第13話 どこだって都

 私が家出したいことを電話で言った時、君は「じゃあこっち泊まりにおいでよ」と躊躇なく言った。家を出るなんてのはただの夢想だった私は、そのフットワークの軽さに驚く。それははすぐに、尊敬に変わる。
 君が泊まりに来いと言ったのは、君の実家だった。わざわざお母さんの車で迎えに来た君は、キャリーバッグ片手の私を車中から笑う。笑うなよ。
 怒られるのが怖くて、こっそり家を出てきてしまった。親兄弟は外出中なので未だバレてはいないけれど、時間の問題である。焦る私を、君は「じゃあこれ誘拐ってこと?」とまた笑った。笑いごとじゃないってば。
 真っ赤なキャリーバッグは私の罪の象徴だ。君は意外と派手だねと指さす。本当にその通りだと思う。それでいて、この小さな箱に数週間困らないだけの荷物は詰め込んできたのだ。あ、スマホの充電器忘れた。貸してもらえばいいか。
 私にとっての決死の逃避行を、君はことごとく笑い飛ばす。
 それいでいて君はこうも言うのだ。
 共犯だね、と。

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