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MSCA-IF-2020結果とMSCA-IFの今後

2021年2月8日に、今年度のMarie Skłodowska-Curie Action Individual Fellowship (MSCA-IF)の合否が申請者とホスト機関に通知されました。このnoteを通じて知り合った申請者の方から採択されたという連絡を頂き、私にとっても大変嬉しい日となりました。この方は、申請書執筆中に私のnoteを読まれnoteのダイレクトメッセージ(DM)を通じて私に申請書のレビューを依頼してこられた方で、私にとっては分野外&申請書レビューは初ながら、レビューをしたのでした。(ちなみに、連絡を頂いたときに初めてnoteにDM機能があることを知りました。)

MSCA-IFが日本の多くの研究者に広まってほしいという思いはありますが、noteのうち具体的な申請書の書き方についての記事は、多くの人に読んでほしいというよりは、たとえ数人いや一人でも本当に必要な方に届いたらいいなという思いで書いていたので、それが少しでも叶って嬉しいです。一方で、このnoteを見て書いたのに駄目だったという方もいらっしゃるかもしれません。何かご連絡を頂いているわけではありませんが、もしいらっしゃったとしたら、お役に立てなかったことを大変申し訳なく思います。

今回は新型コロナウィルス感染症の影響で応募人数が減るかもと私は思っていたのですが、過去最多の11,573名(2019年は9,875名)だったということで採択も最多の1,630名と、応募数・採択数共に年々増加傾向にあることは変わりないようです。MSCA-IFのtwitterにアップロードされていた資料によると、今年のMSCA-IF European standardのcut-offスコア(合否ライン)はおおむね92~94%で、相変わらず採択には高いスコアが求められています。

今回はHorizon2020として最後の募集でした。2021年からは、2027年まで続く新しい研究フレームワークプログラムHorizon Europeが始まります。MSCA-IFは、MSCA Postdoctoral Fellowshipと名前を変えて続くようです(Euraxessのサイト)。2021年2月現在では正式な募集要項が発表されていないので詳細は不明ですが、大幅なプログラム変更はないものの、応募要件等に変更があるようです(ヴェローナ大学のサイトドイツIRSのサイト)。どうやら、博士号取得が必須となり、また博士号取得からの経過年数(研究業務を離れていた期間は除く)が最大6年(8年?)に制限されてしまうようです。MSCA-IFでは博士号は一応条件でしたが、取得見込みでもOK、あるいは取得していなくても4年以上の研究実績で代替可能でした。また、博士号取得からの経過年数に制限はありませんでしたので、この点は大きく変わることになります。ほとんど無制限といってよかったMSCA-IFの応募要件が厳しくなるのは残念に思いますが、より「博士号取得後キャリアの短い研究者」が支援されやすくなるという点では良いのかもしれません。2021年4月には恐らく正式な募集要項がEuropean Comissionから発表されると思いますので、応募を考えている方は必ずそちらで正確な情報を確認してください

今回、採択直後に私のnoteを見つけたという方からもご連絡を頂きました。採択に至るまでを振り返ったお話を伺う中で、私の過去の記事ではあまり触れていなかった点が3つありましたのでここで共有したいと思います。

1) 応募カテゴリ、キーワードは吟味すべし

MSCA-IF Standard European Fellowshipは応募区分(パネル)が8つに分かれています。さらにその下位の分類もありますが、申請書の最終評価はパネルごとに行われます(評価方法は以前のnote参照)ので、まず応募先のパネルを適切に選ぶことが重要です。申請書を最初に評価する審査員はパネル下層の分類と研究キーワード(いずれも、申請側が選ぶor提示するもの)で決められます。つまり、研究の価値を適切に評価してくれそうな審査員に申請書が届くように、応募カテゴリとキーワードを選ぶことがとても重要です。以前も紹介しましたが、過去の審査員とその審査員の関連キーワードが一覧表で公開されていますので、そちらをチェックしてみるのもいいかもしれません。

2) 複数回チャレンジは当たり前

前回のnoteで、申請者の非公式交流サイト(talk academia)でMSCAに何回もチャレンジしている方が多数いることを知った話をしましたが、実際のところ、2回以上の応募を経て採択される方は非常に多いようです。今年もその交流サイトを覗いてみましたが、4回目までの方はかなりたくさん見かけました(交流サイトだからかもしれませんが)。今回採択された方で、スーパーバイザーに「初回で採択は珍しい」と言われた方もいました。MSCA-IFは不採択でも評価シートで詳細なフィードバックがもらえるので、再チャレンジしやすいと思います。もし今回不採択だった方は、もし可能なら来年もう一度チャレンジされてみては如何でしょうか。

3) 運の要素も大きい(らしい)

1年前、申請書提出後に交流サイトで「MSCA-IFは宝くじだ、運が良くないと当たらない」と書かれているのを見つけて絶望的な気分になった私でしたが、運の要素というのは巷でよく言われているようです。確かに「良い審査員に当たるか」という点は運もあるのかもしれません。「なぜあの申請書が通ってこれが駄目だったのか」という納得いかない評価結果を受けることもあるそうです。申請書part B1のうちimpactとimplementationの章は専門外でも客観的に評価しやすいと思いますが、1章のExcellenceの評価、特に研究に新規性や独創性があるかという点の評価は審査員次第になってしまうのかなという気がします。ですので、1)で述べたように適切な評価が得られるような審査員に届くように、応募区分やキーワードを慎重に選ぶのが重要かなとやはり思います。また、impactとimplementationは何をどう書くべきか理解していれば完璧に書ける章なので、ここは減点を最小限に押さえ、少しでも高いトータルスコアを目指すのが良いと思います。注: 章立てや内容はMSCA-IFのときのもので、2021年からは変わる可能性があります。

私自身は、予定通り2020年10月からホスト機関に滞在しMSCA-IFのプロジェクトを始めています。ホスト機関があるイタリアでは、新型コロナウィルス感染症の影響で移動制限やレストラン等の営業制限などがありますが、幸い今のところ毎日大学で研究を進められています。スーパーバイザーや同僚たちは素晴らしく協力的で、まだ数か月ですが来て良かったなと思っています。未だパンデミックの終焉が見えないため渡欧をためらう方もいらっしゃるかもしれませんが、MSCA fellowshipが、活動の場を海外に広げたい方のチャンスになればと思っています。

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