【Society Forward対談 | 牧島かれん氏・前編】これからの日本に必要な、若者と女性の力
私たちマネーフォワードは「お金を前へ。人生をもっと前へ。」をミッションとしており、すべての人のお金の課題を解決し、チャレンジできる社会づくりを目指しています。今回から、”日本の未来を前に進めるビジョンとそれを実現するための政策”に焦点をあて、社会を前へ進めるキーパーソンへ、マネーフォワードFintech研究所長である瀧がお話を伺う新連載「Society Forward対談」をスタートします。
第一弾は、衆議院議員の牧島かれんさんです。第2代デジタル大臣であり、今年6月の自民党デジタル社会推進本部による提言ではサイバーセキュリティに関するプロジェクトチームの座長も務められています。また党内で女性議員を登用・育成するプロジェクトチームの事務局長も担当し、ジェンダー問題にも向き合われています。
今回は、ご自身が「イノシシから宇宙まで」と形容する幅広い政策を取り扱う中でも、これからの日本のビジョンと、それを実現するための政策についてインタビューしてきました。
(※この対談は、2024年8月20日に実施しました)
若い世代の声を政策へ採り入れる「リバースメンター制度」
瀧:貴重なお時間をいただきありがとうございます。本日は、過去の牧島さんの発信やインタビュー記事とは少し違った視点のお話を伺えればと思っております。
牧島:はい、よろしくお願いします。
瀧:まず最初に、この場を借りて、牧島さんにお詫びがあるんです。
デジタル庁が設立される2021年ごろ、私が提言書を持って議員会館を回っていた時のことです。牧島さんの事務所にも伺ったのですが、普段着の姿でカジュアルに登場されて、あまりにも親身にお話を聞いていただいて、私、牧島さんのことを秘書の方だと完全に勘違いしまして…「この提言書をご本人にお渡しください」と託してしまいました。お恥ずかしい話ですが、今考えると、なんて世間知らずで失礼なことをしてしまったのかと反省していまして…。
牧島:それは問題ないですよ(笑)。
瀧:ありがとうございます。その時に限らずではあるのですが、デジタル政策をサポートされている政治家のみなさんは、若い方が多いからという理由もあるかもしれませんが、とてもフランクで、アプローチしやすい印象がありますね。
牧島:「アプローチしやすい」というのは、非常に大切なことだと思っています。実は、自民党の党改革の一環で「リバースメンター(※)」という制度を採り入れたんですよ。例えば、台湾のオードリー・タン元大臣も、ご自身がリバースメンターとして働いていたところから、大臣になった経験を踏まえて、その制度を大切にしたそうです。
いま自民党には20代のリバースメンターが10名ほど在籍していますが、やはり学生やスタートアップといった若い世代のほうが、私たち以上に最先端のテクノロジーに触れる時間が多く、そうした世代の声をいち早く聞いて政策に反映するべきですね。これはデジタルの領域にとどまらず、他の分野でも同様に若い方からの意見を聞く必要があると感じています。
(※)若手がメンターとなり、先輩や上司に助言を行う教育支援制度のこと。
瀧:牧島さんは、地元も中央も包含した幅広い政策に対応されていますよね。これからの日本の未来を見据えて、重要だと思うものは何でしょうか。
牧島:少子高齢化による人口減少は、直面している大きな課題だと認識しています。日本の将来を想像すると不安を感じてしまう側面もありますが、私たちの責務は、DXを含めて政策を前に進めることで、明るい未来を描けるようにすることです。
私は1976年生まれです。少し上の世代の方々が経験した、バブル期のワクワク感や前に進んでいる雰囲気といった華やかな時代は経験できませんでしたが、「少し知っている」世代です。その時代をまったく知らない世代よりも、「少し知っている」世代の私たちがすべきことは多いと感じています。
瀧:いま、テクノロジー業界では大卒の初任給も年額400万円を超えるような時代になっています。20年前に就職をした私はジェラシーも感じますが(笑)、若者を中心に労働力の需要と供給のバランスが変わってきていると思います。人手が足りなくなっていく中で、その救世主としてのデジタル技術は、明るい未来を描くためのツールですよね。
牧島:確かに。私たちは責任を持って、明るい見通しを提供していきたいですね。
これからの日本には、女性リーダーが必要
瀧:以前、地方議会議員をされていたお父様の事務所へ、生活に困窮した方々が相談に来ていたお話を伺いました。履歴書に貼った1回500円かかる証明写真を、不採用の場合に返却してもらえないと嘆いていた若者のエピソードは、個人的には、政治が扱う象徴的なテーマであるようにも思いました。
現状のありのままの日本と、先ほどおっしゃっていた「明るいデジタル」の間には、少なくとも経済面では距離があるように世間から受け止められています。この橋渡しのために、どのようなことを考えていますか。
牧島:大きく言えば「リスキリング」なのかもしれません。
身近なお金の話題でいうと、資産運用です。私の地元でも、後援会の男性が、スマホで株価の動きを楽しげに見せてくれたりします。資産運用がそうした方々の老後の安心に繋がっていることを嬉しく思うとともに、大きな責任も感じているところです。
いま新NISAも含めて、本当に多くの方が資産運用をするようになってきています。しかし私の体感では、金融リテラシーについて男女差があるような気がします。特に、ある程度お年を召した女性が「波に乗り遅れてしまっているのではないか」という懸念です。
例えばいまの60代以上の女性は、20代の頃はお仕事をしていた方でも、第一子出産で職場から離れて、いわゆる専業主婦のライフプランで生きてきた方が多いです。経済新聞も経済誌も読むこともあるかもしれないけれど、経済や金融を話題にする機会は、男性に比べて少ない可能性があります。
その一方で、統計的には女性の方が長生きする傾向にありますよね。こうした女性たちが、来たるべき「おひとりさま」の老後に向けて、金融リテラシーを習得できる機会を設けなければならないと、最近強く思っています。
瀧:金融リテラシーについては、その話題が投資に偏りがちなことには課題意識があります。
金融業界から来た者として思うのは、「投資」は教えやすいのです。世の中に教材が複数存在しますし、「新NISAで◯◯に投資しておけば大丈夫」といった有識者からの指南も多くあり、第一歩が踏み出しやすいんですよね。でも実をいうと「投資」は金融リテラシーにおける応用段階のフェーズであり、最初のフェーズは「自身の収支を把握すること」にあります。
また、より本質的には、資産は「金融」ではなくて「その人そのもの」を指します。つまり「長く働きたいと思える仕事があるか」「(いまは働いていなくても)いざとなったら働けるか」が最大の資産なのですが、ここを教える人がとても少ないのですね。この点を知らないと「自分の力で備える資産=単なる資産運用」になってしまうのではないでしょうか。
先ほどの専業主婦として生きてきた方を例にとれば、実はどんなライフステージからでも働くことができて、それがネガティブや例外的なことではない、という話をしていく必要もあるかもしれません。
牧島:女性のほうが長生きであるという統計を前提にしたこれからの日本では、女性もリーダーを担っていく必要があります。いまだに集会所などで開催する懇談会では、男性が前列を占領して女性は最後列に並ぶとか、男性は座っているだけで女性はずっと調理場にいる、といった状況が全国的にあります。
瀧:「シルバー・デモクラシー」ならぬ「グランマ・デモクラシー」が進む中でも、女性リーダーが少ない理由はなんでしょうか。
牧島:政治の分野では、各政党が女性活躍を後押ししています。自民党は2033年までに女性国会議員の比率を11%(2023年の提言時点)から30%へ引き上げることを目標に掲げており、今年6月には女性活躍のための専用Webサイト「Our Challenge~政治にもっと、女性の力を~」も公開しました。身近に女性議員が増えてくれば、「自分もできる」と思って手を挙げる人も増えてくるのではないかと思っています。やはりロールモデルとなる女性を見たことがないと、その仕事を想像しづらいでしょうし、 尻込みしてしまうこともあるような気がします。そのため草の根活動ではありますが、やはり女性リーダーというロールモデルを増やしていくことが大事なのではないでしょうか。
ただ一方で、例えば学生時代にはリーダーシップを発揮していた多くの女性が、 いつの間にか就職後に少なくなっている現象があるかもしれません。どこかのタイミングで女性リーダーが「溶けていっている」のではないかと推察しており、その根本的な原因を把握し、対策することも必要です。
瀧:牧島さんの当選同期が、男性は残っているのに女性はどんどん減っているというお話をされていましたよね。
牧島:はい。まず、選挙に出るというタイミングでは、女性は、掲げる政策や、支持を得やすい有権者の属性から、比較的都会向きだと思われがちですし、そうした一面ももちろんあります。
一方で、例えば私の選挙区は、小選挙区という制度のなかで、神奈川県の面積の3割という広い面積を占めることから、時間をかけて名前を覚えていただく必要があるなど、従来でいうと「男性向き」と思われていたかもしれませんが、結果的に、4期を重ねることができました。その地域と候補者が持ってるキャラクターのマッチングではあるのですが、 マッチングミスをしないというのは大事かもしれないですね。マッチングミスを減らせば女性もしっかり当選できる。もちろん、選挙区の理解にはバイアスがかかりがちですので、正確な判断が必要とされるところです。
瀧:しかし、議員になった後、当選を重ねていくのは男性が多い、と。国会議員としての継続性を考えたときに、男性と比べて何らかのサポートが圧倒的に欠如しているということは考えられますか。例えば「子育て・介護支援金制度」など、女性議員に対するサポートはむしろ民間企業よりも厚いと思っているのですが、政治家として活動するうえでのリレーションづくりなどでは、どのような男女差が出るのでしょうか。
牧島:10年以上国会議員として活躍している女性メンバーはすでに必要なリレーションを構築しているとは思いますが、リレーションづくりというのは一朝一夕にはいかないものですよね。
特に政界や経済界は、出身地や出身校などのコミュニティが男性優位になりやすいです。女性の場合、例えば地方議会では、立候補者が嫁いできた方の場合、「◯◯さんのところのお嫁さん」と言われます。夫側に地縁があれば応援をもらえるかもしれませんが、彼女自身がその土地の出身ではないという事実をもって「地縁が足りない」のようにネガティブに捉えられることもあるかもしれませんね。
後編もこちらに公開しておりますので、お楽しみください!
編集・撮影:早川有紀(パブリック・アフェアーズ室)
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