区分所有法9条推定解除以降は新たなビジネスチャンス?②
前編はこちらからどうぞ。
前回のケースでいうところの、603号室の床下配管で漏水事象が確認出来た瞬間、実は、管理会社は、これ以上、調査や修繕をする義務も責任もなくなります。
これは、どういうことなのかと言いますと、
『建物の設置または保存に瑕疵がある事により他人に損害を生じた時は、その瑕疵は、共用部分の設置または保存にあるものと推定する』
と、規定されているためです。これが『推定』です。
しかし、原因箇所が603号室の床下に特定されるということは、603号室の専有部分だと特定されるということなのです。
そうなると、『推定』の必要がなくなるため、『推定解除』となります。
管理会社の管理対象部分は、契約上、管理組合の共用部分と全く同一です。
ですので、専有部分と判明した瞬間、共用部分の管理を目的として存在している管理組合と、その委託先の管理会社の管理事務の対象ではなくなるわけです。
厳密にいえば、原因が専有部分と判明した以降は、原因者(この場合は603号室の区分所有者)と被害者(503号室の区分所有者並びに占有者)の双方で解決するのが基本的な筋道という事になります。
ただ、603号室の方も503号室の方も、多くの場合マンション管理の素人ですし、配管類の修繕、被害部屋の修繕(損害賠償)、保険申請の手続きなど、慣れない事を沢山こなさないと解決に至るのは難しいのです。
では、多くの分譲マンション管理会社が、先の『推定解除』以降も、いろいろと手配していたのでしょうか?
実は、分譲マンション管理会社のフロントマンの多くは、そもそも漏水対応を『区分所有法9条』に基づく管理事務と意識していない可能性があります。
なので『推定解除』以降も、当然の様に、諸々手配している可能性があるのです。本当はやる必要が無かった仕事なのに一生懸命やっていて、ご苦労様な事です。
と、まるで他人ごとの様ですが、私も現役のフロントマン時代は、何の疑問も無く漏水対応していました。
それはフロントマンとしての責任感がそうさせていたとも思いますし、困っているお客様の力になりたい、そんな気持ちからだったと思います。
ただ、今後はそんなフロントマンの責任感や善意に頼った漏水対応は難しくなると感じています。
なぜ難しくなるのか?
単純に人手不足というのもありますし、漏水対応というのは分譲マンション管理の世界においてかなりの難易度です。
ハード面の技術の問題もありますし、ソフト面の区分所有法や管理規約、損害保険の知識、こういった硬軟両面の知識、技術が必要となるからです。
これを管理会社だけで提供するのは段々と難しくなり、専門業者が対応した方が、対応も速やかで結局関係各位の手間やストレスも少なくなる流れになってきているからです。
では、今後はどうなるのか?恐らく3つの選択肢が主流になると思われます。
一つは漏水対応において原因箇所が共用部分と推定されているうちは調査をするけど、推定解除以降はお客様(それぞれの区分所有者、占有者)任せになる選択肢。世知辛いけど管理会社としては契約の範囲の義務は果たしているだけで批難を受けるいわれはありません。(現場のフロントマンとしては辛い対応かと思いますが)
もう一つは、9条推定解除以降の対応も含めて、漏水対応を専門業者と管理組合において月額契約をして安心と対応体制を買う選択肢。
また、その亜流として、管理会社が別途料金を上乗せして上記の専門業者が提供する様な、安心と対応体制を提供する選択肢もあろうかと思います。