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加工食品のカーボンフットプリント(CFP)の算定ガイド案と実証結果について

加工食品のカーボンフットプリント(CFP)の算定ガイド案と実証結果について(本文2,017文字)
 
農林水産省は、環境政策のひとつとして令和3年に「みどりの食料システム戦略」を策定し、環境に優しくサスティナブルな食料生産活動の普及・浸透を推進しています。
これに関連して、令和6年8月23日に加工食品のカーボンフットプリント(Carbon Footprint of Products, CFP)の算定ガイド案と実証結果を公表しました。
 
<カーボンフットプリントとは?>
カーボンフットプリントについてはいくつかの解説がありますが、農林水産省の検討会資料では次のように説明しています;

原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、当該商品及びサービスに簡易な方法で分かりやすく表示する仕組み
(「食品を巡るカーボンフットプリント:その動向」東北大学齋藤教授説明資料;https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/goudou/05/pdf/data1.pdf)

 つまり、カーボンフットプリントとは、商品が作られてから捨てられるまでに排出されるCO2の全量を計算し、それを簡単に表示する仕組みです。これにより、消費者はその商品が環境にどれだけ影響を与えるかをすぐに理解できます。
また、環境に優しい商品を選びやすくなるので、企業も環境に配慮した製品作りの後押しにもなります。その結果として、温室効果ガスの排出量が減り、地球温暖化の防止に貢献することが期待できます。
 
<算定ガイドの概要>
今回農林水産省が公表した「加工食品のカーボンフットプリント(CFP)の算定ガイド案」は、加工食品業界全体で温室効果ガス(GHG)排出量を算定し、環境負荷を見える化するための指針です。このガイド案は、食品産業が持続可能な食料生産と消費を実現するための重要なステップとして位置づけられています。
 
1. 背景と目的
気候変動による食料生産の不安定化が進む中、食品産業はサプライチェーン全体での環境負荷低減に取り組む必要があります。加工食品業界でもGHG排出削減の取り組みが進んでおり、CFP算定の必要性が高まっています。このガイド案は、業界全体で統一された算定ルールを提供し、企業が自主的にCFPを算定する際の基準となることを目指しています。
 
2. ガイド案の内容
ガイド案は、原材料調達から廃棄・リサイクルまでの全ライフサイクルステージを対象としています。具体的には、以下の要素が含まれます。
①算定対象: SKU(Stock Keeping Unit)単位での算定を原則とし、製品の類似性が認められる場合は共通の算定ロジックを使用可能。
②データ収集: 1次データと2次データの収集方法と品質要求を規定。
③算定方法: プロセスの配分ルールやシナリオを設定。
 
3. 実証結果と今後の課題
実証結果では、ガイド案の妥当性が一定程度確認されましたが、引き続き議論すべき課題も明らかになりました。これらの課題を解決するため、今後も実証を継続し、ガイドの更新を行う予定です。
 
4. 参加企業と対象品目
実証には、イオン株式会社、株式会社セブン&アイ・ホールディングス、明治ホールディングス株式会社などが参加し、牛乳や食用油が対象品目として選ばれました。
 
このガイド案は、加工食品業界全体での脱炭素化を推進し、消費者が環境に配慮した商品を選択するための重要なツールとなることが期待されています。
 
<今回公表された実証結果の概要>
加工食品業界全体での温室効果ガス(GHG)排出量の算定方法の妥当性を確認するために実施されたこの実証結果について簡単にまとめました。
 
1. 実証結果
実証結果として、CFP算定ガイド案の妥当性が一定程度確認されました。具体的には、以下の3点になります;
1-1. データの信頼性: 収集されたデータは高い信頼性を持ち、算定結果に一貫性が見られました。
2-2.算定方法の適用性: ガイド案に基づく算定方法は、実際の製品に適用可能であることが確認されました。
2-3. 課題の明確化: 一部のプロセスやデータ収集方法において、引き続き議論が必要な課題が明らかになりました。
 
2. 今後の課題と展望
実証結果を踏まえ、今後の課題として以下の点が挙げられます:
2-1. データ収集の標準化; データ収集方法のさらなる標準化が必要
2-2. 算定方法の改善: 一部のプロセスにおける算定方法の改善が必要
2-3. 業界全体での普及: CFP算定ガイド案の普及と実践が必要
 
今回公表された実証結果から、加工食品業界全体での脱炭素化を推進し、また消費者が環境に配慮した商品を選択するための重要なステップとなることが期待されます。
 
 
 
<一次情報>
【農林水産省】加工食品のカーボンフットプリント(CFP)の算定ガイド案と実証結果について
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/b_kankyo/240823.html
資料1:加工食品共通のCFP算定ガイド案
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/b_kankyo/attach/pdf/240823-1.pdf
資料2:算定実証結果
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/b_kankyo/attach/pdf/240823-2.pdf
 
 
<関連情報>
みどりの食料システム戦略普及について
https://note.com/fir_institute/n/n7f1946207de1
持続可能な食料生産・消費のための官民円卓会議
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/kikaku/entaku_kaigi.html
持続可能な食料生産・消費のための官民円卓会議温室効果ガス見える化作業部会
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/climate/visual/roundtable.html
経済産業省・環境省「カーボンフットプリント ガイドライン」
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/carbon_footprint/pdf/20230526_3.pdf
食品を巡るカーボンフットプリント:その動向」東北大学齋藤教授説明資料
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/goudou/05/pdf/data1.pdf)
みどりの食料システム戦略トップページ
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/
みどりの食料システム法について
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/houritsu.html
 

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