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【映画記録】互いの手が離れていく瞬間を、もう決して交わることのない未来を:『ルックバック』
現実は残酷だ。
頭の中でなら過去に戻って何度だってやり直せるし、無害できれいな部分だけを見聞きしていられる。傷つくことはない。全て自分の思い通りだ。
でも現実はそうはいかない。いくら後悔しても過去も未来も変えることはできないし、傷と向き合いそして背負って生きていかなければいけない。
けれども、人と向き合う喜びや好きなものととことん向き合い、夢中になって追いかける爽快感は決して現実でしか味わうことができない。
ああ、生きるってこういうことだよな。
と、人が誰のものでもない自分の人生を歩むということの意味を再認識できたような気がした。
子どもの素直さって時にすごく残酷だ。悪意のない言葉が胸をえぐって、大人になった今でもしこりのように残っていたりする。普段はきれいさっぱり忘れているのに、ふとした瞬間に思い出してまた永遠にその言葉に囚われたりする。
でも、反対にそれはかとない推進力にもなり得る。
人が挫折する瞬間、心に火が灯る瞬間、新たに心引かれるものに出合ってしまった瞬間、強固だったはずのものが揺らぎ引き離されていく瞬間。
心の機微に触れるたび、苦しくなったり舞い踊りたくなったり、自分の感情もメリーゴーランドのように揺れ動いていく。
大人になるに従って、現実を生きるよりもベッドの中で夢を見ている方が圧倒的に心地良いと感じるようになった。きっとそれは、未来の自分の姿をある程度予想できるようになったから。
純真無垢で何者にでもなれると信じていた幼少時代とは違う。
なんだか急に小学生時代に幼馴染と交わした何でもない約束を思い出した。
「私が漫画家になったら、アシスタントやってね。ずっと一緒に生きて
いこうね」
20年以上頭の片隅にもなかった出来事をこの作品を見ながら思い出した。
言っておくが私は絶望的に絵が下手だ。美術の評価はいつも「2」だった。
そんな人間がアシスタントになれるわけがない。でも、当時の私は共に絵を描き彼女と生きていく未来を本気で想像してワクワクしていた。
お笑いにハマっていた時は、また別の友人とコンビを組んで芸人になる約束をしていた。
何も知らないって無敵だ。あの頃のように、何色にも染まらない真っ白な状態で自分の未来を追いかけていけたならどんなに生き易いだろうか。
ふと、そんなことを考えたりした。