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愛の進化と直立二足歩行は並行的に進化した                              

つれづれ人類進化考 第1回



人類進化のことを "ぼんやり" 考えるのが好きなので、徒然に考えを書いてみようと思う(自分の思考の整理が大きな目的です)


愛の進化と直立二足歩行は平行的に進化

ペアボンディング(愛の進化)と直立二足歩行が平行的に進化したとの仮説を以下に展開したいと思います。
いわゆる、”プレゼント仮説” は有力な仮説ではありますが、それを支持する立場で考えてみました。



直立二足歩行がヒトへ分岐させた


ヒト、チンパンジー、ゴリラの大型アフリカ類人猿の三者を分岐させた要因にヒトの進化の本質を理解する鍵が間違いなくある。

そして、ヒトを彼らと分岐させた起点となる要因は直立二足歩行であろう
これがドミノ倒しのように次々とヒトの特性を進化させる原因になったのは間違いないと思う。


直立二足歩行の最大のトレードオフ(難産) それを解決したのはペアボンディングの進化

ヒトへの進化において、特に私が関心あるのは生殖の進化だ。
直立二足歩行の最大のトレードオフは難産といわれる。
直立二足歩行に適応的な骨盤や脊椎への変化や骨盤底筋の発達等が難産を引き起こした、後には脳の増大とともにさらに困難になった。

最大のトレードオフ(難産)

その解決策として
回旋分娩、頭骨の変形、他者による出産の補助、生理的早産の進化、他者による子育て支援が直接的な解決策だが、

それはペアボンディング(愛の進化)が同時に成立していなければ解決しえないと思う。家族が生まれ、親族が生まれと、協力してメスを支える仕組みの進化なしでは解決しなかったと思う。

直立二足歩行は樹上で進化した


直立二足歩行は樹上で進化した

では、直立二足歩行はそもそもどう進化したのか
最近の研究でチンパンジーとゴリラは別々にナックルウォークを進化させたらしい

ダニエル・E・リバーマン著「人体600万年史(上より
ゴリラ
チンパンジー



ヒトの祖先はチンパンジーやゴリラには似ていない -発生パターンの比較から二足歩行の起源に迫る- | 京都大学 (kyoto-u.ac.jp)

最近では、直立二足歩行は樹上で進化したことが有力になっている。
樹上で効率的に果物等を採取しやすいことが理由だ。
(むしろ地上では進化しにくいリスキーな行為だったのかも)

それを踏まえるなら、ゴリラとチンパンジーとヒトのLCA(最終共通祖先)は、すでにある程度は直立二足歩行前適応的な進化を遂げており、後にヒトが陸上歩行に転用したと考えられている。
むしろ、ゴリラとチンパンジーがそれぞれ別々に直立二足歩行とは全く異なるナックルウォークを進化させた、つまり収斂進化させたらしい。
そう考えると、むしろ人間のほうが直立二足歩行の継承と完成を成し遂げたとも言えるのだ。

野生のチンパンジーの行動は、サバンナモザイクの生息地がヒト族の陸生二足歩行の出現を支えなかったことを示唆している |科学の進歩 (science.org)


直立二足歩行のさらなる進化(プレゼント仮説)


プレゼント


なぜ直立二足歩行より進化する必要があったか?
(起源ではない! すでに樹上である程度進化している)

 ”プレゼント仮説” こそ直立二足歩行の進化をより促した

でも、なにがプレゼント仮説の前提

それはペアボンディング(愛の進化)の萌芽的なものが先行してあったと考えます


子殺しの回避(共通課題)

アフリカ大型類人猿に共通の課題は “父親による子殺しの回避“ であると言われる

ゴリラの用心棒戦略、チンパンジーの乱婚がそれぞれの解決策と考えられる

ハーレムを乗っ取ったゴリラの若いオスが最初にやるのは、乗っ取った群れの今いる子を殺す事だ。授乳中により生理が休止しているメスの生理を再開させ、自分の子を妊娠させるのだ。

チンパンジーの場合は乱婚戦略で父親はわからない状態(父性のかく乱)にし、排卵を誇示するメスと発情していない子育て中のメスが物理的に離れ、子の安全が確保されるらしい。

これらは、いずれもそれぞれの食性の進化に適応的で、葉を食べられる草食獣のような進化を遂げたゴリラ
果実を求めて遊動し、空間的に分散しがちなチンパンジーの乱婚排卵の誇示精子間競争能力の進化に対応している。


ヒトの解決策こそがペアボンディング(愛の進化)


愛の進化

では、人間の解決策はなんであろうか
ヒト特有のペアボンディング(愛の進化)がその解決策ではないだろうか

愛の感情は 「母子のきずなをとりもつ心理が大人の雌雄関係に投影された」と榎本知郎先生が主張しておられるが、私もそのように思います。

愛の進化: 人はなぜ恋を楽しむか (自然誌叢書) | 榎本 知郎 |本 | 通販 | Amazon


ペアボンディング(愛の進化)の前適応


愛の感情の起源、これも濃密で長期のマンツーマンの子育てをする、大型アフリカ類人猿共通の前適応なのでしょう
反面、長期の授乳性無月経により性比が偏り、父親による子殺しが起こりやすいい原因でもあります。
ゴリラやチンパンジーは母子関係は濃密でも、父子の関係(絆)はありません。
だから家族はありません
しかしヒトは父子関係を足掛かりに家族を拡大発展させ、生理的早産の未熟な子供でも共同で養育しうる関係を進化させたのでしょう。


濃密な母子関係

現代でも ”人間の心の土台は母子関係” とよく言われる。
わたしは、人間の心の起源(前適応)が類人猿の頃の濃密な母子関係にあったと考えます。

飛躍しすぎかもしれませんが、自意識や知性のさらなる進化すらこれが足掛かりの気がします。自身のうちに相反する衝動を抱えたことで調整、統合する必要にせまられて生まれたのかもしれない。
感情や感覚の統合がすべての知性の進化につながったのではないでしょうか


ペアボンディング(愛の進化)が引き起こしたこと

ペアボンディング(愛の進化)、雌雄が特別の絆で結びつくことで
 ”異性に共通の性的な魅力を求める衝動” を相対的に低下させた。
父子関係も生まれ、家族が生まれ、その拡張としての親族がうまれた

拡大する親族



家族を守りたい気持ちを進化させ、メスをめぐる闘争を減少させるなどして、集団内の不和を解消し協力性が高まる方向に進化させたのだろう

排卵の誇示のあるなしで性行動が不可避的に引き起こされるチンパンジーとは異なり、特定の異性に特別な感情を抱くように進化したのだ
一番遺伝的に近しい直近の分岐でありながら、排卵の誇示乱婚も含めてチンパンジーと人間の生殖戦略は真逆に進化したと言えるだろう。

チンパンジーにおいても、母子の交尾は避けられる
つまり乱婚のチンパンジーの性衝動にさえ母子の愛着が強く影響する
ちなみにゴリラは自分の娘とも交尾する、父子関係がないから当然かもしれないが
チンパンジーは近隣の群れと非常に強く対立・緊張関係にある
類人猿のメスは近親交配を避けるため性成熟すると別の群れに移る
けど、もし父子関係の成立した娘や孫が近隣の群れにいたら、近隣の群れとも協力的な関係を築くことだろう。

友好的になった人々

現在では、恋愛感情は脳底の腹側被蓋野の活性化によることが脳のスキャンで観察出来るらしいです。(性欲とは別の個所)
恋愛感情に伴う集中力やモチベーションを高めるドーパミンがここから脳の各所に届けられるらしい。
(悪く言えば、薬物やギャンブルなどへの依存症と同じ状態)


恋人の事ばかり想像してしまう女性



生物人類学者のヘレン・フィッシャーが「Tech Support」より
生物人類学者だけど「愛について」質問ある? | Tech Support | WIRED.jp (youtube.com)


人間らしい心へ進化


“子殺しの回避” の課題解決のみならず
結果として直立二足歩行の進化を支える重要な役割を担い
その最大のトレードオフである難産さえも解決する重要な基礎となった
これにより人間らしさの方向への進化が運命づけられたと思う

ただ、初期猿人のペアボンディングと現代人の恋愛感情は同一ではありえないでしょう。
チンパンジーと分岐後500万年間は類人猿と大差ない脳の大きさから推測して、猿人の知能は類人猿と同等と考えます。
けど、チンパンジーとボノボの生態はかなり異なることが知られてます。

難産の程度も直立二足歩行の完成段階に依存するでしょう。
アウストラロピテクス属の段階でかなり陸上歩行が出来たと考えられているようですので、その段階では出産の補助があった可能性もあります。
(まだ脳は増大前なので回旋分娩に必要な骨盤形状ではない。
ただ、骨盤は内臓の落下しないボール状となり、骨盤底筋の締め付けはあっただろう)
であるなら、出産を補助する等の協力関係がすでにできあがっていた。
勿論、その後のホモ属からの脳の増大とともに、難産の程度はさらに困難となり、それに応じられる家族関係や愛の進化が加速したとは思います。
脳の増大に対応するため、回旋分娩、生理的早産等が進化し、幼児期が引き延ばされ、より子育てには他者の支援が必要になった。
(生理的早産:チンパンジーの赤ちゃんと同じ発達状態にするためにはヒトは2年の妊娠が必要らしい)

24.pdf (kodomogakkai.jp)
「幼形成熟ネオテニーとヒト」 尾本 惠市(総合研究大学院大学シニア上級研究員 東京大学名誉教授)


微笑むあかちゃん



ペアボンディングの進化を具体的に駆動したもの


おそらくは、テストステロン値の低下にも関わっていて
犬歯の縮小、筋肉の減少、メスをめぐる闘争の減少、他個体との協力の進化に繋がるのでは
 ※チンパンジーの握力は人間の6倍あるとの話もある。それ以外も強い

人間はチンパンジーと比較にならない協調性がある



たぶん メスの方がテストステロン値の低いオスを性選択したことが愛の進化を駆動したと考える。
だけどきっかけは、単に個体差とか遺伝的浮動で、やがて自然選択を受けたのかもしれない
(具体的にはマメにプレゼントくれるとか、子煩悩とか)

チンパンジーにおいても、おいいしそうな果物を持つオスをメスのほうから交尾に誘い、最中にオスの手から取り上げるらしい。
初期人類においても、それを学習したオスが交尾目的でプレゼントを始めたのがきっかけかもしれない。
さらに、浮気性のオスを拒否する、妊娠率を下げる等、メスがペアボンディングの進化を主導したのかもしれない。
気候寒冷化による森林減少により、森と森の間隔が離れた状況で、子育て中のメスがオスと同様に遊動しながら果物等を得るのは困難と考えられるので、メスと子供の生活する森へ、果物をマメに届ける特定のオスを選択するのは理にかなっている。
それならば、危険で合理的でなくても、地上における直立二足歩行が進化しうるのではないでしょうか。


プレゼントするオス



類人猿や人類は非常に個体差が大きいことで知られる。
(進化しやすい状況)
チンパンジーにおいては、メスをめぐる争いに無関心なオスを、メスのほうから交尾に誘うこともあるらしい。
この場合もテストステロン値の低いオスを選択しているのかも


テストステロン値に関する研究例

上顎犬歯形態からみた人類進化 (jst.go.jp)

人類はなぜ文化的に進化したのか。カギは「男性ホルモンの低下」にあり:研究結果 | WIRED.jp


妊娠率の低いヒト

ヒトの妊娠率は他の動物と違い各段に低い(類人猿50%)(ヒト1割弱)
性器の進化論――生殖器が語る愛のかたち(DOJIN選書029) (DOJIN選書 29) | 榎本 知郎 |本 | 通販 | Amazon


ここからは私の考えですが
おそらく、ペアボンディングの進化の途上でも、ペア関係外の交尾が発生した可能性はあったと考えられるが、長期的、継続的な関係の間でなければ妊娠しにくい方向への生殖管の進化がおこり、長期の養育保護を必要とする子供が育つための家族の存立を守る仕組みが選択されたと思う

家族がもうすぐ増えるよ



アフリカの乾燥化による森林減少、果物の減少にアフリカ類人猿は共通して直面したと考えられるが、それぞれ、草食獣化広範囲遊動と、解決方法を進化させたのだろう。
食性の変化に対応して生殖戦略もそれぞれ、ハーレム形成乱婚と進化したのでしょう

おそらく、ヒトへ至る系統の住んでいた場所は、一番条件に恵まれていなかった可能性もあると思います。だから、危険性の高い直立二足歩行に挑む個体がいたのかもしれません。


ヒトの系統ではプレゼントするオスをメスが性選択することでペアボンディング(愛の進化)と直立二足歩行が促されたと考えます。



以上です。ご覧いただきありがとうございました。

挿絵作成にはimagecreatorとIdeogramを使用しました
(AI画像生成を初体験できました)

最後に


私はただの人類学ファンです。
きちんとした科学教育も身に着けておりませんので
独断と偏見に満ちた無責任な論考です。
自分のブログ作成スキルを磨く練習目的で作成しておりますのでご了承下さい。



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