第48話 寝具はこだわれ

 君に膝枕されたい。枕も敷かない硬いベッドの上、そう思う。
 寝具は拘った方がいいらしい。そんな言説を否定する訳でもなく、今日もペラペラな布団の上に横たわる。みんなはふわふわモチモチのマットレスで眠るんだろうか。私は枕すらテキトーなクッションで済ませている。首が痛い。
 そういえば、君のベッドは柔らかかっただろうか。君の部屋に泊まった時、君は空気で膨らむタイプの寝具を用意してくれたんだけれど、正直寝心地は最悪だった。朝まで一睡も出来なかった私は、起きた君と入れ替わるようにして君のベッドで眠った。
 懐かしい記憶だ。
 けれど、君のいた温もりは思い出せるのに、一向に寝心地が思い出せない。人の記憶は脆いものだ。
 あるいは、当時の私が寝心地なんかよりも君の体温ばかり気にしていたんだろうか。
 可能ならば、もう一度君のベッドで眠らせてもらいたい。そうしたらきっと、きちんと想い出にしまっておくから。

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