【THE DAYS】福島の現状とこれから
Netflixで福島第一原子力発電所事故を題材にした作品、【THE DAYS】を見た。あの時何が起こっていたのか、事故報告書や吉田調書、事故対応の当事者へのインタビュー本等をもとに制作されているという。そこで起こった出来事が非常にわかりやすく描かれており、事故対応の様子をリアリティを持って体感することができた。
福島第一原子力発電所は地震による振動には耐えたが、想定を大幅に超える高さの津波により地下にあった非常用ディーゼル発電機や電気を配電するための電源盤が水没して機能しなくなり、SBO(Station Blackout)全電源喪失となった。
電気がないと冷却水を送水するためのポンプが動かず、熱により高まった圧力を逃がす弁も開けない。原子炉そのものが爆発すると、大量の放射性物質がばらまかれ、東日本の殆どで人が住めなくなる。
暗闇の中、懐中電灯で照らしながら開いた事故対応マニュアルには、全電源喪失の場合の対応はどこにも書かれていなかった。ここから、誰も経験したことのない戦いが手探りで始まることになる。
放射線量率が高まる中で、車のバッテリーを繋いで装置を動かそうと試みたり、原子炉建屋の弁を手動で開けに行ったり、ヘリや消防車、クレーン車による海水注水を継続して実施した。溜まった水素により発電所の建屋は爆発したものの、原子炉そのものの爆発は奇跡的に免れた。
東日本壊滅という最悪の事態にならずに済んだのは、発電所員や関係者の尽力の賜物でもあるが、不幸中の幸いというか、神の恵みというか、運が良かったと言わざるを得ない。
この事故を教訓に非常用発電機や電源盤の位置、設置数を見直すとともに、全電源が喪失した場合の対応を整備していく必要がある。更には原子炉が吹き飛んだ場合の対応までも明記する必要があるだろう。
廃炉作業は今もなお続いている。最近ではALPS(アルプス)処理水の海洋放出がIAEAに認められたが、地元福島の漁連は放出に反対を表明している。ALPS処理水とは、地下水や雨水が壊れた建屋に入り込んでできる汚染水を、セシウム吸着装置やALPS(多核種除去設備)といわれる装置によってトリチウム以外の放射性物質の大部分を取り除いたものだ。トリチウムは化学的に水素と似た性質を持つ放射性物質で、現代の技術では取り除くことが難しいため、希釈して海洋放出することが国際的に認められている。海水で希釈された日本の処理水のトリチウム濃度はWHOの飲料水の基準の1/7程度であり、トリチウムの放出量は世界的に見ても圧倒的に低い。しかし、放射性物質に対する行き過ぎた不安感による風評被害は少なからずあるだろう。
核燃料が溶け落ちて冷え固まった「燃料デブリ」の取り出しについてはまだ目処が立っていない。しかし、これらの廃炉技術は着実に進歩していく。世界各国の原子力発電所が廃炉問題や事故のリスクを抱えていることを考慮すれば、福島で培われている廃炉技術は世界的にも重要なはずである。
【THE DAYS】を見て、事後から12年経った福島について、原子力発電について、放射線について再考できた。これらのトピックについては今後も継続して考えていきたい。
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