とうとうチケット偽造で最前管理が逮捕報道、「地下アイドルを応援していただけなのに…」最前管理が犯罪者集団になってしまう仕組みを解説する!闇バイトにすら繋がる…?最前管理犯罪事件簿
先日、地下アイドル業界にちょっとした激震が走った。
それは「地下アイドルの最前管理がチケット偽造で逮捕」というニュースが駆け巡ったからだ。
大手メディアすら取り扱ったこの事件…。
まさか「最前管理」というワードを、大手メディアで目にする日が来ようとは。
「最前管理」は地下アイドルのファンとなり、実際にライブ(現場)に通うようになると必ず視界に入ってくる存在であり、その存在は地下アイドルに関わる全ての者にとって無視出来ないものだ。
そんな最前管理を扱った下記記事の閲覧数を見てビックリしたし、私の想像を超える関心があることが分かった(もちろんこれは検索アルゴリズムやSNSでの拡散などの要素も大きいが)。
そんな最前管理が暴力沙汰に続いて、とうとうチケット偽造で逮捕され、大手メディアで取り上げられるという事態に至った。
今一度この最前管理問題について解説していきたい。
「最前管理」とは何か?
「最前管理」とは何なのか?これについては下記記事にてかなり詳しく解説したが、今一度簡潔に説明しておこう。
最前管理とは、地下アイドルの各グループに存在する、「最前列を牛耳るファンたち」のことである。
基本的に地下アイドルのチケットは、整理番号順での入場になるので、整理番号が良いチケット(良番)を買い占める、前方エリアチケットを買い占める、そして場所取りをすることで最前列を占領するわけである。
ただし、最前列を占領し、牛耳ればそれで最前管理というわけではない。
ある程度反復継続的に最前管理行為を行い、また他のグループの最前管理から「誰々はあのグループの最前管理」と認められる必要がある。
なぜなら、地下アイドルというのは、出演するライブのほとんどが「対バン」だからである。
多数のアイドルグループが出演する「対バン」においては、1つのアイドルグループの最前管理だけで最前列を管理することは出来ず、相互に緻密に連絡をやり取りする必要がある。
極めて小さい規模の対バンに出演するだけの地下アイドルであれば、単独でも最前管理を名乗ることは可能。
しかし、少しでも大きな規模の対バンで最前管理として振る舞うには、他グループの最前管理たちと協働し、認められる必要があり、いわば「最前管理グループ」に入らなければいけないのだ。
厳密には、この最前管理グループも大きな括りがあるとされるのだが、そこは少しぼかしておく。
この記事では、「最前管理グループ」というのは、各地下アイドルの単独の最前管理ではなく、それら最前管理が連なった大きな集団を意味することとする。
「最前管理の犯罪」事件簿、なぜ最前管理は犯罪者集団となってしまうのか?
エンドレスサマー電子チケット偽造事件
さて、今回のテーマは「最前管理の犯罪」についてである。
ことさらに「犯罪」という言葉を使うが、これは地下アイドル現場が犯罪行為に対しての意識が完全に希薄となっている現状に危機感を抱くからだ。
日本は法治国家である、ということすら忘れるほどの現状に、今一度平穏が訪れることを願う。
さて前回最前管理を解説するきっかけとなったのが最前管理の暴行傷害事件なのだが、それ以外にも多くの事件を最前管理は起こしている。
まずは、今回最前管理が逮捕され、大きく報道された「チケット偽造」について解説したい。
事件の現場となったのは渋谷道玄坂の各ライブハウスを使ったサーキット形式のフェス「エンドレスサマー2024」である。
このエンドレスサマーでは、当日朝から警察が出動し、何やら揉めているというのがSNS上でも話題となっていた。
そもそも地下アイドルのフェスで警察が来て揉めているというのは割とよくあることなので、今回も大事にはならないと見られていた。
しかし、チケットを偽造し、入場し、さらには特典のTシャツまでも受け取るという自体を重く見たのか、今回は逮捕に至ったようである。
不正入場は過去幾度となく行われており、今回警察がどこを重く見たのかは分からないが、おそらくは特典Tシャツの詐取という「物の交付」を重くみたのではないか?と考えている。
(一部報道によると、特典Tシャツが不足したことで事件が発覚したとされるが、これは実際の経緯とは少し異なっている)
あるいは、元々最前管理の犯罪行為に目を光らせていた警察の「見せしめ」だったのだろうか。
正直、警察は地下アイドルという世間一般からすると非常にマイナー、故に注目されづらい事件をことさらに取り上げないと思っていただけに、意外と言うほかない。
さて事件を整理しよう。
警視庁渋谷署は10月11日、詐欺の疑いで、男女3人を逮捕したと発表している。
多くの地下アイドルのライブチケットは、紙チケットではなく、QRコード掲示タイプの電子チケットである。
彼らはこれを偽造し、入場したのである。
どうやって?
一部SNSでは、入場受付の際にQRコードを読み取らないこともあるので、そのことを利用されたのではないか?とされている。
つまり、QRコードのフェイク(実際には読み取れないもの)を作ったのではないか?と。しかし正確には、これは間違いである。
実際には、別の偽造手法が存在する。
これによって不正に入場することは、当然ながら詐欺罪に該当する。
なお最前管理グループは、あくまでも今回逮捕された者の問題であり、最前管理自体とは何ら関係ないと、いわば声明を出しているようである。
今回逮捕された最前管理たちは切り捨てられたのだ。
しかし現実問題として、最前管理グループ内でこのチケット偽造の手法・ノウハウは共有されているのだ。
ただ毎回、全員が実行するわけではないというだけで。
今回の事件を受けて、最前管理グループは偽造ノウハウの証拠隠滅に動いているが、今後警察の捜査に期待しよう。
そもそも次に解説する23アットジャム不正入場事件、そして日常的に行われているリストバンド不正などがあるように、最前管理グループはチケットを偽造して入場することへの犯罪意識が極めて低い。
その結果起きてしまったのが、今回のエンドレスサマー事件なのだ。
なおエンドレスサマーのこのTシャツ付き優先入場チケットの価格は、税込10500円(チケット会社の手数料は除く)である。
たった10500円で?と思われるかもしれないが、最前管理グループのこうした不正入場による損失は、小規模なものには止まらない。
以下詳しく解説していこう。
2023アットジャム大量不正入場事件
最前管理による悪質な不正入場は慢性化しているので、細かい事件を挙げるとキリが無いが、大規模なところでいうと2023アットジャム大量不正入場事件がある。
アットジャム(@ JAM EXPO)は、 毎年夏に横浜アリーナにて行われる大規模アイドルフェスであり、TIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)と並ぶ有名フェスである。
アットジャムとTIFに出場・出演することは、地下アイドルにとっては大きなステータスとなっている(それがまた最前管理絡みの事件へと発展している、後ほどこれも解説する)。
昨年23年のアットジャムにて、初日に大量に不正入場が行われるという事件が起こった。
この混乱により入場が大幅に遅れ、出演時間の早かった多くのアイドルのファンが入場自体出来ないという事態に陥った。
アットジャムの総合プロデューサーによると、その損失額は500万円ということである。
アットジャムのVIPチケットは 2日券で86400円、1日券で48000円と非常に高額である。
またTIFのVIPチケット(キラキラチケット)も非常に高額(1日で4万円、3日間通しでおよそ10万円)なものとなっており、それ以外にもVIPチケットを高額で販売する夏フェスが存在する。
また一年で最も多くライブイベントが開催される時期でもある。
それら多くのライブに参戦することを自らに義務付けている最前管理グループにとっては、このVIPチケットは重い負担となったのだろう。
とても身勝手な話なのだが、彼らにとってこの手の大規模フェスは、自らの晴れ舞台でもあるため、参戦しないというわけにもいかないのだ。
(参戦しないことを「恥」とすら考えるのが彼らの発想の特徴である)
正直主催者サイドの発表が、どれほどこの事件を正確に表しているのかは不明だが、ともかく最近の不正入場事件としては最も大規模なものとなった。
しかし、これだけの大量の不正入場が起こっても、逮捕者どころか出禁者すらろくに出なかった。
そうしてアットジャムにVIPチケットを正規に買って観に行こうというファンは激減したと思われ、今年はVIPチケット入場者がかなり減ったようだ。
日常的に繰り返される最前管理の不正入場、リストバンド使い回しなど当たり前な現実
ここからは、最前管理による犯罪事件簿を少し紹介したいと思う。
今回最前管理の逮捕者も出たように、チケットを偽造するというのは立派な犯罪なわけだが、最前管理は「日常的に」「気軽に」に不正入場を繰り返している。
その代表的な手法が、前方エリアリストバンドの使い回しだ。
地下アイドルのライブというのは、電子チケットによる受付・入場を行ったあとは出入りが自由なのが原則である。
会場のどこで見るのも基本的に自由、ただし再入場の際にはドリンク代が再度発生することもある。
そしてほとんどのライブでは「前方エリア」「VIPエリア」が設置されており、これはチケットの中でも高額に設定された「前方チケット」「VIPチケット」を購入した者のみが立ち入ることが出来る。
はずなのだが…。
前方チケットの価格は安いものだと3000円ほどだが、高いものだと8000円から1万円ほどになり、ライブのステータスや規模によってはさらに跳ね上がる。
最前管理は、最前列で見る必要があるため、当然この前方チケットを入手する必要がある。
だが毎回毎回前方チケットを律儀に購入していたらお金がいくらあっても足りない、というわけだ。
そこで行われるのが、前方エリアに入ることの出来るリストバンドを使い回す不正だ。
ライブハウスへの入場自体は格安の通常チケットで正規に行う。そして前方エリアにはすでにお目当てグループの出番の終わった仲間や関係者から譲り受けたリストバンドで不正入場するのだ。
(ちなみに酷いときには通常チケットすら買わずに会場に不法侵入することもある。これに関してはどういうことなのか?また別の機会に公開しよう)
これは本当に気軽に、カジュアルに、かつ組織的に行われてしまっているのが現状だ。
流石にチケット偽造はハードルが高く、最前管理の全員が全員行っているわけでは無いが、このリストバンド使い回しはほぼ全員が行なっていると言っても過言ではない。
最前管理の下っ端は、リストバンドを譲ってくれる人をいつも探している。
また情報共有もガッツリなされている。
もはや、リストバンドのシェアが公式に認められているのか?というレベルだ。
現場では大きな声でリストバンドこの後誰々に渡して、などの会話が繰り広げられている。
SNS上では「遅い時間以降の前方が必要な方は連絡ください」などと堂々とやり取りされていることもある。
これは要するに、自分のお目当てのアイドルグループは出番が早く、高額な前方チケットを有効活用するべく、リストバンドを割安で譲渡しますよ、ということだ。
当然それは主催サイドで禁じられているのだが(立派な詐欺罪だし、前述のチケット偽造のミニ版みたいなものだ)、まるで公式に認められているかのごとく、非常にカジュアルに行われてしまっているのが現実だ。
その結果何が起こるかと言うと、前方チケットの価値低下だ。
最前列の良い場所は最前管理に独占されているうえに、チェックも甘く前方エリアにすらろくに金を払っていない者すら入場できる。
となれば、当然一般ファンが高額なチケット代を払うことは馬鹿馬鹿しくなる。
ライブによっては、最前列だけ最前管理によって埋まっていて、2列目以降はガラガラなどはざらにある。
(ただし逆に、この高額なはずの前方エリアに想定以上に人がごったがえしている時がある、それはどんな時か、また別の機会に告発しよう)
これは、最前管理行為とリスバン不正という犯罪によって前方エリアの価値が目減りしているからに他ならない。
実はこのリスバン不正が、現在の地下アイドル界隈をジワジワと苦しめているのかもしれない。
前方チケットはそのライブの収益の大部分を占める。
しかし
前方リスバン不正が多発する→前方チケットを買う人が少なくなる→値上げせざるを得ないので値上げ→さらに前方リスバン不正が起こる→前方チケットを買う人が少なくなる
というまさに悪循環に陥るからだ。
何故かは分からないのだが、地下アイドル現場は「現場に来る」こと(そして出来るだけ早く、会場がオープンする時間から居ること)こそが最も偉い、という謎の文化があり(逆に現場にあまり来ないやつは偉く無い、在宅オタクこそが一番害悪という風潮)、「犯罪を犯さない」ということには重きが全く置かれないのである。
課金レースと化した地下アイドルのフェス出場権やメインステージ争奪戦で行われる最前管理の犯罪、治安は最悪…出られないならぶっ潰してしまえば良い?
前述した「TIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)」や「@ JAM(@ JAM EXPO)」といった大型フェスに出場する権利、もしくはその中のメインステージを掛けたバトル形式のライブも、最前管理たちの犯罪の舞台だ。
TIFやアットジャムは、いわゆる地上アイドルも参戦する大型イベント。
普段地下アイドルは地下アイドルだけが出演するフェスにしか参戦できないことが多いため、こうしたイベントは地下アイドルにとって晴れ舞台中の晴れ舞台となる。
地下アイドルに馴染みの無い人に分かりやすく説明するなら、そこそこ有名なバンドやグループが紅白歌合戦に出場するくらいのノリなのだ。
TIFなどはそのこと(自らの権威性)をよくよく分かっていて、出場者にはご丁寧に額縁入りの賞状やパネルを贈呈するなど、非常に恩着せがましい。
そこを逆手に取って?近年はその出場権や、メインステージでのパフォーマンス権を掛けたイベントが開催されるようになった。
ミニTIFと銘打って、出場やステージの格付けのために動員を競わせたり、TIF全国選抜LIVEなども行われている。
今年行われた「TIF2024 メインステージ争奪LIVE」(2024年6月16日、会場はGARDEN 新木場FACTORY)で事件は起こった。
このライブは昼の1部、夜の2部、それぞれ4つの地下アイドルグループ(合計8グループ)がTIFのメインステージをかけて争う形式で行われた。
当日の会場入場時に投票券を渡され、ライブ終了後の投票時間に会場に設置された投票箱に投票するシンプルな形式での審査(これにプラスして、配信での審査も加算されるが)であったが、これが悲劇を招くこととなる。
さて、この日はあくまでも「予選」であり、各部の上位2グループが後日改めて決勝に進出するというものであった。
一応、体裁としては会場を訪れたファンが各グループのライブパフォーマンスを見て、一番良かったグループに投票する、ということになっている。
しかし、現実には最初から特定のグループに投票する意思を持った者しか会場には来ない。
実態は、いかにチケットを購入し、また会場まで来てくれる人を確保するかの「課金レース」である。
ただ金は用意出来たとしても、人員の確保は容易ではない。
なんせ数十人では足りず、数百人規模で、実際にはそのグループのファンでもなんでもない者を大量に確保しないといけないからだ。
バイト代を出すにしたって、膨大なものになってしまう。
そこで各グループの最前管理が主導し、大手最前管理グループへと人員の派遣を依頼することになる。
最前管理グループの上の者が言うことは絶対だから、来なかったり投票しなかったりといった裏切り行為をしない、従順な人員が大量に確保される。
勝負は、大手最前管理グループからどれだけ人員が派遣されるかによって決まってしまうのである。
「弱い」最前管理のグループは、始まる前にこうした課金レースの敗退が決定する。
しかし、こうして派遣されてくる大手最前管理グループには非常にガラの悪い連中が居る。
そのためだけに、来場を依頼されているような手合いである。
そしてTIF2024 メインステージ争奪LIVEの2部(夜の部)では、何と投票箱が物理的に破壊されるという事件が起こってしまったのだ。
その結果として、警察が出動する事態にまでなり、このTIFメインステージ争奪戦2部はイベントの途中中止に追い込まれてしまう。
投票は無効となり、出場していた4グループは全て不戦敗となった。
普通に威力業務妨害事件なのだが、最前管理グループは逃げおおせてしまった。
実はこの騒動には数々の遠因が存在する。
その一つが、このTIFメインステージ争奪戦に先駆けて行われた、アットジャムメインステージ争奪LIVE(5月25日 会場は ZeppDiverCity TOKYO)である。
このアットジャムメインステージ争奪でも、大手最前管理グループからの多数の人員派遣が行われた。
そして投票券を強奪する、投票行為を暴行で阻止しようとするなどの行為が行われたのである。
にわかには信じられないかもしれないが、加熱し過ぎた課金レースではこのようなことが普通に行われているのである。
TIFメインステージ争奪で投票箱が物理的に破壊されるという行為も、こうした事の延長線上にあった。
そもそも、大手最前管理グループからの派遣を取り付けた時点で、勝利グループは決まっているのだが、念には念を、ということなのだろうか。
あるいは逆転に一縷の望みをかけたのだろうか?
どちらにせよこうした横暴に、少数のセキュリティや、ほとんどがアルバイトで構成されたライブ運営スタッフでは、対処などしきれないのである。
こうしたことは、出場するアイドルまで周知している。
だから、来場するファンには身の安全を確保することや、投票券を強奪されないよう投票直前まで財布などにしまっておくように、あろうことか出場するアイドル自ら注意喚起がなされるほどだ。
出場するアイドルさえ何が起こるか知っているのだから、当然TIF運営も、当日何が起こるか想定できていたはずである。
だが実券である投票券を投票箱に投じさせるという、トラブルが発生してくださいと言わんばかりの方式を採用し、実際にこんな事件まで起こしてしまった。
直近のアットジャムメインステージ争奪から、およそ3週間あったのだから、いくらでも対策は出来たはずなのに。
例えば、もう通常のライブと同じように、入場時にお目当てグループを聞いてしまい、その数を集計する。
あるいは投票をチケットサイト経由で行うなどだ。
少なくとも、投票券を入場時に配って、ライブ終了後人でごったがえすカオスの中で投票箱に投票させるなどという形式を取らなければ、投票券の強奪や、投票を巡る暴力トラブルは激減する。
入場時に全て済ませてしまえば、起こりようがなかった事件だ。
これは、ライブを見てから投票するというしょうもない体裁を保とうとした運営の怠慢としか言いようがない。
懸命な地下アイドルファンの皆さんは、こうしたTIFやアットジャム関連の課金レースにはくれぐれも今後参加しないように。
来年こそは対策されるだろう…などと期待してはいけないのだ。
そもそも身の安全が確保されていないイベントなど、それはもうイベントとしての最低限の体裁を確保出来ていない。
これはライブハウスでモッシュやダイブなどで怪我をするといったこととは別次元の話である。もはや金に目がくらみ、来場者の安全すら確保しようとしないこれらのライブには行く価値が無いどころか、行ってはいけないのだ。
アットジャム衰退は最前管理の犯罪上等という横暴な振る舞いだけではなく、運営の怠慢が招いているとしか思えない。
最前管理の日常的な犯罪、BOTで買い占めちゃうぞ?
最前管理によって日常的に行われている犯罪行為の一つが、BOT買い占めである。
実はこれが最も一般ファンにとって迷惑な話かもしれない。
文字通り、自動購入BOTを利用して、発売されるチケットを買い占めてしまうのである。
BOT利用は、不正アクセス禁止法に違反する可能性がある犯罪行為である。
地下アイドルのライブチケットは、基本的には事前抽選制によって当選落選、さらには整理番号が決定される。
そのため、最前管理は横の繋がりで何枚、何十枚ものチケット枠で申し込みをして、何とか番号の良いチケットを確保しようと努めることになる。
しかし、抽選ではなく、先着順によるチケット発売も行われる。
基本的に、先着順となると最前列を確保できるような良い番号を一般ファンが入手することは非常に困難、いや無理ゲーとなる。
最前管理はBOTを使用してそれらを確保してしまうからである。
とあるチケットサイトは、発売直後一旦サイトが「落ちる」ほどだ。
そして復活する頃には、前方エリアのチケットは見事に完売しているor良番ではないクソ番しか残っていない、という光景が日常となっている。
これは非常に有名な話だが、とあるチケットサイトはBOT使用が容易なのだ。
最前管理が良番を確保したあと、一般ファンが入手できるのはカスみたいな番号だけ、ということもザラにある。
先日とある運営サイドから、このようなBOT使用の実態が公表された。
これは先着順ではなく、抽選制によるものだが、BOTが使用できる場面では躊躇なく、それも徹底した使用が行われている実態があらわになっている。
じゃあなぜ運営はそんなサイトを使うのかと言うと、手数料が安いからである。
近年サーバー代や人件費の高騰により、チケットサイトの手数料は常に上昇している。
10年ほど前は、一例であるがチケット9800円に対してシステム手数料210円など、ほとんど気にならなかった手数料も、近年では600円から1000円近く掛かってしまうことも増えた。
9800円のチケットが実質11000円ということはよくある。
このうえBOT対策を現時点で完璧に行うとすると、チケットを流通させる手数料はさらに大幅に値上げされてしまうだろう。
現時点でもこの手数料の高額には怨嗟の声が挙がるほどだ。
また小規模な運営なら、上記のように運営のメインとなる者がサービス残業で手作業でBOTを削ぎ落とすことも出来るだろうが、ただでさえ過重労働な各地下アイドルのマネージャーにそれをやらせれば過労死しかねない。
ただそのうえで、数多の手間を承知で対策を行い、またその過程を公表した運営には拍手を送りたい。
最前管理が理不尽に振る舞えるのは、こうした「諦め」の堆積によるものなのだから。
早くAIがBOTを効率良く弾ける時代が来て欲しいものだ。
なぜ最前管理は犯罪者集団となってしまうのか?運営との共犯関係と封建主義的な上下関係、諦めの連鎖…最悪闇バイトに繋がる?
さて、何故最前管理は犯罪者集団となってしまうのだろうか?
理由としてはさまざまある。
一つは、最前管理をするには非常にお金が掛かるから。
これが最大の理由でもある。
とにかく地下アイドルはライブ数が多い。
前述した通り、前方チケットの代金は高額で、その全てを正規に購入すると月の支出は最低でも十数万円から20万円ほどにはなるだろう(チケット自体に加えて、前述の手数料やこれも高額化しているドリンクチケット代も掛かる)。
これが最低ラインなのだから、この上どんどん経費はかさむ。
毎回毎回当然ながら特典会(2ショットチェキor写メ撮影会のこと)もある。
これは1回1500円〜3000円である。
大規模かつ高額なフェスが続く夏場は、さらに膨れ上がる。
遠征や、それにかかる交通費も時に上乗せされる。
最前管理のほとんどは常に金欠で、少しでも金を浮かす方法を考えている。
何らかの犯罪行為をしなければ、最前管理は難しいのかもしれない。
勝手に最前管理をしておいて、何なんだこいつら、という話ではあるが。
そして、犯罪行為のハードルが異常に低い。
おそらくたった1人で地下アイドルのファンをやっているなら、不正入場なんてしない人たちがほとんどなのだが(そもそもリストバンドを譲ってもらえないし、チケット偽造のノウハウを共有出来ない)、集団となると集団心理が悪い方向に働いてしまう。
こういうことは大なり小なり誰しも経験があるだろう。
何よりも、ライブ主催者やアイドル運営も彼らの不正行為を半ば黙認している。
その証拠に、運悪く不正入場が見つかってしまったとしても、リストバンド不正くらいなら警察沙汰どころか、出入り禁止にすらならないのだ。
そもそもリストバンドのチェックをしっかり行っているライブなどほとんどない。
多くの場合、前方エリア入口にたった一人係員が居るだけ、リストバンドをチラ見するだけだ。
よほど乱暴に破られたリストバンドでない限り、これも手法が広く共有されている「リストバンドの回し方」を見破れるわけもないし、そもそも見破る気もないのだろう。
酷いものになると、前方リストバンドを手渡しして、しっかりハマっていないものでも入場させてしまったりする。
これはもう万引きし放題の店のようなものだ。
こうした中で自らを律するのは難しいのだろう。
もちろん運営サイドとしても「やるにしても、ほどほどにやれよ」と言うことで、今回の偽造チケットなどやり過ぎた場合にはペナルティーを課すが、そこまでいかない場合は見逃してしまう。
実は前回書いたサコフェス事件に限らず、地下アイドルの現場では度々深刻な暴力事件は起きているが、それが大して問題になってはいない。
ため息が出る話だが、「やり過ぎて大ごとにならなければ、見逃す」というのが最前管理と各種運営の協定のようなものなのだ。
いわば、運営と最前管理は運命共同体。
それは前回サコフェス事件で書いたように、最前管理は重要ライブともなるとチケットを買い占め、非公式なチケット代理店のようにふるまってくれる得意先であり、何よりも売り上げに多大な貢献をしてくれるからである。
仮に最前管理を徹底的に排除するとなると、どのフェス主催者もアイドル運営も運営が立ちいかなくなる、と少なくとも考えている。
そして実際対処しようと思えば、システム面の増強、スタッフの増員を余儀なくされ、さらに金がかかる。
最前管理を排除すると金が入ってこなくなり、排除するにも金がかかる。
ほとんどの運営に、最前管理を排除するインセンティブが無いのである。
これも「諦め」の構図のひとつだ。
また最前管理グループは強固な上下関係が存在し、いわゆる下っ端は上の命令には絶対に従わなければならない。
これはほぼ「洗脳」なのだが、地下アイドル現場のあまりの非日常性故に、上の命令は絶対という謎の体系が強固に出来上がっている。
上の命令通りにできなかった結果、ぶん殴られても、蹴られても、それは「仕方ない」といった風習なのだ。
今時珍しい封建主義的なと言うか、体育会的なというか…。
日大アメフト部ではないが、閉鎖的な社会では人間は動物としてそのようになってしまう生き物なのかもしれない。
リストバンドいくつ持ってこい、と言われたら、とりあえず動かないといけない。
下手に正義感をもって異論を挟む、密告をするなどをした者は、様々な方法で「排除」される。
最前管理が最後に使うのはいつも暴力である。
表面上どれだけ仲の良い、アイドルに熱心なだけの集団に見えても、凶暴性と反モラルを抑えることは出来ない者達なのだ。
そうでなければ、最前管理を続けることは出来ない。
一見気の良い兄ちゃんだとか、面白い子と思っていても、いざとなれば牙を剥き出しにしてくる。
それを知らないで安易に近付いてしまう人も多い。
そして最前管理グループの一部は、その金の稼ぎ方からして、かなりタチの悪い連中だ。
私の知り合いのとあるグループの元ファンは、元々は両親が厳格な家庭で育った地方出身者だった。
現場で顔を合わせるうちに徐々に最前管理グループと親しくなり、最前管理そのものではないが、準最前管理的な存在となった。
共に行動するうちに、逆らえず、いや毒されてむしろ積極的に、とある重大なルール違反(厳密には犯罪行為)を犯してそのグループから出入り禁止となってしまった。
そしてそのことを知った親からは縁を切られてしまった。
ただ出入り禁止くらいなら、まだ良い。
今回の偽造事件のように犯罪者として逮捕され、顔と名前を世間に晒されたわけではないのだから。
嫌とは言えないこうした上下関係が、元々は純朴な少年少女だったアイドルファンを最終的にはパトカーに乗せてしまうことまである。
今回のチケット偽造はおそらく不起訴になるだろうが、私はさらなる重大犯罪に最前管理の下っ端たちが加担させられてしまうことを危惧している。
それは地下アイドル界隈内でもそうだし、地下アイドル界隈の外で、お金を稼ぐ手段として何かが行われてしまうこと(闇バイト)も含む。
実際最近逮捕された闇バイトの準備行為などは、最前管理グループの一部の「稼ぎ方」にかなり類似性があるのだ。
地下アイドルを熱心に応援していて、お金が尽き、そうした行為に加担する…そして闇バイトとして検挙されてしまう。
そんな報道があってもなにも驚かない。
イリーガルなことを行うハードルが限りなく低くなった弛緩した空気には、かなり危険な兆候を感じている。
また最近地下アイドル界隈に増えてきた中国人系のファンの人達との深刻なトラブルも懸念されるところだ。
(彼らは良い意味でも悪い意味でも、最前管理をよく分かっていないというところも、含めて)
「最前管理」の行動原理、現場に漂う「諦め」…地下アイドルは最前管理によって滅びる?対策を強める大手運営、イタチごっこは今日も続く
さて最前管理の行動原理的なところにも触れておこうと思う。
最前管理の行動原理とは、つまるところ「牛耳る」ことにこそある。
元々アイドルファンというのは、いつの時代も、自分の「強さ」を誇示しようとする存在だった。
その反対が「弱い」という自嘲である。
俺はアイドルに好かれている(「推され」)、あまり好かれていない、嫌われている(「干され」)ということに始まり、AKB総選挙では1票1000円の投票を何千票投じたと誇示したり。
基本的には独善的と言うか、もはやそこにはアイドル本人がどう思うか?といったコミュニケーション的なものを放棄した、一方的なオスの縄張り争い的な要素が強い概念だ。
そして地下アイドルは、地上アイドルと比べて小規模であるが故に、何かを独占することが出来てしまいやすく、その結果全てを独占することが最前管理の行動原理となったふしがある。
最前列の最も良い場所、そしてアイドルからのレス、前方チケット、良番…その全てを独占してしまえば、それに勝る「強さ」は無い、という発想である。
しかし、良い場所で見れることが保証されるはずが、かえって「絶対に良い場所では見れない」となってしまった前方チケットのように、最前管理に独占された現場は荒廃していく。
その象徴が、最前管理しかいない前方エリアだったりする。
基本的に、その規模や人気に見合わない、最前管理が多過ぎるグループというのはどんどんファンが居なくなっていく。
その現場は、実質的に最前管理のものになってしまうのだから、当然である。
これを、最前管理たちは「お前たちが弱いからいけない」と正当化するわけだが、その反面、彼らは予定調和が乱れ、少しでもことが上手く運ばないと(たまたま良番が取れなかった、最前センターを譲ってもらえなかった、アイドルからレスが来なかった等)途端に喚き散らす。
他ファンだろうがアイドル本人だろうが、徹底的に攻撃しだす。
最悪、殴る。
本当に殴るし、物は壊される。
アイドルは特典会中恫喝され、過呼吸になり、退場し、最悪活動休止する。
そこに強者としての余裕は、まったく無い。
彼ら自身もまた、強さを装い、弱さを隠しているだけ、そんな哀しき存在なのである。
さて、基本的には最前管理以外の一般ファンも、アイドル・フェス運営も、最前管理の存在については半ば黙認、諦めているというのが現実である。
運命共同体の運営はともかく、一般ファンは犯罪すらいとわない最前管理とわざわざ揉めても何ら得することはない。
最前管理グループに属するような最前管理は、どれだけ良い顔をしていても最後は暴力、なのだから。
最前管理が幅を利かせている現場から撤退するなり、彼らの行動を容認しつつひっそりとファンを続けるしか選択肢はない。
そして基本的には彼ら最前管理とはなるべく関わらない方が良い。
最前管理は最前管理だけで行動することはなく、その取り巻き(準最前管理)をそのアイドルグループごとに作っていく。
基本的には、そのアイドルグループの最大のファン集団は、最前管理のグループとなる。
ここでは珍しく?最初はギブアンドテイクによって関係が構築されていく。
例えば、最前管理が買い占めた良番チケットの中から最前管理が上澄みを取ったものを譲る。
ファンなら誰もが入りたい公演チケット(生誕や卒業公演)を譲る。
またその際に最前列(最前中央はもちろんダメ)に入っても邪魔をしない、優先的に枠の余った最前列に入れてあげる、などのメリットを提示する。
その他様々なメリットを提示し、代わりに最前管理が有利となる条件も一般ファンから引き出していく。
こうして最前管理→準最前管理→準最前管理に近い一般ファン→一般ファンのような構図が出来上がっていく。
最初は最前管理を敵視しているような人もコロっと「最前管理とは仲良くしたほうが良いよ」と染まってしまうことも多い。
ここらへんはバランス感覚なのだが、あからさまに最前管理と敵対する必要はないし(下手をすると暴力で「排除」される)、かと言って積極的に仲良くする必要もない。
そんなちょうど良いポジションをキープするのが、最善策ではないだろうか。
基本的に現場でファン同士馴れ合い過ぎると、上記のような構造に巻き込まれていく。
地下アイドルの世界はあまりに狭いからだ。
巻き込まれてから、上手く抜け出そうとするのは、とても難しい。
最前管理に関わって出禁になってしまったような人は、最初はそんなつもりは無かった、と口を揃えるのである。
あなたが現場で「あの人最近よく見かけるな」と他のファンから思われるようになる頃、最前管理の手下のようなやつから声をかけられるかもしれない。
その時は先人たちの失敗を教訓にして欲しい。
ここまで述べてきたとおり現場は、一般ファンも運営も、アイドル本人たちすらも、最前管理にまつわる全てを諦めているのである。
この諦めの構図が、さらに最前管理を増長させているのだが、最近は少し度が過ぎているように思う。
この記事で解説してきたとおり、近年最前管理の犯罪行為は凶暴化している。
結果現場は荒廃しており、前方エリアには最前管理と準最前管理しかいない。
一般の熱心なファンたちは後方に居る、という構図がより鮮明化してきた。
そのグループのファンではない、ただの最前管理グループの者達が見たくもないライブを最前列でへばり付いて見ている。
なんて空虚な光景だろうか。
そこには最前列を維持することだけに執着した、縄張り意識だけが固着している。
一方でこの状況を憂いたのか、一部運営は最前管理対策を強めている。
最大手グループは、身分証確認を徹底することを表明した。
入場時はもちろん、入場後も身分証確認を徹底することで、座席の交換をさせず、最前管理行為を出来なくする。
さらにこのグループは、セキュリティの数も明らかに増えた。
目に見えて最前管理の影響力が身を潜めているのを感じる。
最前管理は、そのグループが成功し、上に行くと自分が偉くなったように振る舞う。
自分たちのやっていることは、グループの成功を妨げるような事だし、成功を願ってもいないのだが。
グループが大成功したことで、最前管理が壊滅するというのは、皮肉だが痛快でもある。
もちろんこれは、最大手であるがゆえに、資金があるから出来ることとも言える。
そもそも指定席でないと効果も薄い。
正直地下アイドルで身分証チェックなどは、息苦しいのも事実だ。
気軽に行けて、サッと入ってライブを見れる。
それが地上アイドルにはない、地下アイドルの魅力だった。
だがそうも言っていられないのが現状だ。
あまりにも「治安」というものにコストをかけようとしなかったツケを、地下アイドル界隈全体が払わされている。
最前管理との共犯関係から脱しようとする運営の姿勢は、素直に称賛したい。
そして最前管理が強いグループが軒並み解散や活動休止、現体制終了に追い込まれているが、これはある意味であるべき淘汰なのかもしれない。
私もこんなことは言いたくはない、でもそれが現実なのだ。
フェスという枠組みで見ても、個人的にはアットジャムは何かを大きく改善しない限り今後も苦しくなっていくと思うし、アットジャムほどではないにせよTIFもどうなるか分からない。
メインステージ争奪戦という、関連ライブとはいえ、極度に治安の悪化した、参加者が身の危険を感じるようなライブを開催してしまったことには猛省を求めたい。
前回も述べたが、私達一般ファンも最前管理からチケットを購入しない。
たとえ行きたいライブが売り切れていても。
そうした積み重ねが大切なのだ。
地下アイドル現場には、あまりにも諦めが積み重なり過ぎている。