【B'z】熾烈な初登場1位争いをした作品を考察する【ORICON】

※あくまでも、筆者の「独自考察」となります。



9月21日は、B'zのデビュー日である。2024年で36周年である。
二人組のユニットがここまで長く続けられるというのは滅多にない事である。

そんなおめでたい日ではあるが、今回は、人気絶頂ながら厳しい時代も送ってきた……そんな時代にスポットを当ててみる。


B'zの作品は、今でこそ「オリコン初登場1位」が当たり前の印象であるが、
過去に、初登場1位を阻まれるかもしれない危機が何度かあった。


(1)B'z『SURVIVE』と河村隆一「Love」

1997年11月19日(水)発売、B'zの9作目のアルバム『SURVIVE』。
1997年11月22日(土)発売、河村隆一のソロアルバム「Love」。

ナゼか3日違いの発売日ではあるが、同週発売となった両者。
『SURVIVE』は、初動売上枚数こそ104.0万枚を記録して初登場1位を獲得したものの(1997年12月1日付)、
「Love」は、初動売上枚数102.1万枚と、僅か2万枚差にまで迫られ、B'zは大苦戦した。

完全に発売曜日に助けられた形となったわけで、もし、両者が同日水曜日にリリースしていたら、『SURVIVE』は間違いなく初登場1位を逃していた。


ちなみに、2~3週目は「Love」が1位(2週連続)となった。

その後の売上枚数では大きく差をつけられ、
累計売上枚数は、『SURVIVE』が172.3万枚、「Love」が278.8万枚と、実に106.5万枚もの差をつけられた。

河村隆一が、LUNA SEAを遥かに超える売上を記録したのに対し、
B'zは、前作『LOOSE』(300.3万枚)よりも大きく数字を落とす結果となった。

シングルを出せばミリオンセラーが当たり前で、アルバムを出せば飛ぶ鳥を落とす勢いで売れ続け、B'zファンの間では今なお人気が高い『SURVIVE』は、CD全盛期だった1997年にも関わらず、思いのほか伸びなかった。


◆『SURVIVE』の概要

アルバム全体を通してみれば、名曲揃いのアルバムだと、自信を持って推薦できる。
まぁ、「FIREBALL」だけが浮いてしまっている感じもするがw
アウトテイクの「あなたならかまわない」を入れたほうがよかったのかもしれない。(個人的感想)

CD EXTRA仕様になっており、PCで読み込むと「Liar! Liar!」のPVを観る事ができる。
但し、PCによっては読み込めずに再生できない事もあるので、レンタルする場合は注意が必要。
CDプレイヤーやPlay Stationでは問題なく音楽再生できる。
現在は「特典DVD」が主流になり、CD EXTRAはもはや見る影も無くなった。


フォトブックの36頁目は、2バージョン有り。



(2)B'z『HOME』とL'Arc〜en〜Cielシングル三部作

1998年7月8日(水)発売、B'zの25作目シングル『HOME』。
1998年7月8日(水)発売、L'Arc〜en〜Cielのシングル三部作「HONEY」「花葬」「浸食~lose control~」。

同年5月に発売の『B'z The Best "Pleasure"』(金盤)が売れに売れまくり勢いを取り戻したB'zと、成長著しい若手のラルク。
正真正銘、ガチの初動1位争いに注目が集まった。

当時は、現代で多く見られる特典商法や複数商法もあまりなく、これといった緊急対策もなされなかった。

結果として、B'z『HOME』が初動売上枚数55.9万枚を記録して、僅差で初登場1位を獲得したが(1998年7月20日付)、
ラルクとの差は僅か1.5万枚であり、B'zはかなり大苦戦した。


ちなみに、2週目はラルクの「HONEY」が1位となった。

その後の売上枚数では大きく差をつけられ、
累計売上枚数は、B'zの『HOME』が96.1万枚、
ラルクの「HONEY」が123.8万枚、「花葬」が104.9万枚、「浸食~lose control~」が93.8万枚となり、
最終的な累計売上枚数では、「HONEY」「花葬」が『HOME』を上回った。

この時は、ラルクの三作同日発売に助けられた形となったわけで、
もし、どれか一つに絞られていたら、B'zの初登場1位は途切れていた可能性が極めて高い。

このような最も熱い初登場1位争いはもう二度と見られない。


◆『HOME』の概要

金盤と銀盤の谷間にリリースされた『HOME』は、
公式には「HOME」の単独A面だが、「The Wild Wind」との両A面と間違われる事があり、当初のオリコンでは両A面扱いされていた。

両曲でPVが制作されており、タイアップも付いている。音楽番組でも両曲が演奏されたため、やはり両A面と勘違いしやすい。(B'zの二人も両A面と発言した事があった)

なお、銀盤には、シークレットトラックとして、HOMEのアコースティックバージョンが収録されている。



(3)B'z『今夜月の見える丘に』とサザンの「TSUNAMI」とモー娘「恋のダンスサイト」

2000年2月9日(水)発売、B'zの27作目シングル『今夜月の見える丘に』。
2000年1月26日(水)発売、サザンオールスターズ「TSUNAMI」。
2000年1月26日(水)発売、モーニング娘「恋のダンスサイト」。

B'zは、当初は1月26日(水)に発売予定で、2週間延期された形となった。
これは、サザンとモー娘が1月26日発売でモロ被りのため、競合を避けたためと思われる。

なお、これら3作品の初動と累計の売上枚数の記録は、
B'z………初動671630枚、累計1128830枚。
サザン……初動654210枚、累計2936439枚。
モー娘……初動600860枚、累計1229970枚。

サザンの1997~1999年あたりの売上不調具合や、それまでの22年の活動期間の中でミリオンシングルが意外にも4作しかなかった事を考えると、「TSUNAMI」の飛躍は驚愕そのもの。



(4)B'z『Don't Wanna Lie』とAKB48「CD付き総選挙投票券」

2011年6月1日(水)発売、B'zの49作目シングル『Don't Wanna Lie』。
2011年5月25日(水)発売、AKB48「Everyday、カチューシャ」。

AKB48の方には、「AKB48総選挙」の投票券が封入されており、"ヲタ買い"によって初動売上枚数133.4万枚を叩き出し、Mr.Children「名もなき詩」の初動売上枚数120.8万枚を大幅に塗り替えていた。

B'zの前作のシングル『さよなら傷だらけの日々よ』の売上枚数は、初日は50335枚、初動は130195枚で、B'zの売上の大半が初日でほぼ固まる傾向にある事や、
AKB48総選挙の投票期間が6月8日まであり、駆け込み需要もあり得る事も考えると、AKB48の2週連続1位獲得の可能性は十分にあった。
「同週リリースによる初登場1位争い」ではないものの、B'zの初登場1位を、一週早く発売したAKB48に阻止される可能性が出てきた。

そのため、ビーイングは、急遽、購入者スペシャル特典が発表され、初回限定盤と通常盤それぞれの包装ビニールに添付されているシールをハガキに貼って送付すると、『Don't Wanna Lie ~Ballad Version~』が収録されたスペシャルCDをもれなくプレゼントというキャンペーンを実施した。
更に、その応募締切も、当初は6月5日(日)までだったが6月12日(日)まで延期された。

一人の人に初回限定盤と通常盤の両方を買わせて特典で釣る事で、初動売上枚数は168917枚となり、初登場1位を獲得した。(2週目のAKB48は11.9万枚で2位)

しかし、この手法はアンチの恰好の的となってしまった。


■熾烈な初登場1位争いはもう見られない

という事で、B'zが熾烈な1位争いを繰り広げた作品をいくつか紹介したが、
B'zでなくとも熾烈な1位争いをしたアーティストは過去に大勢いた。

だからこそ、昭和から平成中盤あたりまでは、オリコンチャートの左ページ(1~50位)に掲載される事は、歌手やバンドにとってステータスの一種にもなっていた。

誰かさんの「2位じゃダメなんですか?」が通用しない世界。
デビューしてアルバム3作出しても売れなかったらクビになった時代。

そのために、テレビやラジオに出演して名前を売ったり、営業回りしたりしていた歌手やバンドは非常に多かった。
B'zの松本孝弘氏も、左ページに強い拘りとビジョンを持っていた。

しかし、時代の変化と共に、CD販売は廃れていき、少しでも売上枚数を伸ばすための戦略として、特典・オマケが付属する「特典商法」や、通常盤・初回限定盤ABといった形態の「複数商法」が当たり前になってきた。
これによって、一人の人が通常盤と初回限定盤の両方を買ったらそれで2枚売れる事になるわけだが、果たしてそんな事をして価値を見出せるものなのだろうか?
とはいえ、一つの作品には多くの人が製作に関わっており、彼らの生活も懸かっている。

また、デジタル配信がメインとなっていき、アルバムでさえも1曲単位でダウンロードできるようになるなど、音楽業界も宣伝方法や楽曲の売り方に多様化が進んできた。
オリコンチャートにもデジタル系ランキングが加わるなどの変化も見られた。


しかし、、、

プロ野球界にクライマックスシリーズという名の"敗者復活戦"が導入された事で、1989年の10.19や1994年の10.8のような熾烈なペナントレースの熱戦烈戦超激戦が見られなくなったのと同様に、
音楽業界も、あの時のような熾烈なガチンコ1位争いはもう見られないだろう。多様な時代になったからこそ尚更そう思う。

もはや、オリコンチャートなどという視野の狭い世界で一喜一憂するような時代でもなかろう。


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