MSCAフェローシップ申請書 PartB1 1.Excellence / 1.2-1.4項 を書こう

前回のnoteに引き続き、1. Excellence の書き方についてお話します。1.1項は一般的な研究申請書に近いものでしたが、1.2項から1.4項はわりとMSCA-IF独特の内容と思われます。

1.2 Quality and appropriateness of the training and of the two way transfer of knowledge between the researcher and the host

MSCA-IFの最大の特徴は、留学する研究者とそれを受け入れるホスト機関がお互いの知識やスキルを交換しながら研究を進めるという点にあります。さらに、博士号を取得した比較的キャリアの浅い研究者 (ただし応募資格に年齢制限はありません) が、ホスト機関やスーパーバイザーからトレーニングを受けて、より研究者として成長することも意図されています。この項は、その「知識やスキルの交換」と「研究者に与えられるトレーニング」がどれだけ適切で効果的なものかをアピールするためのものです。

この項では、まず「お互いがどのような知識やスキルを受け渡すのか」と「トレーニングがどのように行われるのか (hand-on training以外にもedsucation activitiyを受けるとか)」の概要を数行で述べます。その後詳細をわかりやすく説明するために、ここでも1.1項同様、自分で小項目を作りましょう。大きく「ホスト機関から研究者」と「研究者からホスト機関」の2つに分けます。さらにそれぞれの項目にて「Research skills」と「Transferable skills」に分けてそれぞれの詳細を述べます。Research skillsは研究の専門知識、実験・測定技術、データ解析など研究に直結するスキルです。Transerable skillsは、プロジェクトマネジメント、ネットワーキング、communication & dissemination (学会発表、論文発表、特許など、研究成果を広めること) 、Grant/proposal writing など、研究を効果的に遂行したり、卓越した研究者となるために必要とされるスキルです。

自分やホスト機関が持つスキルの素晴らしさをアピールする項目は1.3項及び1.4項にあるので、1.2項では具体的なスキルの内容 (Research skillsの場合は、そのスキルが研究達成のキーとなる旨も忘れずに言及する) と、それをどのようにしてお互いが受け渡すのか、また研究者がどのようにトレーニングとして受けるのかを、具体的に書きましょう。何度も言いますが、具体性が重要です。例えば Research skillなら、「研究者はCデバイスのAに関する専門知識と測定技術Bをホスト機関に受け渡す。AはCデバイスの設計・製作を行う実作業の中およびホスト機関での内部セミナー(毎年2回開催予定、研究チームと所属学科の学生が参加)での発表にて、Bは測定の実作業の中および研究チームとのデイリーな議論の中で、受け渡される。」という具合です。

Transferable skillは、ホスト機関から受け渡されるのはともかく、自分は何も持ってないよという方もいるかもしれません(私がそうでした)。しかしどんな方でも、日本でのネットワーク(要するに研究上/仕事上の知り合い)、博士課程時の研究あるいはそれ以外の研究を遂行させた際のマネジメントのスキルはあるはずです(あると言い切りましょう)。そのうえで、例えばネットワークなら、固有名詞を挙げて、こんなネットワークがあると述べます。

Secondmentを計画している場合は、Secondment先とのスキルの交換も忘れずに述べましょう。

1.3 Quality of the supervision and of the integration in the team/institution

この項は、スーパーバイザーとホスト機関がいかに素晴らしいか、そして研究者がいかにその素晴らしい環境に効果的に取り込まれるかを述べるところです。MSCA-IFはホスト機関が申請するものであるにも関わらず、留学する研究者以外の履歴書(CV)は提出しません。1.3項の前半はスーパーバイザーのCVのつもりで具体的に書きましょう。とはいえPublication listを並べるわけにもいかないので、例えば「80 本以上のhighly cited atriclesを出版(もし超有名な学術誌に掲載されているなら誌名を挙げる)し、国際学会 (学会名と開催年を複数例挙げる)での Key note lectureの経験があり、国際的に栄誉のある ***賞を2010年に受賞した」など。さらに、MSCA-IFの申請書ということで、国際プロジェクトや国際的共同研究への参画経験 (Horizon2020関連ならなお良し)、MSCAのフェロー受け入れ経験などがあれば、具体的にプロジェクト名や共同研究相手先機関名を挙げて言及しましょう。また、スーパーバイザーは研究者を指導する立場ですから、これまで及び現在の指導状況(特に博士課程学生とポスドク)を具体的に人数を挙げる等して述べましょう。

そして、この素晴らしいスーパーバイザーから、どう具体的に指導を受けるのかを述べるのが後半です。2年間ほったらかしにされるわけにはいきません。研究者が日々を過ごす環境(例えばポスドク/博士課程学生たちと同じ部屋で過ごすとか)、スーパーバイザーとのコミュニケーションの取り方と頻度(オフィシャルには週1回のミーティング、疑問点があればanytime等)に始まり、研究室で進行中の***国際プロジェクトの年4回のミーティングに研究者も参加しネットワークを広げる等々、とにかく具体的に書きましょう。

さらに、スーパーバイザーだけでなく、ホスト機関が滞在中の研究者に対して行う支援も書きます。他の国から来てその機関に雇用され滞在するわけですから、色々なadministrative taskが発生することが予測されます。「ホスト機関はちゃんと研究者を迎え入れケアする体制が整っていますよ」と示すために、例えば ***部署がxxxを行い研究者をサポートする、というように述べます。

1.2項との違いが分かりにくいですが、1.2項では具体的な1つ1つのスキルと対応させてそれをどう受け渡すのかを述べ、1.3項では、包括的に研究者がどんなに素晴らしい環境で過ごせるかということを述べます。(説明が余計わかりにくかったらすみません。)

1.4 Potential of the researcher to reach or re-enforce professional maturity/independence during the fellowship

1.3項がスーパーバイザーやホスト機関のアピールだったのに対し、1.4項は研究者自身が高いポテンシャルを持つことをアピールする項目です。MSCA-IFはトレーニング要素がある通り、応募の時点で研究者が「すでに高い成熟度にある完成された研究者」であることは想定されていません。MSCA-IFを通してそうなる(それに近づく)ことが期待されています。この項では、例えば「研究者は、過去の+++の研究経験から既に研究者として高い***な能力があり、MSCA-IFでのXXX(具体的な研究作業など)を通してさらに###のスキルを身につけることで、よりprofessional maturityを向上させることができる」などと書きましょう。

Guide for Applicantsにてアンダーラインで強調されているように、この項目では「フェローシップ期間中に研究者が獲得するスキル」を書くのであって、「フェローシップ後に研究者がどうなることが期待されるか」を書く部分ではありません。それは次の 2. Impactで書く項がありますのでご注意下さい。


では次回は 2. Imapctの書き方に移ります!



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