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【レポート】「県民のうどん消費」の実態調査について
【レポート】「県民のうどん消費」の実態調査について(本文2,790文字)
一般財団法人百十四経済研究所は、令和6年10月23日に「『県民のうどん消費』の実態調査について(物価高騰がもたらすうどん消費の変化)」のリリース版を公表し、香川県民によるうどん消費の実態を報告しています。
<調査と分析について>
百十四経済研究所では、時節の状況を反映する「旬のテーマ調査」を継続的に公表しています。「旬のテーマ調査」は、調査後1か月程度で「リリース版」を公開し、同所が発行する機関誌の「調査月報」にてより詳細な内容を後日発表しています。
その「旬のテーマ調査」のひとつに、香川県民によるうどん消費の実態を把握することを目的とした「うどんの消費状況」を2021 年から年次で調査しています。
ここでは、2023年と2024年の同調査の結果を比較しつつ、「県民のうどん消費」の実態をご案内します。
<調査の概要>
2023年と2024年の調査は、香川県内在住の20~69歳の男女を対象に実施されました。2023年の調査は455人が回答し、2024年の調査は461人が回答しました。回答者の構成は、年代別、地域別、世帯年収別に分類され、詳細な消費行動の変化を分析しています。調査結果は、うどんの外食時の平均単価や年間平均回数、好みのうどんやサイドメニュー、かけうどんの許容上限価格など、多岐にわたる項目について詳細に分析されています。
<外食時の平均単価と年間平均回数>
2023年の調査では、県民1人1回当たりの平均支払金額(平均単価)は503.96円で、前年の475.10円から28.86円(6.1%)増加しました。2024年の調査では、平均単価は546.75円で、前年の503.96円から42.79円(8.5%)増加しました。これにより、2年間で合計71.65円(15.1%)の増加が見られます。年間平均外食回数は、2023年の調査で48.34回、前年の44.81回から3.53回(7.9%)増加しました。2024年の調査では、年間平均回数は49.60回で、前年の48.34回から1.26回(2.6%)増加しました。2年間で合計4.79回(10.7%)の増加が見られます。
この増加は、物価上昇にもかかわらず、うどんが生活必需品としての位置づけを強めていることを示しています。特に、うどんの値上がり率が一般外食よりも低く、相対的に競争力が高まったことが要因と考えられます。また、うどんは手軽で安価な食事としての魅力があり、消費者が他の高価格帯の外食を控える中で、うどんの需要が相対的に増加したことも影響しています。さらに、地元産の食材を使用することでコストを抑え、品質を維持する取り組みが功を奏していると考えられます。
<年代別の平均単価と回数>
2024年の調査では、年代別の平均単価は40代が573.44円で最も高く、次いで30代が555.73円、20代が550.00円となっています。2023年と比較すると、20~40代の単価上昇幅が大きく、特に働き盛り世代の消費意欲が高まっていることが示唆されます。年間平均回数では、60代が62.09回、20代が60.69回と高く、30代は34.75回と少ない結果となりました。前年と比べると、20代と60代の回数が大幅に増加し、30代は減少しています。これは、若年層と高齢層がうどんを手軽な食事として選ぶ傾向が強まっているためと考えられます。
<好みのうどんとサイドメニュー>
2024年の調査では、香川県民の好みのうどんは「かけうどん」が75%で最も多く、次に「ぶっかけ」52%、「ざるうどん」21%、「肉うどん」15%、「釜揚げ」13%、「肉ぶっかけ」12%が続きます。2023年と比較すると、「かけうどん」は横ばいですが、「ぶっかけ」や「ざるうどん」は増加し、「肉うどん」や「肉ぶっかけ」は減少しています。これは、うどん全体の価格上昇により、高価格帯のうどん消費が抑制されているためです。
サイドメニューでは、「天ぷら」が81%で最も多く選ばれ、次いで「揚げ物」33%、「おでん」25%、「何もなし」10%となっています。2023年と比較すると、「天ぷら」は微減し、「揚げ物」と「おでん」は微増していますが、「何もなし」が増加しています。これは、物価上昇に伴い、支払額を抑えるためにサイドメニューを控える傾向が強まっているためです。消費者はコストパフォーマンスを重視し、安価なメニューを選ぶ傾向が強まっています。
<かけうどんの許容上限価格>
2024年の調査では、県民が許容する「かけうどん(※)」の上限価格は332円で、前年の352円から20円(5.7%)低下しました。2023年の調査では、許容上限価格は352円で、前年の317円から35円(11.0%)上昇しました。この変化は、物価高騰が続く中で、収入が十分に増加していない家計が、生活必需品であるうどんの価格上昇に対してシビアになっていることを示しています。
※調査対象が「かけうどん」である理由
シンプルな具材で提供されるかけうどんの価格は、うどん全体の消費動向や物価上昇の影響を反映しやすく、他のうどんの価格設定の基準にもなることから、消費者の価格感度を測る指標として適しており、経済状況や消費者の購買意欲を把握するための重要なデータとなります。
<分析と考察>
2023年と2024年の調査結果から、物価上昇がうどん消費に与える影響が明確に現れています。物価上昇により家計への負担が増す中、うどんの外食回数と支払金額は増加しました。これは、うどんの値上がり率が一般外食よりも低く、相対的に競争力が高まったためです。特に、うどんが生活必需品としての位置づけを強めていることが示されています。しかし、かけうどんの許容上限価格が低下していることから、消費者の節約志向が強まっていることも示唆されます。
<今後の展望>
2023年と2024年の調査結果から、物価上昇が続く中で、うどんが生活必需品としての位置づけを強めていることが明らかになりました。消費者は高価格帯のメニューを避け、比較的安価なメニューを選ぶ傾向が強まっています。また、サイドメニューを控えることで全体の支出を抑えようとする意識が見られます。これにより、うどんの需要は安定しているものの、消費者の節約志向が強まっていることが示唆されます。
<提案>
物価上昇が続く中で、消費者の負担を軽減し、うどん消費を維持するための具体的な提案を以下に示します。
①価格設定の見直し
消費者の負担を軽減するために、低価格帯のメニューを充実させる。特に、かけうどんの価格を抑えることで、消費者の満足度を高めることができます。
②地元産食材の活用
地元産の食材を積極的に活用することで、コストを抑えつつ品質を維持する。これにより、地元経済の活性化にも寄与します。
③プロモーション活動
地元の特産品や季節限定メニューを取り入れたプロモーション活動を展開する。消費者の関心を引き、来店頻度を高めることができます。
④サイドメニューの工夫
サイドメニューのバリエーションを増やし、低価格で提供する。これによって消費者の満足度を向上させることができます。
これらの取り組みにより、香川県のうどん消費を維持しつつ、消費者の負担を軽減することが期待されます。今後も物価上昇が続く中で、消費者のニーズに応える柔軟な対応が求められます。
<一次情報>
【百十四経済研究所】「県民のうどん消費」の実態調査について(香川県民)~物価高騰がもたらすうどん消費の変化
http://www3.keizaireport.com/jump.php?RID=598513&key=9273424721
<関連情報>
【百十四経済研究所】物価上昇によるうどん消費への影響等
https://114eri.jp/wp-content/uploads/2024/05/research_202310.pdf