岸田総理総裁の失策点とは…
筆者が、岸田内閣を一定以上評価しているという事は、以前のnoteにも記した通りである。
だが、何も良い事・素晴らしい事ばかりではなかったのもまた事実である。
総理大臣としての政権運営や政策実行などは、素晴らしいところは多々あったと思っている。
しかし、イチブの政策や自民党総裁としての党運営は、イマイチだったとも思っている。
それが、筆者の岸田文雄に対する評価だ。
■総裁派閥「宏池会」の議員を優遇
岸田氏が総裁総理になって間もない2021年の衆議院選挙の時。
自民党には「現職優先の原則」があるが、これを無視して自分の欲を押し通し、現職を引退に追い込んだ者がいる。
当時の現職は、自分が引退する代わりに、息子を中国ブロック比例単独で擁立するようにしたものの、フタを開けてみれば、全く違う地区に回されて落選。
また「小選挙区で2回以上連続で落選した候補者の比例重複を認めない原則」もあるが、これも無視して、惜敗率が下位で惨敗続きの者に重複立候補を認めた事もあった。
ノーサイドと言えば聞こえはいいが、やはり自分を支えてくれた者を何らかの形で優遇・重用するのは、ある意味で当然なのかもしれない。
そして、今回の総裁選挙管理委員会に宏池会議員がいない事も、優遇の最たるものである。(委員会メンバーは推薦人になれない)
何より、自身が総裁総理になってからも、派閥の長であり続けたのは大いに疑問であった。自民党では2009年に総裁や党三役全員が派閥を離脱する事を決めていた。
そんな岸田氏が総裁派閥(宏池会)を解消するといっても説得力には欠けるのではないか。
岸田信者界隈では、「小泉は口だけだったが、岸田は本当に自民党をぶっ壊した!バーサーカーだ!」と言ってはしゃいでいたが、筆者としては、それは違うと思った。
■統一教会問題
悪夢の参議院選挙の終盤に、降って湧いて出てきたとしか思えない統一教会問題であるが、これは初期対応を完全に誤った。
あの雑兵Yは、自分の母親が多額の献金をして、それに恨みを募らせ、その標的が、ビデオメッセージを送っていた安倍総理になったらしい。
だがそんなのは母親と教会の問題であって、安倍総理には全く関係ない話。それに、ビデオメッセージなら他にも各国首脳クラスの人たちも出している、いわば社交辞令みたいなものでしかない。
だが、キ◎ガイやテロリストには何を言ったところで通用しない。そして、そんなキチ◎イを英雄視している連中もね。
従って、これまでタブー視されていた宗教団体の名が突然出てきた時に、すぐに無関係である事を丁寧に説明・主張するべきだった。
いわゆる霊感商法に問題があるのなら、消費者契約法によって対処するべきだった。
いやっ、「検討します」の"検討使"を貫いてでも有耶無耶にするべきだった。
この問題に関しては、宗教法人法第81条を根拠に解散命令請求をする事となったわけだが、好き好んで入った約6万人の現役信者たちに対して政治的弾圧をする事になるのではないか、と思うわけです。信仰の自由は日本国憲法で保障されているのだから。
■政治資金不記載問題
自民党の最大派閥「清和政策研究会」が事の発端となって燃え盛った『政治資金不記載問題』。
まず、筆者の考え方としては、不記載については法律違反であるとしながらも、よほど悪質と認められて逮捕や起訴される場合を除けば、慣例では謝罪と修正申告に応じれば済む話であると思っている。
納税の申告漏れがあった場合でも、修正申告や追徴課税に応じ、会社の経理担当が厳重注意されれば済む話。それと同じ事だ。
検察の取り調べの結果、清和会の五人衆を中心としたトップ層は「嫌疑なし不起訴」となった。しかし、党内の処分はあまりにも重かった。
離党勧告2名(塩谷・世耕)、党員資格停止3名(下村・西村・髙木)、他。
https://www.jimin.jp/news/information/207975.html
総裁派閥の宏池会議員を優遇したかと思えば、宏池会以上に総裁総理に押し上げてくれた清和会議員に対しては容赦ない処分を下した。
マスコミや世論を意識し、迎合しすぎるあまり、過剰な処分をしてしまい、責任の部分ばかりが無駄にズシリと重くなってしまった。
嫌疑なし不起訴の清和会五人衆を粛清し、同じく不記載問題に上げられていた志帥会の二階会長の肩も叩いたが、
宏池会の会計責任者が有罪判決を受けた時(2024年2月15日)に、派閥トップの自分自身は何の処分もなく、総裁選を前にして自ら不出馬を表明して幕を引いたのは「遅すぎ」「今更か」と言われても仕方がないのだろうと思う。
無派閥(菅グループ?)の三原議員がここまで言うくらいなのだから、
清和会議員から反感を買っていても何ら不思議ではなく、宏池会議員以上に、総裁総理に押し上げたといっても過言ではない90人超の清和会議員が敵に回れば、さすがに勝つ事はできなかっただろう。
いつぞやの、宏池会発の「加藤の乱」みたいな事が起きなかっただけよかったのかもしれない。
■岸田総理が「増税メガネ」のレッテルを貼られたキッカケ
これはもう、2021年の総裁選で「金融所得課税の見直し」を打ち出した事が出発点になっているのは間違いない。(尤も、これには「1億円の壁」が念頭にあったわけだが)
いやっ、それ以前に、総裁選挙期間中の岸田BOXに「岸田さんは財務省のポチですか?」とかいうド直球な質問もあったくらいだったから、国民感情として「岸田=増税」のイメージは既にあったのかもしれない。
いくら自身がその場で否定したとしても、その時点で増税イメージに対して警戒するべきだった。
その後、総裁・総理に選出されたはいいが、株価はドンドン下落し、「岸田ショック」と呼ばれる事態となり、ネガティブな印象もあって、軌道修正を余儀なくされた。
更に、令和5年度与党税制改正大綱にて、防衛力強化(防衛費の増額)に係る1兆円強の財源確保のための税制措置として、法人税・所得税・たばこ税を引き上げて賄うと決めた。
https://www.jimin.jp/news/information/204848.html
岸田総理自身も、記者会見で、「1兆円強については、国民の税制でご協力をお願いしなければならない。」と述べていた。
個人の所得税の負担が増加するような措置は行わないとしながらも、増税イメージが定着するには十分すぎ、大きな決め手になったのではないか。
物価高や社会保険料云々に関しては言いがかりも甚だしいが、上記で挙げた事項は、間違いなく、増税のイメージを国民に植え付けてしまった。
「コイツはいつか絶対に(ステルスを含む)増税をしてくるぞ!」という警戒心を植え付けてしまった。
日本は金持ち国家。税収増もあり、近年は年110兆円もの国家予算を計上できているわけだが、その中のたった1兆円をなぜ増税で賄う必要があるのか、と。
やはり、安倍総理が言っていたように、防衛費増額の財源には初めから国債で対応すればよかった。
防衛増税は消えたわけではなく、あくまでも実施時期が後ろ倒しになっているだけ。それがいつまで続くのか。
そこは11月のアメリカ大統領選挙も大いに関わってくると見ている。
実際には、岸田内閣で増税は一つも"実施"されていない。
それどころか、所得税3万円分・住民税1万円分もの減税が行われたほどであり、エネルギー価格の激変緩和措置として補助金も投入してきた。
財政出動の規模としては過去イチだったのではないか。
しかし、「金融所得課税の見直し」と「防衛増税」。
「増税メガネ」が定着するのはそこからだいぶ後であるものの、キッカケになった事は間違いなく、そんな負のイメージは最後まで払拭する事ができなかった。
岸田内閣の大半は、安倍内閣時に蒔かれたタネが咲いて実った結果であるものが多数であろう。「岸田内閣オリジナルの政策は?」と聞かれると、正直あまり思い当たらない。
「新しい資本主義」は、アベノミクスが根底の大前提にあり、
「経済安全保障政策」は、安倍内閣で既に閣議決定までされている。
「防衛費の増額」や「反撃能力」は、集団的自衛権の限定行使や平和安全法制の法整備などが行われたからこそできた事。
だが、それでもココまで導いてくれた手腕は評価できるし、感謝もしている。各国との関係性も強まった。
しかし、前述で挙げた数少ない事項に対する失点一つ一つがあまりにも大きすぎた。もはや自滅と言ってもいいくらい。
だから支持率は下がり、不出馬を表明した後の餞別的な支持率もあまり得られなかったのではないか。
■これからどうなる?
最終的には、自ら進退を決めた岸田総理であるが、これから先どうなるのか?
9月12日に総裁選挙が告示され、9月27日には投開票が行われ、そこで新総裁が選出される。
現在、9名が立候補に名乗りを上げている。岸田総理が推しているのはおそらく林官房長官であると思われるが、果たして、候補者の中に国家運営ができる者はいるのだろうか???
たぶんだけど、一番最初に「増税メガネ」と発したのはこのアカウントと思われ。
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