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第14週:そもそもAIって何?

そもそもAIって何?〜AIの現状とこれから〜

 「AI」はArtificial Intelligenceの略で、日本語では人工知能と訳される。最近どこでもAIという言葉を聞くようになった。クーラーや洗濯機などの家電製品においても「AI機能」を謳っているものもよく見かける。しかし、そもそもAIとは何かという問いに答えることができる人は少ないのではないだろうか。
 実際のところAIの定義について厳密に定まっているわけではない。そのため、どこもかしこもAIという言葉を好き勝手使っているのが現状である。AIの定義はないとしても、業界全体としてある程度の共通理解はある。冷蔵庫やクーラー、お掃除ロボットなど、特定のタスクのみに特化したものを“狭義のAI”というのに対して、人間のように(あるいは人間以上に)多様なタスクを柔軟にこなすものを汎用人工知能(AGI: Artificial General Intelligence)という。現状では狭義のAIのことを、単にAIと称してマーケティングに利用されているが、本当の意味での広義的なAI、すなわちAGIは未だ完成していない。
 では、AGIはどうしたらできるのだろうか。今最もホットなAI分野であるLLMから考えたい。LLMはLarge language model(大規模言語モデル)の略で、ChatGPTのようなアプリに代表される自然言語処理に特化したAIのことだ。自然言語とは人間が話す言葉のことであるが、GPU(並列計算が得意なプロセッサー)を使って大量のデータをモデルに学習させることによりLLMはかなり自然な形で人間と会話できるところまできた。しかし、実は小学生でも理解しているようなことがわかっていない場合もあるのだ。たとえば、僕がChatGPTに質問した次の例を見てほしい。

風船の上に家を建てると、、、

 このように、風船の上に家を建てることなど実際には不可能なことだが、上のように質問すると、ChatGPTは風船の上に一軒家を乗せて海抜を計算してしまう。私たちは経験則からこれは不可能なことだと理解できるが、LLMはこの現実世界で起こる因果関係の理解(これをワールドモデルという)が不足しているために、風船の上に家を建てることについてそれは無理やがなとツッコミを入れてくれない。一般の大人が知らないような知識をたくさん知っているLLMだが、小学生でも理解している認識が不足しているのである。AGIが生まれるためにはワールドモデルが必要なのだ。
 では、ワールドモデルは一体どうすれば手に入るのだろうか。ここは意見が分かれるところだが、今までと同じようにデータを増やして学習を続けていけばワールドモデルを獲得できるという立場の他に、自然言語を処理しているだけでは限界があり人間のような物理的な身体を与えてあげなければワールドモデルは獲得できないとする立場がある。なぜなら人は物理的な身体(五感)を通してこの世界の様々な現象を経験的に理解していくからだ。この立場に立つと、AIにワールドモデルを獲得させるには、ロボットを大量に作って私達と同じ生活空間に投入し、風船に重いものを乗せれば割れるといったような経験をたくさん詰ませて、正解と失敗を学習させれば良いということになる(これは赤ちゃんを育てる過程に似ている気がする)。容易に想像できるが、これを現実空間でやろうとすると途方もなく時間も金も労力もかかることになるだろう。でも、仮想空間でなら時間も金も労力も大幅に削減することができる。このような研究が今盛んに行われている。次のYoutube動画を見てほしい。

 LLMとロボットを組み合わせて、ワールドモデルを獲得したAIが生まれたら、介護ロボットや友だちになれるロボットがつくられるだろう。さらにその先にはAIが自分よりも賢いAIを作り出し、私たちの大部分は働かなくても良い時代が到来する。
 昔何かの授業で『人間とは何か』について考えたが、”言葉を話す”、”火を使う”、”文明を持っている”というのが結論であった。AIは確実にこのルートを辿っているように思う。AIが発展していくにつれ、AIが人間を代替していく世界、人間との違いが曖昧になる世界、そんな世界はユートピアなのかディストピアなのか、その答えはまだ誰にも分からない。

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