名古屋市の税収増は、河村減税による効果なのか?
■名古屋市に関する資料
巷では、「名古屋市は、河村たかし氏が市長に就任し、市民税を5%減税した結果、税収が800億円も増えた」などと言われているらしい。
果たして本当なのだろうか???
筆者は2007年に、指定都市である名古屋市の住民になったが、
2009年4月28日に河村氏が名古屋市長になって以降、河村市政に疑問を持ち続けている。
…という事で、以下、河村減税は本当に効果があったのかどうかを、名古屋市の一次資料を基にして考察する。
■名古屋市の人口動態の推移
(1)出生・死亡に伴う「自然動態」(自然増減数)
・少なくとも、1981年以降は増加数が鈍化の一途を辿る。
・2013年に減少に転じ、以降11年連続で減少の一途を辿る。
(2)転出・転入に伴う「社会動態」(社会増減数)
・1998年以降は、ほぼ増加の一途を辿っている。(イチブの年を除く)
・偶然か必然か、悪夢で地獄の民主党政権の期間中はキレイな谷ができていますねぇw
全体的な人口の動きとしては、
調査開始の昭和35年より、全体の人口は増加し続けているが、
近年は鈍化し、令和になってからは僅かに減少し始めた。
他地区でも同様だろうが、65歳以上の割合が25%(4人に1人が高齢者)を超えている。
◎高齢化社会としての側面
⇒自然減少(高齢者の死亡)は増加しているが、団塊世代らが爆速で次々と"高齢者"になっているため、「高齢者数」はなかなか減らない。
◎少子化社会としての側面
⇒出生数が減少し、それに伴って生産年齢人口(15~64歳)や若年層も減少しているため、「高齢者率」はなかなか減らない。
■名古屋市の税収の推移
名古屋市の一次資料の図解にある通りだが、
市民税減税は、2010年度から実施。
2010~2011年度は10%減税で、2012年度からは5%減税である。
市民税減税による全体の減収額は110~115億円ほどである。
個人市民税に限れば80~90億円ほどである。
全体的な税収としては僅かながら増えている。
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■名古屋市の税収(市民税)が増加した要因
名古屋市の税収(市民税)が、ココ10年間で増加した要因は、主に二つある。
(1)アベノミクス効果による景気回復と所得環境改善
→労働人口の増加(正規非正規ともに)
→失業率の改善
→時間あたり賃金の上昇
これは、名古屋市側の公式見解でもある。
指定都市は僻地よりもアベノミクスの恩恵を受けやすい環境であるのは間違いないし、景気回復や所得環境改善がされれば消費活動もしやすくなるわけで、それが税収増へと繋がったのではないか。
他の主要な指定都市も税収増を推移している。(コロナ期を除く)
「減税を打ち出したから働き盛りの現役世代が他地区から流入してきた」と解する人もいるようだが、
少なくとも調査開始以降から人口は増加し続けている事を考えれば、市民税減税云々はあまり関係なさそうだ。
(2)税源移譲
2018年度以降は、愛知県民税4%のうちの2%が名古屋市民税として移譲されている。
2018年度以降の個人市民税が急激に増えたのはこのためで、
「税収が800億円も増えた」というのは、税源移譲分も含めてのものである。
■「減税→税収増」のエビデンスも因果関係もない
結論から言えば、「減税→税収増」と証明できるエビデンスも無ければ、因果関係も無いという事。
サラリーマン家庭で年間5000~10000円程度の減税で、そんなデカいツラをされましてもねぇ…。
というのが、名古屋市民である筆者の感想である。
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■市長の給与カット
「河村市長は自分の給料をカットしてまで名古屋市のために汗を流してくれて素晴らしい」とかいう謎の論調がある。
どこかの大阪ローカル政党でいうところの『身を切る改革』を実践しているつもりなのだろうが、そんな事をしたところで、河村氏にとっては痛くも痒くもない。
なぜなら、河村氏には、自分の父親が創設した会社「河村商事株式会社」があり、現在は同社の実質的オーナーでもある。社長は長男。取締役には妻の名もある。
ゆえに、自分の市長給与をいくら削ろうがノーダメージ。
つまり、自分の給与カットなんてのは、パフォーマンス以外の何モノでもなく、大衆迎合(ポピュリズム)の人気取りにすぎない。
「市長の給料が安いランキング」の上位に名を連ねたところで、何の自慢にもならない。
まぁ自分一人が給与カットする分には勝手にやっていればいいが、市長の判断一つで、市職員の給与にまで影響が及ぶのは非常によろしくない。
人事委員会からの勧告に対して、引き下げの時は光の速さで即決するのに、引き上げの時には額面通りに実施しない。そんな事があってはならない。
働いて成果を出した者に対しては、それ相応の給与にするべきだ。
そうしなければ、市の職員が不足し、公共のセーフティネットが機能しなくなり、公助を受けられなくなる。
理不尽なクレーム対応もしているわけで、なおさら給与を上げてモチベーションを保てるようにしなければならない。
公務員の給与アップはGDPにも直結する。彼らも職場を離れれば一消費者だ。
河村氏以降も市長給与カットが続くようなら、もはやお金持ちしか市長選挙にチャレンジできなくなるだろう。
■河村氏の悪事?
せっかくなので、河村氏の悪事(?)についても触れておきますか。
●金メダル噛み事件
オリンピック・ソフトボールの後藤希友選手の金メダルを噛む河村たかし。
名誉ある金メダルから、菌メダルへ。
なお、金メダルは交換・再発行されたようです。
1896年から続く歴史あるオリンピックのメダルにおいて、不良品以外の理由で交換したのは初らしい。
●トリエンナーレで「7分間」の座り込み。
●怪しげなハンドサイン。
■第50回衆議院議員総選挙に愛知1区から立候補
現職の河村氏は、現在4期目(当選は5回、うち1回は出直し選挙)で、今期の任期満了日は「2025年4月27日」であるが、
2024年10月15日公示・10月27日投開票の衆議院議員総選挙に、某政治団体公認で愛知1区から出馬する。
そのため、公示日前日までに「辞職」するか、公示日の正式立候補を以て「自動失職」するかを選択する必要があった。
10月14日までに「辞職」すれば、
50日以内に行われる名古屋市長選挙での当選者の任期は、河村氏の残り任期である2025年4月27日までとなり、その辺りでまた名古屋市長選挙が行われる事になる。
10月15日に正式立候補して「自動失職」となれば、
50日以内に行われる名古屋市長選挙での当選者の任期は「4年」となる。
河村氏は10月14日付の辞職届を提出したが、議会での同意を得られなかったため、公示日に自動失職になる見通しとなった。
国旗国歌法に反対し、平気でウソをつきまくり、マイナンバーカードにも頑なに反対し続けたがために議論は深まらず、名古屋の改革を大幅に遅らせてきて、トドメには"市議会の会期中"に市長職を放り出した無責任男が、某政治団体から出馬。
とんだお笑いグサですね。
愛知1区は、小選挙区制になってから長らく河村氏の地盤であり、後に名古屋市長に転出後は自分の元秘書が1期やった後、2012年からは自民党がその座を奪い取った選挙区である。
今回の選挙では、自民党・立憲民主党・日本維新の会の各候補者、そして河村氏になる見通しである。
自民党にとっては2009年以来の逆風選挙になる上に保守層が離れた影響もあり、某政治団体の公認で立候補予定の河村氏には追い風が吹いている。何としても河村氏の当選を阻止したいところだが、現実はなかなか難しい。おそらく当選してしまうだろう。
まぁそれならそれで仕方ないだろう。だが、某政治団体が1議席取ったところで一人では何もできないし、政党要件を満たさなければどうしようもなかろう。
何にしても、10月27日の衆議院議員総選挙と、11月予定の名古屋市長選挙が楽しみですね。
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