MSCAフェローシップ申請書Part B1 3.Implementation を書こう
Part B1もいよいよ最後の 3. Implementation (Quality and Efficiency of the Implementation) まで来ました。この章では、着実な研究計画を立てられていることやホスト機関の支援、設備/機材が必要十分にあることを示し、2年間で確実に研究を遂行できる見通しがあることをアピールしましょう。
3.1 Coherence and effectiveness of the work plan, including appropriateness of the allocation of tasks and resources
この項では、フェローシップ期間中に行う作業をすべてWP (Work Package)ごとに分けてガントチャート上に示します。さらに本文に、各WP内で行う作業内容等を具体的に述べます。
まずはフェローシップの作業をWPに分けてみましょう。研究に直結するWPだけでなく、management, training, dissemination & communication などに関する作業もWPとして割り振ります。そして2年間 (European Fellowshipの最長フェローシップ期間) に各WPにどのくらいの時間を割くのかをガントチャート上に月単位で示します。ガントチャートの例はGuide for Applicantsに載っています。下図は私の申請書に載せたガントチャートです:
Specificな記述は伏字にしています。画像が見づらいかもしれませんが、ご容赦ください。
もちろん私のガントチャートと同じように描く必要はありません。Guide for Applicantsの例をベースにしつつ、自分で工夫してみてください。各WPのタイトルをガントチャート上に記載することと、月単位で作業期間を示すことはGuide for Applicantsで指示されていますので、必ず守る必要があります。
さらに、申請書本文に、各WPの目的、タスク(作業内容。私の申請書の場合ガントチャート上の左端に書いてあるのがタスクです)、マイルストーン(中間目標)、deliverable (レポート、論文、ソフトウェアなど、何か形に残る研究成果) を書き出します。
正直なところ、この本文の書き方は本来どうすべきなのか、よくわかりません。Guide for Applicantsの該当項目には「各アクティビティにかかるリソース (時間) の妥当性を示せ」とあるように読めるので、私は最初「タスク1.1は申請者の***の経験から2か月と見積もっている」などと本文に書いていたのですが、レビューしてくれたホスト機関の研究者はそれらを一掃し、下記のように箇条書きで簡潔に書くようにアドバイスしました:
[WP1] Experimental studies with ### (M2-M6)* *()内は実施期間を示す
Objectives: establishment of a ### measurement method using ### techniques. Tasks: T1.1 Visualization experiment with a ###; T1.2 Data processing and analysis by ### approach. Deliverables and milestones: D1.1 Test report and analyzed data, M1.1 Experiments completed.
タスクの内容、D1.1, M1.1などはガントチャート内に示したものと対応させています。私は内心「これじゃ記述が不十分じゃないか」と思ったのですが、「ここはこう書くものだ」と言われ、結局それに従いました。結果的にこの項では減点されなかったので、これで良かったのかもしれません。
ガントチャート上及び本文で述べたタスク(例えば T1.1など記号化させる)は、そのタスクの詳細を述べている項、つまり研究のタスクなら 1.1項のmethodologyの項、アウトリーチ関連のタスクなら2.3項にも登場させて(例えば作業の詳細を述べた後にカッコ書きで"(T1.1)"などと示す)、関連づけるとよいです。
deliverableとマイルストーンは多すぎても少なすぎてもいけません。研究成果を最大限に出しつつ着実に進められるように、適切に設定しましょう。
3.2 Appropriateness of the management structure and procedures, including risk management
プロジェクトを限られた時間内に遂行させるためには、適切なマネジメントが大切です。そのためには、研究者自身の努力だけでなく、スーパーバイザの適切な指導とホスト機関の支援が必要です。
この項では、研究者、スーパーバイザ、ホスト機関(の該当部署)の3者がどのように協力しあってプロジェクトの進捗を管理するのかを述べます。ホスト機関のどの部署がどのような支援をしてくれるのか、ホスト機関に確認しましょう。申請書には具体的な部署名まで書いた方が良いです。
マネジメントの内容は、研究者自身が行う日々のタスク管理から、スーパーバイザーとの定例(週1回とか)の進捗確認、さらにマイルストーンやdeliverable(3.1項で定義したもの) が計画通りかの確認、資金(予算)管理など色々あります。何を誰とどのような頻度でどのように行うのか具体的に述べましょう。世の中には様々なマネジメントツールがありますので、ツール名を挙げ、それを使って効率的に管理すると述べても良いかもしれません。
私はこの部分で、審査員から「スーパーバイザーとの間のミーティングが2か月に1回しかないのは、潜在的なリスクを回避するのに適切ではない」というコメントを受け減点されました。スーパーバイザーとのミーティングを2か月に1回しかしないとは申請書には書いていなかったのですが、ミーティング頻度を明記していなかった (at regular meetingとしか書いていなかった) のが良くなかったのだと思います。皆さんはお気をつけください。因みにこれは私の申請書の評価結果に書かれていた唯一のマイナスポイントでした。
進捗管理を適切に行うためには、評価指数(KPI, key performance indicator) を定義して進捗度合いを定量的に評価するのが良いです。自分のプロジェクトで何をKPIにするか、具体的に挙げましょう。例えば、私の申請書では、タスク完遂率、コスト差異 (予算に対する実コスト比), 予定作業時間に対する実作業時間比、スケジュール遵守率をKPIとして挙げています。
プロジェクト管理では、リスクをあらかじめ予測し、それに対応できるようにしておくことも重要です。研究活動上、あるいは事務的な手続き、予算、知的財産(IPR)に関して現時点で予見されるリスクを具体的に挙げましょう。研究上のリスクは、できるだけ具体的に、specificに書きましょう。どのWPで起こりうることかも明記します。さらに、そのリスクが起こる確率(非常に高い確率で起こりうるのか、殆ど起こらないと予想できるのか)と、リスクのレベル (深刻なリスクか、起こったとしても軽微なものか)を、数字あるいはhigh, medium, lowで評価しましょう。最後に、そのリスクが起こった場合の対処方法、又はそのリスクが起こらないように(起こっても影響が小さくて済むように) 予めとっておく対策を述べましょう。ここは文章で書いても良いですが、私は表にしました (下表)。私が見たことのある幾つかの申請書でも表にしていました。
ガントチャート同様、specificな部分は伏字にしています。
私のrisk management表は正直なところあまりspecificに書けていないので、研究上のリスクはもっと特定的に書けた方が良いと思います。
また、事務管理上のリスク (administrative risk)、スケジュール遅延のリスク、予算超過のリスク、知的財産管理上のリスクなども同じ表に載せるか、別途本文上で書くかしてきちんと述べましょう。私はこれらのリスクを上の表に入れて説明するのは難しいと思ったので(特定的なリスクではないので発生確率やレベルを数字で表すのが難しい)、別途本文中に述べました。
3.3 Appropriateness of the institutional environment (infrastructure)
Part B1最後の項では、研究者を受け入れるホスト機関やパートナー機関について説明します。Secondoment先も含め、研究者が滞在する機関(出張での滞在は除く)すべてについて述べましょう。機関が複数ある場合は、機関ごとに分けて記述すると良いと思います。
まずその機関が果たすべき役割 (コミットメント)を明確に述べましょう。例えばホスト機関(beneficiary)なら、**分野のハイレベルな###の専門知識や技術をもって研究者を指導する、という役割があります。また、研究者が滞在中に研究活動やトレーニングに専念できる快適な環境を提供する、というのもホスト機関の重要な役割です。Secondment先には、その機関だからこそ提供できる専門知識、技術、設備などがあるはずですので、それらに基づいた貢献が彼らの役割であることを述べましょう。
さらに、研究を遂行するために必要な設備や機材を具体的に挙げ(書けるなら装置名だけでなくメーカー、型番まで書く)、それらをその機関(あるいはスーパーバイザーの研究室など)が所持していることを述べましょう。機材や設備を自分専用として使えるならその旨を書きます。大体は共用だと思いますので、その場合は誰と(何人と)共用するのか、共用したとしても自分の研究のために十分な使用時間(マシンタイム)を確保できる旨を述べましょう。
主な受け入れ先となるホスト機関(beneficiary)については、日々の研究生活を送るうえでの基本的なインフラ (デスク周りや食事、健康などに始まり文献へのアクセス、ITインフラなど)が整っていることも、簡単に述べましょう。
ドラフト執筆中の皆さん、Part B1 を完成させられたでしょうか?
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次回のnoteでは、part B2のうちCV(履歴書)の書き方をお話します!