、トイレ、その、みんなが使うトイレは汚れてもいいって思うんですかね。みたいな、なんか、そういう雑談だった。

高崎拓磨 02:45
なんか、それを解決したいっていう話じゃなくて、なんか、今、そういうの作ったんだけど、そういうことを今自分はすごい気になってるんですよみたいな話をされて、 なんか、それで、いろんな会話をしてて、僕もちょっと、じゃあそれ面白いから少し考えますって言って、何するって決まってなかったんですよね。で、それで、 定期的にあって、定期的にずっと、その人間ってみたいな話とか、いろんなトイレの話とか、色々してる時に

高崎拓磨 03:13
流れ流れて人の価値観を少しでも変えるにはどうしたらいいんだろう。みんながトイレ綺麗に使うにはどうしたらいいんだろう。
でも広告ってやっぱ限界があるなと。自分広告の人間だけど、広告はやっぱやってる時はみんな綺麗にするけど、 その広告なくなったらもう元に戻っちゃう気がする。それ広告の宿命で、

高須光聖 03:34
滞空時間をどんだけ長くできるかっつっても限界がありますもんね。

高崎拓磨 03:37
もうちょっと深いところで、すっごい綺麗なアートを見たら一生忘れないみたいなことやっぱり人間あるんで、 それに近しいことってやっぱもしかしたらできるかもしれないですよねって話をして、で、なんかやっぱデザインじゃなくてアートっていうのが結構大事じゃないかな、なんかやるんだとしたらそういう方が面白いかもしれないって話で、話してる時に、2人ともヴェンダースがすごい好きで、

高須光聖 04:02
じゃあたまたま2人とも好きだったんですね。

高崎拓磨 04:05
たま好きだったんですよ。僕がなんか資料つけてたヴェンダースの写真集かなんも見て、 ヴェンダース好きなんですか。って言われて、いや、好きも何もみたいな。僕が学生の時に映画監督になりたいと思ったのはこの人のせいで、それで8ミリのカメラを買って、 で、映画監督になれなくて、電通に入ってCMやって30年経って、みたいな話とかして、いや、自分も好きなんでって話していて、なんかワンチャン聞いてみるみたいな、断られても面白いって話ししたんです。

高須光聖 04:39
それはそれでね。

高崎拓磨 04:41
うん、バーに行って、うん、俺、ヴェンダースに断られたことあるんだよっていう一言を手に入れるってのも素晴らしい。

高崎拓磨 04:48
だから、そういうことやったことある人いないだろうから、やってみよっかって2人で言って、2人でメール書いたんす。
で、送ってしばらくたったら "I'm in" っていう、やるよって返事が来てます。東京がすごい好きなんですよへえ。で、小津安二郎がすごい好きで。

高須光聖 05:03
え、そうなんすか。

高崎拓磨 05:04
東京がすごい好きで、日本をほんとに愛してるんですよ。自分の第2のふるさとって、もういろんなとこで言ってます。だけど、11年来てなかったです。で、僕らトイレを舞台にした短編を4つぐらい作るみたいな、中身何も決めてないけどやる? みたいな感じで。うん、メール書いたんですけど、 なんかそういう11年ぶりに東京に行けるっていうのは、なんかすごい自分にとって今呼ばれてる気がするから、すごい行きたい。みたいな感じ。

高須光聖 05:32
いい感じ

高崎拓磨 05:34
で、5月に1回見に来るって見てからじゃないと、うん、なに撮るか。

高須光聖 05:39
その音を入れよう、まずは

高崎拓磨 05:41
5月に来た時に僕らは、巨匠なんで、やっぱやめたとか、なんか5年後ねとか言い出したらちょっと嫌だなと思って、 記者会見をしようって、役所さん呼んで、安藤さん呼んで、ヴェンダース来てもらって記者会見したんですよ。で、 冷静に考えると、何作るって決まってない記者会見、凄いですね。

高須光聖 06:04
すごいっすね。はめ込みましたね。宣言みたいなもんすよね。選手宣戦みたいな。

高崎拓磨 06:13
なんか、なんか作りますって言って、でもその時、役所さんが、 全然脚本もないし、何も決まってないんだけど、なんか美しいものになる気がするってなんか超予言をしてて、役所さんが、でも僕はそれ聞いて、美しいものになるんだって。
でもそれが結構実は大きくずっと影響を受けてて。で、そのトイレをヴェンダースはやっぱちっちゃな聖域だって言ってて。で、人間みんな平等じゃないですか。お金持ってる人も、病気の人も

高崎拓磨 06:46
不良も、なんかもう犯罪者も経過も全員やっぱりそこに行くときは一緒だから、 人間を平等にしてくれる1個の聖域で、それはとても面白い考え方で、それを掃除してる男っていうのは、なんかモンクって僧侶に近いんじゃないかって話をこうずっとしていて、役所広司はモンクだっていう話になって、で、そっからばーっと作り始めたんですけど、

高須光聖 07:12
脚本ってどういう流れで作っていったんですか。

高崎拓磨 07:15
最初はなんか4つの短編のアイデアをたくさん持ってったんですよ。もう本当に新入社員みたいに、もう大好きな人なんで、もう初心に戻りまくって、たくさん持ってって。

高須光聖 07:28
なんかに引っかかれば。みたいな感じですよね。

高崎拓磨 07:32
24, 5の放送作家が高須さんに企画持ってくみたいな

高崎拓磨 07:35
いやいやいや

高崎拓磨 07:41
絶対に、今まで没になったやつの、もしかしたらこれも

高須光聖 07:45
っていうね、なんかね、うん、

高崎拓磨 07:47
わかってくれるんじゃないかみたいなのあって、すっごいたくさん持ってったら、結構やっぱ気に入ってくれて、うん。で、テーブルにばーっと並べて、うん、なんかこれを 全部撮りたいって言い出して、映画にしようかってヴェンダースが言って、僕はものすごい嬉しかったんですけど、あんまり喜ぶと、なんかこう、誘導したみたいに思えると嫌だなと思ったから、すっごい、

高崎拓磨 08:15
ものすごいポーカーフェイス、固まってた。そしたら、心配するな。俺は映画を撮ったことあるんだ、知ってるかって。
それで映画になったんです。だから、そのエピソードをどうやって映画にするかっていうのは、次の日に彼が言い出したんですけど、男の2週間にしようって。

高崎拓磨 08:37
月曜日こういうことがあった、火曜日こういうことがあったっていう、ちょっと特殊な映画にしたいっていう、その骨格はヴェンダースが言って、で、どれを月曜日にするか、火曜日にするかって話をして、それで、わって書き始めた。

高須光聖 08:51
あのー、ね。スカイツリーが見える家。

高崎拓磨 08:56
押上、はい。

高須光聖 08:58
あそこは結構探された場所ですか。

高崎拓磨 09:01
その、5月の時にヴェンダースがすごい質問攻めにするんですよ。年収はいくらなんだ。朝何時に起きるんだ。家族はいるのか。布団はどんな布団なんだ。家にテレビがあるのか。何を読んでるんだみたいなこと、ずっと質問攻めにあって、 で、しばらく答えて。よし、そいつの家を探しに行こうって言って。

高崎拓磨 09:23
どこに住んでると思う、って言われて。で、浅草とか押上じゃないかって言ったら、じゃあ、そこに行こうって言って、歩き回るんですよ。で、3日間歩いて、で、78歳なんですけど、3日間ずーっと歩いて、僕はもうここじゃないかみたいな場所も調べてたんですけど。

高須光聖 09:41
ある程度はね。

高崎拓磨 09:42
で、ちょっとおしゃれな洋館崩れの古い家とか、ちょっと

高須光聖 09:46
(そういう)バージョンも

高崎拓磨 09:47
絵になりそうなところ、いっぱい持ってたんですけど、どれも気に入らなくて。歩いて探すって、 浅草寺の周りとか、ぐるぐる、ぐるぐる歩いて回って、で、しばらく歩いて、3日目にここに住んでると思うって言い出して。で、それは浅草の浅草寺の裏のちっちゃいアパートだったんですけど、本当、なんでここっていう。

高須光聖 10:08
でも、あそこ、めっちゃよくないですか。

高崎拓磨 10:09
で、そこがそこじゃなかったんですよ。それで、その、見つけたアパートを、見つけたとか言われちゃったから絶対借りなきゃいけない。で、もうすっごい大変なことになっちゃってトライしたんですけど、 ものすごく変わった方が住まれてて絶対嫌だと。もう来てくれるんで、 大家さん経由でちょっとアタックしたら、もうあの人は無理よみたいな言われて、諦めなさいっていう、何度言ってもダメで、

高須光聖 10:35
じゃあ、えらいこととになっちゃた。

高崎拓磨 10:36
もうダメになっちゃったんで、必死になって。その後、ヴェンダースが帰った後にその探し方を思い出してもう1回歩き回って、僕らがヴェンダースなしでヴェンダースごっこして探して、ここならなんとかなるんじゃないかって場所を見つけて。で、ベルリンでビデオ見せて、じゃあここにしようって言われたんですけど。

高須光聖 10:59
納得してました?

高崎拓磨 11:00
してたんですけど、やっぱ直接見ないと俺はわからないって。あの場の空気を感じないとわからないと。

高須光聖 11:05
それはそうです。そうですよね。

高崎拓磨 11:07
で、成田に9月に撮影の直前に来たんですけど、迎えに行ったら家を見ようって言われて、OKって言ったけど見たいって言われて、これNGって言われたとどうしようって。

高須光聖 11:18
ここ怖いなぁ。

高須光聖 11:19
わかりますよね。

高崎拓磨 11:20
でも、なんかそういう時って大体NG出るじゃないですか。なんかすっごいみんな緊張してて。

高須光聖 11:26
だってそんだけ気にしてるとこですから、そう簡単にOK出ないんですよ。

高崎拓磨 11:30
で、部屋にいたら、やっぱ暗くなって、なんか広すぎるって、あーっ、みたいな。
で、そっから30分黙っちゃって、アパートの部屋で座って、黙って、うわあ、もうこれやだやだ、もう1回こっから探せないな、もうこっから探すの無理だなとか思いながら、こう、悩んでたら、 ここのドアを閉めたら狭くなるっていう感じで。で、なんか1個部屋を潰して、で、狭いスペースっていう風にして、

高崎拓磨 12:01
奥で植木を育てる部屋を作ったんですけど、あそこは、だから、ヴェンダースが植木を育てるだけの部屋にする、と。

高須光聖 12:07
なるほどなるほど。

高崎拓磨 12:10
で、それで事なきをえて。

高須光聖 12:11
なるほど、いい場所でしたね。めちゃくちゃいい場所です。

高崎拓磨 12:15
最終的にはもうロケーションは完璧です。あそこはもう作ったのかって

高須光聖 12:19
あの場所しかないですよね。

高崎拓磨 12:21
駐車場もあって。

高須光聖 12:23
すっげえいい場所見つけたなと思って、3割ぐらいあの場所で決まったんちゃうかなと思いますよね。

高崎拓磨 12:28
もうあれだけ回数出てくる場所だから、場所がもう何かを話してくれてないとそういう絵にはなんないんで。だからセリフもないし。

高須光聖 12:38
すっごいそうなんですね。で、すごい難しいのが、ああいう、なんかこう、ちょっと古びた、 クラシカルな家で、で、まあ、ああいう役所さんがああいうキャラクターで、 の時に、その、東京の綺麗なトイレがすごく浮いて見えないかなと思ったんですよ。でも、これを、もう、そもそもそっから始まってるから、でも、

高須光聖 13:00
それを馴染ますように、やっぱり僕は、なんかスカイツリーが、なんとなく 馴染んできたんですよ。あれが見え隠れしたりとかするのと、奥の方に若干見える植物を植えてる感じが、ちょっと間を取り持ってる感じがしてて、 心地よく、最初、なんかこう、え、こういう綺麗なとこ行くとね、どうしても、なんかこう、綺麗なトイレっていう風に。そうですね、本当ならちょっと汚いおトイレを掃除してほしくなっちゃうぐらいだったけど、

高須光聖 13:31
なんか、いいわ、これ。逆にこっちの方がだんだん良くなってきたって思ってくる。

高崎拓磨 13:36
なんとなく、だから、トイレに汚物は入れないって話してて、決めて、その辺りで、ちょっとずつ、 ファンタジーみたいなところが、うん、60過ぎたおじさんの、 なんか小さな、東京っていうコンクリートの町の中にある、ちっちゃな森に住んでるん。おじさんの、なんか妖精おじさんみたいに、

高崎拓磨 14:00
だんだんなってきましたね。なんか、フィクションの存在なんですけど、やっぱりドキュメンタリーみたいに、こう、追ってったんですけど、でもなんかどっか虚の中にあるんで、大きく言うとファンタジー感が、トイレも含めてそうですね。外国で見てると、あのトイレ全部セットなのって聞かれて。

高須光聖 14:26
そうそう、そうも思えるように。最後なんですか、あれ。あの人。役所さん。

高崎拓磨 14:32
ほんとにやばいです。

高須光聖 14:34
やばいっすね、あの人。

高崎拓磨 14:36
もうとんでもないです。

高須光聖 14:37
ずうーっと見ちゃいましたよ。もう、もう1回、もう1回戻してもう1回見たいぐらいの。なんすかあれ。凄い演技しますね。

高崎拓磨 14:47
なんかほんとに脚本がうまくなったみたいな気が。

高須光聖 14:51
いやいや、よかったです。もちろん良かったですけど。

高崎拓磨 14:53
だって泣くとしか書いてないですもん。泣くとしか書いてなくて、なんでああいう感じになるのか。

高須光聖 15:02
なんであんなことになるんすか。何分もたすんすかと思うぐらい。

高崎拓磨 15:05
もっと編集のとき倍ぐらいあったんで。

高須光聖 15:07
そうですよね。

高崎拓磨 15:08
みんな見たいんで、長く入れてたんですけど、さすがに長いかって。

高須光聖 15:14
ずっと見れたな。

高崎拓磨 15:15
不思議ですよね。もう67、8ぐらいの男の人の顔のアップを。

高須光聖 15:23
曲もすごい良かったですよ。ビタっと合ってるのと、あの顔で運転されるともうちょっと待ってくれよと思いながら、

高崎拓磨 15:30
あのためにもう前があるぐらいの感じですよね。すごいですね、あの人。役所さんはすごいですね。日本の宝ですね。

高須光聖 15:39
役所さんとはもう昔からの付き合いだったんですか。

高崎拓磨 15:43
この、本当に、この仕事のちょっと前に、人づてに、今、楽屋に、たまたまスタジオにいる時に、横の楽屋に役所さんいるけど挨拶する? とか言われて。紹介してもらえるんですか、ぜひって言って、うん、ご挨拶しただけですね、お辞儀したぐらいだったんです。それで役所さんのところには、だから、ヴェンダースとこういう話やるんだけど、 みなさんオッケーって言ったら、役所さんやってくれますか。っていう聞き方をしに行って、

高須光聖 16:13
難しいですね。オッケーじゃなかった場合は失礼に当たるしね。なんかその辺も難しいじゃないですか。

高崎拓磨 16:17
そうですね。でも、ヴェンダースがこれやるって言ったら、役所さんやりますっていう聞き方して。

高須光聖 16:24
どっちもちゃんと持ってないとダメだよね。

高崎拓磨 16:26
どっちがいい、オッケーなのかわかんない。
で、ヴェンダースの役所さんがぜひって言ってますよって役所広司知ってますか、僕たちの宝物知ってますか、みたいな。もちろん知ってるよ、シャルウィダンスなんて毎年クリスマスに見てるよ、みたいな感じになって。
で、そうですね、だから、やっぱ役所さん、やっぱり相当、海外の監督にもやっぱり知られてるし、

高崎拓磨 16:50
みんな、やっぱ、1度はやってみたいって思う人みたいなんで、

高須光聖 16:54
なんか、お話になりました。映画になって、出来上がった時に見られて、監督とか、役所さんとか。

高崎拓磨 17:01
役所さん、すごい、最初の試写の時に、自分がこんなにずっと、最初から最後まで出てるのないから

高須光聖 17:09
ほんとだ。

高崎拓磨 17:10
なんか、客観的にどうしてもやっぱ見れないけど、 でも、やっぱり、スクリーン上で生きてるっていう状態になるっていうのを、やっぱりずっと目指してるし、なかなかやっぱそうはならなくて、 で、それが、なんか、今回、少しそこに近づけてる気がするな、みたいなのはなんかおっしゃってて。

高崎拓磨 17:33
やっぱり、作品と商品の違いみたいなのをすごいおっしゃってて。商品としての映画っていうのはもちろんあるし、作品としての映画ってあって。で、どんなに素晴らしい俳優さんでも、 ものすごい能力があっても、 1回もその作品っていうものに出会わない人もいる。で、ほんとに、そういう人もたくさん見てきた。で、自分はたまたまこういう機会に出会えてすごい嬉しいっていうのを

高崎拓磨 18:02
おっしゃってました。

高須光聖 18:03
それがね、カンヌまで行くんですもんね。

高崎拓磨 18:06
伝わるっていう。セリフあんまりなかったんで、良かったですね、海外でも。

高須光聖 18:13
出来上がっていく中で、途中でもうその手応えを感じてたのか、それとも、いや、どうなるんだろうこれってもっていったのか。

高崎拓磨 18:22
撮影……一応、なんかシナリオはあって、そのシナリオ、大きく言うとシナリオ通りな編集にはなってるんですけど、 でも、シナリオ通りには撮れてても、どういう映画なのかっていう、こう、最初に感じるのは何っていうのは ちょっとわかってなくて。で、それは監督も分かってなくて、で、編集しながら、やっぱりそれを、手探りで探していくんですよ。

高崎拓磨 18:46
で、これ、この辺で、こういう風にするとこういう感覚の映画になりそうだなっていう、作ってるもので自分も気づく部分があって、それをずっと気づきながらやっていて。
もうずっとほんとに一緒に編集してたんですけど、編集室で2人とももうやりすぎてて、どんな感じなのかわからなくなってて。
細かいところは全部ピタって合わせたんですけど、

高崎拓磨 19:10
なんかこれって。で、どういう風にみんな思うんだろうねって言って、信頼するベルリンの人に何人か来てもらってみせたら、 その人たちがみんなすごい。あれ、ヴェンダースの最近のなかで1番傑作じゃねえか。みたいな、みんな言うんで、ヴェンダースもすごい、なんかあれ、俺、傑作作った、みたいな感じになって。なんか映画を作ってる時、どこで公開するって何も決めてなかったんですよ、そういえば。急に振り向いて、これってどう。どうするって言われて。

高崎拓磨 19:43
あれ、そういえば公開のこととか何も考えずに作っちゃった、映画になっちゃったって言って。 いや、これはじゃあ公開する、なんかこう、配給会社とか世界中、やっぱちゃんと話した方がいいね、話そう。
で、ワールドセールスエージェンシーって、世界中の配給会社にセールスしてくれる人たちは最初に決めるんですけど、その人たちに決めたら、その人たちが

高崎拓磨 20:07
ぜったい映画祭に出せって言って、で、カンヌがもう頑張れば間に合うからカンヌ頑張れって言われ。で、一生懸命みんなで頑張って間に合わせて。で、呼ばれてっていう。そっからもうラッキーで、すごい雪だるまがずっと転がり続ける感じだったんですけど、

高須光聖 20:26
嬉しいですよね。そこまで。こう、なんかこう、

高崎拓磨 20:29
不思議ですよね。

高須光聖 20:30
ねえ、人が話に来て、トイレ作ったんですけどっていうところから、いつの間にかコロコロコロコロ転がりながらね。そんなとこまで行けるのは。しかも、しかも、 1番会いたかった監督と一緒に。最後よくわからんとこまで話し合ってるなんて、 そんな羨ましい時間持てるなんてないじゃないですか。

高崎拓磨 20:51
自分のほんとに心のメンターっていうか、なんかやっぱり1番聖地みたいなところのいる人なんで、 やっぱ相当かけがえのない経験はできましたね。

高須光聖 21:02
いい経験ですよね。あの、いろんなことをね、お聞きしてるんですけど、あなたにとっての転機みたいなね なことを聞いてるんですけど、転機とかはどこですかね。1番の転機ってなると、

高崎拓磨 21:13
ずっとやっぱり基本的には人に会って、いろんな人がいろんなものもらいながら自分変わってるんで、まいかい転機っちゃ転機なんですけど、1番大きいのは 会社入った時、20代前半に 初めてこういうクリエイティブって仕事して、はい、自分の企画を人に見せるっていう、今までもう自分で考えたものを友達呼んでうん、フィルム回してできた。ってやってたのを、

高崎拓磨 21:39
なんか人に見せるって、もう経験してる先輩たちに人の企画を見せるっていうのが1番やっぱり衝撃的な辛い時間でもあり。で、何がいいか悪いかもわかんないまんま作ってたんで、すごい怖い時間なんですよね。怖いから一生懸命やってたんですけど、その時にこう、もう今ちょっと会社辞められちゃった先輩なんですけど、

高崎拓磨 22:02
ちょっと、何やっても面白い人、何考えても面白い、すごい面白い人がいて。で、通んないんですよ、その人も。全部が全部通るわけじゃないんだけど、打ち合わせに持ってくるものがもう とんでもないモンスターみたいな面白い人がいて、面白すぎて通んないみたいな。でも構わずそれやり続ける、自分を曲げない人だったんですけど、 すごい尊敬してて。で、僕はもう見るたびに爆笑してたんですけど、その人に自分の企画見せると、

高崎拓磨 22:31
これほんとに自分面白いと思ってる。って言われて。それはすごいショックで。もう そっから30年経ってるんですけど、その人まだ体の中にいる感じします。自分が本当に腹の底から面白いと思ってるものをいま出してるかどうかって、相手が面白いって思いそうだなって言って作ってるのは、

高崎拓磨 22:55
相手に合わせてるんで、それまでじゃないっていうか。あなたこのぐらいのもので喜ぶでしょっていうので作ってるの、やっぱちょっと失礼だしね。でも、自分がやっぱ腹の底から面白いっていうのを自分は見つけなきゃいけないんだっていう。だからこの人と違っていいし、通んなくてもいいんだけど、自分は絶対面白いと思ってるっていうのは、それはやっぱ、それを探すために悩まなきゃいけないんだっていうのは最初に食らって。

高須光聖 23:23
でもそれいーい先輩ですね。

高崎拓磨 23:25
それはもう抜けなかったですね。

高須光聖 23:28
あの、生きていく上で仕事のマイルールありますかっていうのも聞いてるんですけども、なんかあったりとかします?

高崎拓磨 23:34
仕事で言うと、広告やってるとき特にそうなんですけど、1個仕事が来た時は3個にして返すっていう、その 3方向って意味じゃなくて。例えばこの水を売ってくださいっていうCMだったら、 なんかそれをじゃあ朝女性が飲むっていうシチュエーションで広告作ろうってやったら、

高崎拓磨 23:55
朝、女性が何に困ってるん。で、満員電車。じゃ、満員電車のその困ってるの、どうやって解決できる。っての、 勝手に考えて。で、それを誰とやるとどうなるって言って、こう、もう1個作っちゃうんですよね。で、それは、こっちの水を売ってくださいっていうのと関係ない話ではあるんですけど、 朝の女性っていうのを、こう、自分が考えるきっかけになったら、

高崎拓磨 24:18
なんか、その、満員電車っていうものを、自分の中で仕事にしていくっていうか、アイデアにしていくっていうのを、 大体3つぐらいは、なんかこう、勝手に考えるっていう。で、それを誰に相談すると形になるかなっていうのを考えて、会いに行く。で、会うと1割も形になんないんですけど、その時会った人と話してる時に、その人から聞いた話がまた別なおーおーってなる。

高須光聖 24:43
うんうん。

高崎拓磨 24:44
ていうのがあって、教えられるんで。なるべく素でひとに会いに行くと、あんまりインプットとかないんですけど、 なんか弾持って人に会いに行くと、すごいインプットがあるんで、それはできるだけするようにしてます。

高須光聖 24:59
常に動いてる案件で、何個ぐらいあるんですか。

高崎拓磨 25:03
あんまり数かぞえてないんですけど、なんか、ほんとにほんとに色々分岐しちゃうんで、ざっくりでいうと、10, 20は全然覚えてますね。

高須光聖 25:12
じゃあ、やっぱなんとなく、メールきますよね。バンバン、バンバンってね。

高崎拓磨 25:16
来ますね。 ヴェンダースとかとやると、もうなんかベルリン、時差関係なくなって、結構朝起きるのがずっときつくて、朝起きるとなんか嫌なメール来てんじゃないかと思って、やっぱやめたってメールが来てんじゃないかと思って。

高須光聖 25:33
……

高須光聖 25:35
英語で返せるんですか。

高崎拓磨 25:36
英語はもう、でも頑張って、あれです、もう翻訳ソフトとか使いながらなんとかしてます。

高須光聖 25:41
すごいっすね。でもでも、

高崎拓磨 25:43
必ず僕の英語は変でごめんなさいって一文必ず名前の前に入れるように。

高須光聖 25:47
でもすごい。

高須光聖 25:49
そのやり取りがちゃんとできるっていうのはすごい。

高崎拓磨 25:51
今やっぱAIにすごい助けられてますね。

高須光聖 25:53
ハハハハハハハ。

高須光聖 25:55
いろんな方に。このラジオのゲストどういう方がいいですかねっていうのはちょっとこう。はい、付属して聞いてるんですけど、誰かいらっしゃいます?

高崎拓磨 26:06
この間、試写で『ぼくのお日さま』っていう映画を見せてもらったんですけど、奥山裕くんっていう。まだ30なってないと思うんですけど、映画監督がいて。相当いいです。多分、僕、次彼来るんじゃないか。

高須光聖 26:22
えー、そんな。はい、

高崎拓磨 26:24
その映画がカンヌの、ある視点部門に選ばれてるんですよ。2作目で、28歳で。彼も広告会社系なんですよ。

高須光聖 26:35
そうなんですね。

高崎拓磨 26:36
この間話してたら、やっぱりすごい話が面白くて。やっぱり面白いっていうか、悩んでることとか考えてることとかがちょっと似てるので、 面白いいですね。

高須光聖 26:48
じゃあ、ちょっとぜひぜひ、そういうかな。なんか告知とかがあったら。

高崎拓磨 26:57
そうですね。『PERFECT DAYS』っていう映画が12月の22日から公開したんですけど、 まだ劇場やってるんですよ。ロングランしてる。

高須光聖 27:08
渋谷でもやってるし、新宿でもやってました。

高崎拓磨 27:10
メイン館が日比谷シャンテなんで、シャンテが結構1番最後までやるんじゃないかなとは思うんですけど、まだギリギリやってるんで、あの劇場でぜひ見ていただきたいのと、 おかわりしてほしいなって。

高須光聖 27:24
劇場であのラスト見たらすごいでしょう。

高崎拓磨 27:27
で、やっぱりなにも起きないんで、だから、ちっちゃいものをおっきいので見るっていうのは、やっぱ映画の面白さでもあるので。なんかスクリーンで、なんでもないものをでっかく見ると、なんか気づくこともいっぱいあるんで。

高須光聖 27:41
わかりますよ。なんかね、低温やけどさされた映画みたいな、知らん間に低温やけどしてたみたいな。

高崎拓磨 27:49
ここに来て、あーすごいパンチライン。

高須光聖 27:51
でもほんとにそういう映画でしたよ。

高崎拓磨 27:54
なんかそれすっごいわかります。

高須光聖 27:56
どえらい。なんか低温やけどしてるぞ、いつの間にかみたいな。

高須光聖 28:00
ずっと、痛いって。

高須光聖 28:01
あれーっと思って。

高崎拓磨 28:03
ずっと水ぶくれが、みたいな。

高須光聖 28:04
うん、そういう映画でしたね。

高崎拓磨 28:06
ゆっくりじわじわ。

高須光聖 28:07
気づかないんですけど、足動かしたら、あれっていう感じの、焼けてたみたいな映画でした。ほんとに面白かったです。

高崎拓磨 28:16
ぜひ劇場で見てください。

高須光聖 28:18
ということで、dodaプレゼンツ空想メディア。今夜のゲストはクリエイティブディレクター高崎卓馬さんでした。ありがとうございました。

高崎拓磨 28:24
ありがとうございました。

ナレーション 28:26
doda presents 空想メディア、dodaの提供でお送りしました。