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【胎教絵本】あたたかい手のひら

森の奥深くに、小さなうさぎの「しろ」が住んでいました。
しろはふわふわの毛をした、まだ幼いうさぎでした。

春の朝、しろはお母さんの腕の中で目を覚ましました。
「おはよう、しろ。今日はどんな一日になるかな?」
お母さんの手のひらは、いつもあたたかくて、しろを優しく包んでくれます。

「ぼく、今日は森を探検してみたい!」
しろは元気いっぱいに言いました。

「そうね。でも気をつけてね。困ったときは、お母さんの手のひらを思い出すのよ。」
お母さんはそう言って、しろの背中をそっと撫でました。

しろは、森の中をぴょんぴょんと跳ねながら進んでいきました。
新しい場所、新しい景色。どこもかしこも、ワクワクするものばかりです。

木の上では、小鳥たちがさえずっています。
「おはよう、しろ!どこへ行くの?」
「探検をしてるんだ!」

すると、少し先で川のせせらぎが聞こえてきました。
「わぁ、水がきらきら光ってる!」

しろは川のほとりに行って、そっと水に前足をつけました。
すると、つめたくて、びっくり!
「ひゃっ!」
思わず後ろに飛びのきました。

そのとき、風が強く吹いて、しろの小さな体がぐらりと揺れました。
「うわぁ!」

しろはバランスを崩して、転んでしまいました。
「いたた……。」
ひざが泥で汚れ、少し擦りむいてしまいました。

急に、心細くなって、涙がぽろりとこぼれました。

そのとき、しろはお母さんの言葉を思い出しました。
「困ったときは、お母さんの手のひらを思い出すのよ。」

しろは、目を閉じて、お母さんの手のひらを思い出しました。
ふわふわで、あたたかくて、優しくて。
いつもそっと包んでくれる、お母さんの手のひら。

「大丈夫、大丈夫。」

お母さんがいつも言ってくれる言葉が、心の中に広がりました。

すると、涙が止まり、しろの心の中もぽかぽかしてきました。
「ぼく、大丈夫!」

しろはゆっくりと立ち上がり、森の奥へとまた歩き出しました。

しばらく進むと、大きな木の下に、ふわふわの動物がうずくまっていました。
「どうしたの?」

それは、小さなリスの「くるみ」でした。

「うぅ……ぼく、木から落ちちゃって、まだちょっと怖くて動けないんだ。」

しろは、そっとくるみに近づきました。
そして、自分の前足をくるみに差し出しました。

「ねぇ、お母さんの手のひらってね、とってもあたたかいんだ。
だから、ぼくの手のひらも、あたたかいよ。きっと大丈夫!」

しろの手のひらは、お母さんのように大きくはないけれど、優しくてあたたかでした。

くるみはそっとしろの手を握りました。
「あったかいね。」
「うん!」

しばらくすると、くるみは元気を取り戻し、木の上へ戻っていきました。
「ありがとう、しろ!」

日が沈み、しろはお母さんのもとへ帰りました。
「おかえり、しろ。楽しい探検だった?」

「うん!川で転んじゃったけど、お母さんの手のひらを思い出したら、元気になったよ!」

しろは、今日の出来事をお母さんに話しました。
お母さんは、にっこり笑って、しろをそっと抱きしめました。

「しろの手のひらも、きっと誰かをあたためられるね。」

お母さんの手のひらは、今日も変わらず、あたたかでした。

それからも、しろは少しずつ大きくなりながら、森の中でたくさんの動物たちに出会いました。
そして、自分がしてもらったように、誰かの手をそっと握ってあげるのでした。

しろの小さな手のひらには、お母さんのぬくもりが、ずっとずっと生きていました。

―おしまい―

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