消防士の目標設定の違和感
今回は消防士の人事評価制度における目標設定についてです。
消防士も地方公務員。地方公務員法に基づき人事評価を行っています。
消防は災害現場で成果を出してなんぼです。
「少しでも早く、一人でも多く」を目標に日々訓練し研鑽します。
組織の掲げる目標も「消防力の強化」や「救急体制の充実」など、現場に直結することです。
しかし、組織目標を達成するための個人の目標のほとんどが
実は災害現場活動のことではないのです。
災害現場で活躍してなんぼの消防士の目標が?なぜ?ですよね。
災害時でない平常時が目標になる理由
災害現場で活動する職員は、災害時のことを理由にしたいところなのですが、実際に目標を考えてみるとそれが難しいのです。
設定する目標は自己成長か、組織の成長です。
そうすると、
「以前はこの水準までだったけど、今年こそは超えよう」
というような相対的な目標になります。
相対的な目標を立てることが災害現場では難しいのです。
なぜなら災害現場は毎回状況が違うからです。
例えば火災といっても、起伏の激しい山の中での火災だったり、市街地の
高層マンションだったり、まったく同じ状況、同じ現場はありえません。
そのため「昨年度の火災活動よりも1分でも早く現場に着く」、「少しでも早く鎮火させる」という相対的な目標は立てにくいのです。
個人目標の例
では消防士の設定する目標はどんなものか、例を挙げると
「防火衣の着装時間の短縮」
「危険物取扱者などの資格取得」
「消防関係イベントの企画運営」
「定期的な消防訓練の起案とフィードバック」などです。
すべて平常業務の中で達成するものなってしまいます。
それでも評価される人はできる人
以前、仕事をしないベテラン職員が、
「人事評価制度は消防には合わない。
俺は訓練しなくても、現場に出ればやれる」
と言っていました。
この職員は普段の勤務態度のせいで
良い評価が受けられず、人事評価制度にも不満を示していました。
普段訓練に取り組まないこの職員は、
現場に出ても、たいした活躍はできていませんでした。
しかし、なぜか彼は自分はできている気になっていました。
どこの組織でも彼のような人はいると思います。これは、組織などの集団で言われる「働きアリの法則」ではないかと思います。
働きアリの法則とは「よく働く・普通に働く・働かない」に分けたとき、よく働くアリが全体の2割、普通に働くアリが6割、そして働かないアリが2割いるというものです。
消防の活動はチーム単位です。
一つの中隊であれば5名~10名くらいで活動しますが、
この中に優れた隊員が2人もいれば、その他の職員は後ろに着いているだけで事案は完了していきます。
働かない何人かの職員がいても、とりあえず活動は終わっていくのです。
ベテラン職員は無事に完結していく活動に、自分は「貢献できている」と感じていたのではないかと思います。
最後に
消防士が災害現場で目標設定できないことは違和感がありますが、平常時からまともに働かず、勤務態度が評価されない職員は、災害現場でも活躍することはできません。
周囲の隊員だって、普段から勤務態度が悪い職員の言うことに、災害現場で耳を傾けません。
消防歴25年のわたしが見てきた限り、現場で活躍できる人は平常時も含めて24時間365日真摯に業務に取り組んでいます。
災害現場でのことが目標設定しにくい人事評価制度が、消防に合うのかの議論は別として、勤務態度で評価されない人は現場に出ても、それなりの人であることは間違いありません。