転売ヤー批判 偽バーナンキと偽クルーグマンの対話

クルーグマン: ねえ、ベン、最近の転売ヤーの話を聞いてるか?コンサートのチケットや限定スニーカー、ゲーム機まで買い占めて、信じられない値段で売りさばいてる連中だよ。市場原理主義の行き過ぎじゃないかと思うんだが。

バーナンキ: ポール、確かに目につく現象だね。でも、経済学的には単純な需要と供給の結果とも言える。希少な商品に対して需要が供給を上回れば、価格は上がる。転売ヤーはそのギャップを埋めてるだけかもしれない。

クルーグマン: 待て待て、ベン。それはあまりにも教科書的すぎるよ。現実を見てくれ。こいつらはボットを使って買い占め、一般の消費者が正規価格で手に入れるチャンスすら奪ってる。不公平じゃないか。市場が効率的だなんて言えない状況だよ。

バーナンキ: 公平性の観点は分かるよ。でも、転売がなければ、そもそもチケットや商品を手に入れられない人も出てくる。たとえば、初回販売で運良く買えた人が、それを転売市場で高く売ることで、もっとその商品を強く欲しがる人に渡る可能性もある。市場ってそういう流動性を作る仕組みでもあるよね。

クルーグマン: それは理想論だよ、ベン。実際には、転売ヤーが利益を独占してるだけだ。需要を人為的に操作して価格をつり上げてるんだから、これは市場の歪みだ。僕はこういう行為が弱者をさらに搾取する構造を作り出してると思うね。特に低所得者層が文化的な体験や必要な商品から締め出される。

バーナンキ: 歪みか……確かに、ボットや組織的な買い占めが絡むと、純粋な市場メカニズムとは言い難い部分はある。でもさ、ポール、じゃあどうする?規制を入れるか?価格統制でもするのか?それこそ市場の自由を損なって、別の非効率を生むんじゃないか。

クルーグマン: 規制は必要だよ。たとえば、チケット販売に実名制を導入したり、転売価格に上限を設けたり。企業側も対策を取れるはずだ。例えば、プレイステーション5の発売時みたいに、ソニーがもっと供給を増やせば転売ヤーの余地は減る。市場に任せっきりにするから、こういう寄生虫みたいな連中が跋扈するんだ。

バーナンキ: 供給を増やすのは同意だよ。企業が生産能力を上げれば、そもそも転売のインセンティブが減る。でも、規制には慎重にならないと。実名制にしたって、プライバシー問題が出てくるし、上限価格を設ければ闇市場が活性化するリスクもある。僕がFRBで学んだのは、介入はタイミングとバランスが命だってことだ。

クルーグマン: バランスねえ……でも、ベン、君はいつも慎重すぎるよ。2008年の金融危機の時だって、もっと早く大胆に動いてれば被害は減ったかもしれない。転売だって放置すれば、消費者へのダメージが蓄積する。経済は理論だけで回ってるんじゃない、現実の人間が苦しんでるんだ。

バーナンキ: あの危機は忘れられないよ、ポール。でも大胆な介入が常に正解とは限らない。転売ヤーを締め付ける政策が、意図せず正直な消費者や小規模な売り手を傷つける可能性もある。たとえば、転売禁止令が出たら、急に予定が合わなくなった人がチケットを売る権利まで奪われるかもしれない。

クルーグマン: そこは技術的な工夫で解決できるさ。たとえば、公式のリセールプラットフォームを作って、正規価格に近い範囲で取引できるようにすればいい。転売ヤーの高値転売を潰しつつ、柔軟性も保てる。市場を完全に自由にしろとは言わないよ、賢く制御するんだ。

バーナンキ: そのアイデアは面白いね。公式プラットフォームなら、転売の利益を減らしつつ、消費者のアクセスも守れる。ただ、運営コストや不正対策をどうするか、考えなきゃいけない。でも、ポール、君がそんな現実的な提案をしてくるなんて珍しいよ。いつもはもっと大きな政府を推してるじゃないか。

クルーグマン: ハハ、ベン、皮肉はやめてくれ。僕だって現実を見てるさ。転売ヤーがのさばる市場なんて、誰も幸せにしない。君だって、金融システムの安定のために動いたんだろ?これも同じだよ、小さな歪みが大きな不信感を生む前に手を打つべきだ。

バーナンキ: 確かに、市場への信頼は大事だ。転売があまりに目立つと、人々が経済システム自体を疑い始めるかもしれない。僕らはそこをどうバランスするか議論してるわけだね。もう一杯コーヒー頼むか?まだ話したいことがありそうだ。

クルーグマン: 賛成だよ、ベン。この話、まだまだ尽きないね。

クルーグマン: ベン、さっきの公式リセールプラットフォームのアイデア、悪くないだろ?でも、転売ヤーを本気で潰すなら、もっと根本的な話をしないと。例えば、なぜこんな連中がこれほど増えたのか。技術の進化と資本主義のゆがみが結びついてるんじゃないかと思うんだ。

バーナンキ: 技術か……確かに、ボットやアルゴリズムが転売をスケールアップさせてるのは明らかだ。昔ならチケットの行列に並ぶ根性があれば買えたけど、今はサーバーへのアクセス速度とプログラム次第だ。でも、ポール、それが資本主義のゆがみかっていうと、少し疑問だよ。技術は中立で、使う人間次第じゃないか?

クルーグマン: 中立だって?それは甘いよ、ベン。技術が誰にでも平等にアクセス可能ならその言い分も分かる。でも、現実は金と知識を持った奴らがボットを駆使して、一般消費者を蹴散らしてる。プラットフォーム企業だって見て見ぬふりだ。eBayやStubHubみたいな二次市場が儲かるから、転売を黙認してるんだよ。これは構造的な問題だ。

バーナンキ: プラットフォームの責任は確かにあるね。彼らが転売を助長するインセンティブを持ってるのは事実だ。でも、構造的って言うなら、需要側も見なきゃいけない。転売ヤーが高値で売れるのは、消費者がその価格を払うからだ。需要がなければ彼らのビジネスは成り立たないよ。

クルーグマン: そこだよ、ベン。需要が自然に生まれてるわけじゃない。転売ヤーは希少性を人為的に作り出してるんだ。たとえば、限定発売のスニーカーなんて、メーカーが意図的に供給を絞って煽ってるケースもある。消費者心理を操作されてるんだよ。経済学的に言えば、これは情報の非対称性だ。転売ヤーとメーカーが共犯関係にある可能性すらある。

バーナンキ: 情報の非対称性か……面白い視点だね。確かに、供給を絞る戦略はブランド価値を高めるマーケティングとして昔からある。でも、転売ヤーとメーカーが結託してるとなると、独占禁止法の領域に踏み込む話だ。証拠があるなら、規制当局が動くべきかもしれない。

クルーグマン: 証拠は断片的だけど、状況証拠なら山ほどあるよ。たとえば、ナイキの限定リリースが転売市場で即座に高騰するパターン。偶然にしては出来すぎだろ?規制当局が動くべきだよ。でも、アメリカの規制って企業の自由に甘すぎるから期待薄だ。日本やヨーロッパの方が、消費者保護の観点で進んでるかもしれないね。

バーナンキ: グローバルな視点か。興味深いよ。日本だと、チケット転売に罰則付きの法律が2019年にできたよね。高額転売を禁じる規制があって、違反すれば罰金や懲役もあり得る。効果はまだ議論の余地があるけど、少なくとも転売ヤーの動きを抑える意図は明確だ。

クルーグマン: その通りだよ。日本はいい例だ。規制が機能すれば、市場が消費者にとって公平になる証拠だ。でも、ベン、君ならどう思う?規制が強すぎると、市場の流動性が損なわれるリスクはないか?さっきも言ってたけど、適正なリセールが制限されると、正直な消費者まで困る可能性がある。

バーナンキ: その懸念は正しいよ。日本の法律だって、転売自体を全否定してるわけじゃなくて、「高額かつ営利目的」の転売に焦点を当ててる。バランスを取ろうとしてるんだ。でも、実際の運用を見てると、グレーゾーンが多い。たとえば、家族に譲るつもりが高く売っちゃった場合、どこまでが違法か線引きが難しい。過剰規制はイノベーションや柔軟性を殺すリスクがある。

クルーグマン: 線引きの難しさは認めるよ。でも、何もしないよりマシだ。転売ヤーが野放しだと、社会的な不信感が広がる。経済ってのは信頼の上に成り立ってるんだからさ。たとえば、ゲーム機の転売で子供がクリスマスに泣くなんて話、笑いものじゃないよ。経済学者として、そんな市場を放置するのは無責任だ。

バーナンキ: 信頼か……確かに、金融危機の時も市場への信頼が崩れたのが一番厄介だった。でも、ポール、感情的な話に持っていくのはずるいよ(笑)。子供が泣くのは悲しいけど、政策はデータと理論で決めるべきだ。転売がどれだけ経済全体に影響してるか、実証的な研究がもっと必要だと思う。

クルーグマン: データねえ……じゃあ、こんな数字はどうだ?2021年のPS5転売市場、推定で10億ドル以上の取引があったって試算がある。転売ヤーが吸い上げた利益が、消費者の懐から直接出てってるんだよ。これが経済に何の影響もないなんて言えるか?

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