有瀬こうこ『磁石』
このミニ句集は、第13回百年俳句賞最優秀賞を受賞した作品をまとめたものです。こうこさんから直接購入しました。こういうことができるのも、近場に住んでいる句友ならでは、という気がします。ありがとうございます。
さて、この句集の評は、俳句誌『豆の木』No.28 にて田中目八さんのとてもすてきな評を読むことができますので、機会がありましたらぜひご覧いただければと思います(唐突に他人様の評を勧めるスタイル)
わたしはいつも通り、好きな句の感想を綴らせていただきます。
すずらんやギリシャ神話に浮気者
ギリシャに限らず、神話と名の付くものはエピソードがなかなかのもので、思わず「神様なにしてんねん!」とツッコみたくなる展開が多い気がします。なので、ギリシャ神話に浮気者がいたって(おそらくめっちゃいる)気にならないし、「すずらん」なんてかわいいものとだって相性がいい。いや、そんなわけあるかい。すずらんでごまかせる範囲はとっくに超えてますって。
タピオカに飽きて八月十五日
飽きるほど食べることができるしあわせよりも、飽きてしまったことに着目する。それがある意味平和であるということなのかもしれませんね。
いつまでも好きと思ふな胡桃割る
こうこさんの代表句と言ってもいいのではないかと思っているのですが、とても潔くて好きです。「思ふな」と命令口調であることと「胡桃割る」の勢いのある描写。言いながら割っているのか、思いながら割っているのか、とにかく「胡桃割る」の割れる速度たるや。おそらくいい音を出してバキッと割れているのだと思いますが。胡桃って食べるとちょっとほろ苦いところもあるのがいいですよね。それがこの毒づいている感じと相まっていて好きですね。
ねだるならもらつたことのない狐火
句会ではじめてこの句を見て、とてもすてきだなぁ、と思ってその場でも採った記憶があります。選評も。その頃から変わらず好きなのは、「もらつたことのない」というところ。ひとつももらったことがないとも取れるけど、今までにないべつの狐火という見方もできるところ。わたしも狐火が欲しいなぁ。
こうこさんの句はウィットに富んだ句が多いように思います。関西人特有の「ウケ」なのかなと思っているのですが、それでもウケ狙いというわけではない。絶妙な塩梅です。
意味の「ある/なし」や、映像の「ある/なし」に囚われない奔放さが好きです。これからもまだまだ企んでほしいと思います。
個人的な話になりますが(ずっと個人的な感想ではあるんですが)、なにかと楽しいことをするときにお声かけいただくことが多く、とてもありがたいです。これからも、こうこさんの思いつきを楽しみにしています。
それでは今回はこの辺で。最後までお付き合いいただきありがとうございました。