【美少女ゲームレビュー】天使のいない12月
今回紹介するのは、2003年にLeafから発売された「天使のいない12月」です。
恋愛やセックスのエグみがこれでもかってくらいに詰め込まれた異色作です。人を選ぶ作品ですが、刺さる人にはとんでもなくぶっ刺さること間違いなし!
私が2024年にプレイしたエロゲの中ではぬきたしに並ぶレベルの神作でした。
最後まで読んでいただけると幸いです。
~あらすじ~
人間関係は軽く薄く小さくがモットーであり、 なにごとにもいい加減で投げ遣りな生活を送っている主人公。
特にやかましい妹がいるせいもあって、女は面倒だと思っている。
そんな主人公と違い、友人は女の子との恋愛に時間を費やし、 肉体関係になることに至上の価値を求めているので、 主人公に恋愛を勧めるのだが、まるで聞く耳を持たない。
ところが、ある女の子とのささいな言い争いから、 なりゆきと興味本位でその場限りの関係を持ってしまう。
~良かった点~
①苦しくなるほど退廃的で鬱々とした雰囲気 キラキラした青春とは無縁で、どこか生きることに対して諦めを感じている無気力な主人公に共感できる方も多いはず。こういう時期あるよなーとバチバチに感情移入出来ました。
ある程度話せる仲の友人もいるし、将来設計なんてないけど一応アルバイトはしている、絶望的に家族仲が悪い訳では無いけど別に良くもない。
不幸でもないが幸せでもない、どこか満たされず乾いた日常の表現が秀逸です。ヒロイン達も主人公と形は違えど似たように生きづらさを抱えていて、形が違う故のすれ違いも起こります。青春の暗い側面を味わうならこの作品!と言っても過言ではありません。
深まる冬の刺すような冷たさの表現も一級品で、何となく季節設定が冬のエロゲって、Kanonを筆頭に「寒さの中にある人の温かさ」みたいなものを描いた優しい雰囲気の作品が多い印象なのですが、この作品はそれらと対照的にとにかく寒くて冷たくて寂しい冬が救いのない世界とマッチしていて逆に斬新でした。
寒い季節にプレイするのがオススメです。
②エロゲでしかできない表現
この作品は嫌という程"セックス"をリアルに描いています。と言っても、行為自体のリアルさではなくキャラクターのセックスに対する価値観だったり捉え方や向き合い方がエロゲとは思えないくらい生々しいです。
ただ欲に従っただけ、寂しいから、認めて欲しいから、何かを証明したいから、罰を与えて欲しいから、本当に多種多様な理由でヒロイン達と関係を持ちます。人生の中で最も多感で、終わってしまえば一瞬な思春期と、その場の快楽しか得られないセックスの親和性が非常に高いです。
「シナリオの良いエロゲにエロシーンはいらない」という世間の風潮に対するアンチテーゼのようなものを感じました。
③グラフィックや演出がシンプルながら秀逸時代が時代なので、システムやUI周りはだいぶ簡素で控えめなのですが、シンプル故に光る演出があります。テキストを阻害しない程よく哀愁を感じるBGMも素晴らしい。
なかむらたけし先生とみつみ美里先生の手掛ける繊細なグラフィックは2003年のゲームとは思えないほど高水準で圧倒されまくりでした。
個人的にエンディング曲の入り方は私がプレイしてきたエロゲの中でもトップクラスに"良い"ので、是非自分の目で確かめていただきたいです。
そしてOP曲もED曲も神。プレイしていなくても何となく感情移入してしまうこと間違いなし!Spotifyで聞けます。Spotifyくんほんとにいつもありがとう。
OP曲「I hope so…」⬇
ED曲「ヒトリ」⬇
~賛否の別れるポイント~
①話のスケールが小さい
この作品は事件という事件がほとんど起こりません。思春期にありがちなセンチメンタルにフォーカスしているので、言ってしまえば気の持ちようでしかない話が延々と続きます。共感できる人は楽しめると思いますが、「くだらないことでウジウジ悩んでるだけで面白くねー」となる人も中にはいると思いますし、そう捉える人がいるのもある種この作品の肝かなと思いますね。
私は考えても仕方ないことをウジウジ悩む側なのでとても楽しめました。
②明確な答えを出さない
どのルートもそれなりの折り合いをつけるだけで、何も解決しません。これが正解!みたいにならないんですよね。BADエンドも複数ありますが、正直TRUEエンド言うほど幸せか…?みたいな感じになりがちでもあるのでTRUE BAD と言うよりは、違う選択をしたそれぞれの世界と言うだけなのかなと。
製作スタッフの方がインタビューで「ヒロインたちの10年後を想像して欲しい」と答えている通り、プレイ後にこれからどうなって行くんだろう……と思わず考え込んでしまう、終わった後も楽しめる作品です。
あとすっごい個人的な不満なんですけど、
主人公の名前を自分で設定できるんですが、デフォルトネームでプレイしてもヒロインが主人公の名前を呼んでくれない!私は完全に私個人とエロゲは切り離して遊びたいのでこういう配慮は逆に没入感削がれる!
俺は木田時紀だぞ!!!!!!!!!
時紀クンとお呼び!!!!!!!!!!!!!!!
~最後に~
私が思う天使のいない12月は「アンチ恋愛ゲーム」です。
色んな形の愛情は描かれるのですが、俗に言うありがちな恋愛観とのギャップが凄まじく恋愛ゲームの恋抜き、と言っても過言では無い斬新さがあります。
子供と大人の間で揺れる思春期の性欲と承認欲求。恋愛なんて高尚なものじゃないけど確かな愛。なくならない焦燥感、僅かに残された小さな希望。それら全てを抱きしめて歩みを進めていく。
決まった答えなんかないけれど、歩みを止めることは出来ない、"人生"を感じさせる最高の作品でした。
DL販売はなく、現在進行形で中古価格が上がり続けていますが、高いお金を払っても遊ぶ価値があります。是非懐に余裕が出来た際にはプレイして頂けると幸いです。DVD ROM版が1番問題なく動作するのでオススメです。あと普通にこの記事を読んで興味を持った知り合いには普通に貸します。LINEしてちょ。
最後までご覧いただきありがとうございました。良いお年を~。