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【レポート】食料品の価格動向と為替相場の変動

【レポート】食料品の価格動向と為替相場の変動(本文2,487文字)
 
株式会社農林中金総合研究所は、令和6年9月11日付けにて「値上がりする食料品価格と円高にシフトした為替相場」と題した経済・金融レポートを発表しました。関連する報告をあわせて、展望される食料品の価格動向と為替相場の変動を簡単にご案内します。
 
 
<食料品の価格動向>
1. 価格上昇の要因
(*1)
■猛暑と天候不順

昨年の猛暑や春先の天候不順による生育不良が主な要因。特に、2023年の猛暑は穀類や野菜の生育に大きな影響を与え収穫量が減少した。
■輸入原材料の高騰
ケチャップや果実ジュースなどの加工食品も値上げした。ケチャップは昨年の世界的な猛暑で原材料が高騰したため。また果実ジュースはブラジルの猛暑でオレンジが不作となり、販売を一時休止するメーカーもあったためとされる。
■その他
アボカドは米国、ペルーが不作となり、メキシコ産の引き合いが高まっている。
洋菓子店や焼肉店などの倒産が増加。洋菓子店は砂糖や生クリーム、カカオなどの原材料価格の高騰、人手不足による人件費の上昇、電気代などのコスト増が経営を圧迫したため、そして焼肉店は干ばつによる牧草不足で米国産牛肉の価格が上昇したためと考えられる。
 
2. 現状
■百貨店売上高
(*2,4)
2024年6月の全国売上高は前年同月比14.0%増加し、28か月連続のプラスとなった。各社が企画した催事が寄与したため。また、インバウンドや高付加価値商材が引き続き活況であったため。
■チェーンストア販売(*2,5)
日本チェーンストア協会が発表した2024年6月のチェーンストア販売統計によると、総販売額は前年同月比4.7%増加。食料品の販売額は同5.2%増加したが、農産品の相場高や店頭価格の上昇によるため、売上点数は減少。
■家計調査(*2,6)
2024年6月の家計調査によると、勤労者世帯(2人以上の世帯)の可処分所得(実質)は前年同期比8.5%増加し、2か月連続の増加。定額減税の効果が反映されたためとされる。しかし、節約志向が続いているため実質消費支出は同1.4%減少し、2か月連続の減少傾向。
 
3. 今後の展望(*1)
■短期展望
天候不順や輸入原材料の高騰が続くため、食料品価格の上昇が続く可能性が高い。
■中期展望
天候の回復や輸入原材料の供給安定化により、価格の安定が期待される。ただし、気候変動の影響が続く限り、価格の変動リスクは払拭できない。
■長期展望
気候変動の影響が長期的に続く場合、食料品価格の上昇リスクは高い。技術革新や農業生産性の向上が求められる。

 
<為替相場の変動>
1. 円高傾向の要因
(*3)
■日米の金融政策の違い
日本銀行が世界最後のマイナス金利政策から脱却する一方、海外の主要中銀が利下げに向かっている。
■グローバル経済の動向
米国の景気後退懸念や地政学的リスクが円高を促進している。
 
2. 為替傾向の影響(*3)
■円高のメリット
円高により輸入コストが下がることに伴い輸入品の価格が低下する。輸入生産資材や輸入食料品価格の値下がることで、家計や飲食店経営は利益増加を期待できる。
■円高のデメリット
円高により外国人観光客の購買力が低下し、訪日観光客が減少する可能性がある。インバウンド需要の減少し、百貨店業界や外食業、観光業に影響する懸念がある。
 
3. 今後の展望(*3)
■短期展望

円高基調が続く場合、輸入品の価格低下が期待されるが、インバウンド需要の減少が懸念される。
■中期展望
日米の金融政策の違いが続く限り、円高基調が続く可能性がある。これにより、輸入品の価格低下とインバウンド需要の減少が継続する。
■長期展望
グローバル経済の動向や地政学的リスクが為替相場に影響を与えるため、長期的な予測は困難。円高が続く場合、輸入品の価格低下と国内産業への影響が続く可能性がある。

 
<短中期的対応策>
1. 輸入業者
■為替リスクの管理・・・ 円高リスクに備えた為替リスク管理を強化する。
■多様な供給源の確保・・・ 複数の供給源を確保し、供給の安定性を高める。
 
2. 小売事業者
■価格戦略の見直し・・・ 円高による輸入コストの低下を反映した価格戦略を見直す。
■プロモーションの強化・・・ 消費者の節約志向に対応したプロモーションを強化する。
 
3. 消費者
■節約志向の継続・・・ 節約志向を継続し、家計の負担を軽減する。
■代替品の利用・・・ 高騰している食材の代替品を利用することで、食費を抑える。

 
<予測される懸念>
1. 気候変動の影響
(*1)
気候変動による異常気象が続くと、農作物の生産量が減少し、食料品価格が上昇する可能性がある。これにより、消費者の生活費が増加し、経済全体に影響を与えることが懸念される。特に、干ばつや洪水などの極端な気象現象が頻発すると、農業生産が不安定になり、食料供給チェーンは大きな影響を受ける。
 
2. 為替相場の変動(*3)
日米の金融政策の違いが続くと、為替相場の変動が激しくなり、輸出入企業にとってリスクが高まる。特に円安が進行すると、輸入品の価格が上昇し、消費者物価に影響を与える可能性があり、企業のコストが増加し、利益率が低下するリスクが懸念される。
 
3. グローバル経済の不確実性(*3)
米国の景気後退や地政学的リスクが高まると、世界経済に不確実性が増し、投資や貿易に悪影響を及ぼす可能性がある。企業の業績や雇用状況に影響が出る懸念があり、特に、貿易摩擦や政治的緊張が高まると、国際的な経済活動が停滞するリスクがある。
 
4. 相互影響
気候変動が農業生産に影響を与えると、食料品価格が上昇し、為替相場にも影響を与える可能性がある。また、グローバル経済の不確実性が高まると、為替相場の変動が激しくなり、企業のコストや利益に影響を及ぼす。これらの要因は相互に関連し合い、経済全体に複雑な影響を及ぼしていることに注意が必要。
 
 
以上のように、気候変動や為替相場の変動、グローバル経済の不確実性が相互に関連し合い、経済全体に複雑な影響を与えることが懸念されています。特に、異常気象による農作物の生産減少や、日米の金融政策の違いによる為替相場の変動が、消費者物価や企業の利益に直接的な影響を及ぼしています。今後もこれらの動向に注視し、適切な対応策を講じることが重要です。引き続き、経済環境の変化に柔軟に対応し、持続可能な成長を目指すことが求められます。
 
  
<参照情報>
*1: 【三菱UFJリサーチ&コンサルティング】 「食料品の値上げはいつまで続くのか?」
https//www.murc.jp/wp-content/uploads/2023/03/report_230317_01_01.pdf
*2: 【農林中金総合研究所】「値上がりする食料品価格と円高にシフトした為替相場」
https//www.nochuri.co.jp/report/pdf/nri2409re5.pdf
*3: 【Bloomberg】「24年の円相場は劇的Uターン、金融政策逆回転で4年ぶり円高へ」
https//www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-18/S5OZTET1UM0W00
*4: 【全国百貨店協会】「2024年6月 全国百貨店売上高概況」
https://www.depart.or.jp/store_sale/files/202406zenkokupp.pdf
*5: 【日本チェーンストア協会】「令和6年6月度・チェーンストア販売概況」
https://www.jcsa.gr.jp/public/statistics2024_06_2.html
*6: 【総務省統計局】「家計調査(家計収支編) 調査結果」
https://www.stat.go.jp/data/kakei/2.html

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