見出し画像

金春湯は2007年の改装でどう変わったのか


2022年の画像ですが、2007年以前から比べても、大きくは変わっていません。

改装のコンセプト

2007年の改装は、タイルの下に埋め込まれている配管を掘り起こしてやり直さなければならなくなったためです。つまり配管に穴が開いてしまい、営業が出来なくなり、今後も金春湯を続けていくためには、どうしても大掛かりな工事が必要になったためなのです。
そのころ金春湯は、まだまだお客さんはたくさん来ていただいてたのですが、業界全体としても少しづつ利用者が減り続けていた時期でした。

「どうせ大工事になるのなら、できる限り変えてしまおう」と考えました。
もともと昭和62年にこの建物が立った時は、店を開ければお客さんが満杯で、湯舟よりカランとシャワーの数が足りない状態だったのです。しかし2007年当時といえば、37個のカランは半分以上空いており湯舟にも2~3人しか浸かっていないというのが通常の風景でした。

それならば、大人数を詰め込んで捌いていくざわざわした銭湯よりも、よりゆったりできリラックスできる癒し系銭湯を目指そう。それが2007年の改装のコンセプトでした。


方針

1.広くする
2.シンプルにする
3.静かにする
4.ぼーっとできる
・・・こんな感じでした。あくまでも「こんな感じ」。

1.広くする

畳になった休憩所、今はマッサージチェアーはない

まず、玄関を入ってすぐ。左手に休憩所があるのは変わりありませんが、2007年以前は休憩所には半分仕切りがあり、一段高くなっていました。そこはカーペット敷きでソファーがあり、マッサージチェアーもありました。天井からはシャンデリアが垂れ下がっており、地震の際は「落ちてこないか」心配でした。
これを2007年の改装で、仕切りをなくし段差もなくし、畳敷きの休憩室に変えました。畳敷きにすると、ソファーよりたくさんの方が休めます。画像にはマッサージチェアーが映っていますが、現在はありません。シャンデリアも取り除き、天井の埋め込みライトだけにしました。

脱衣場への入り口ですが改装前は、外から脱衣場内が見えないようにするために、Uの字に曲がった通路を通て行くようになったいました。それを取り除き、1枚の仕切りと引き戸(コロナの影響で今は開けてある)と大き目の暖簾で中が見えないようにしている。
これで2㎡くらい広くなりました。


新しくなった脱衣場、現在は真ん中のベンチが畳になっています

かつて脱衣場には、真ん中に大きな島状のロッカーがありました。これを含めるとロッカー数は60~70くらいあったのです。どう考えてもこんなに要らない。というわけで、真ん中の島状のロッカーはなくし、その代わり木のベンチを置きました。


数は減ったが広くなったカラン回り

洗い場はカランの数が半分になりました。4列で38個あったカランを2列で18個に減らし、しかもカランとカランの間を15㎝くらい広げました。さすがにカランを18個までに減らすのは勇気がいりましたが、にぎわっている日帰り温泉施設などに行ってみても、だいたいそれくらいしかないんです。その代わりみんなゆっくりお湯に浸かっている。金春湯もそういう感じになりたいと思ってのことです。体を洗うことよりお湯やサウナにゆっくり入ってほしいということです。


浴槽は、窓側のカランをなくした分、広くなりました。湯舟は二つあるので、熱い湯とぬるめの湯に分けてみました。しかも念願だった水風呂が出来ました。これだけ広くすると、お湯の仕込みに時間がかかるので、かつてあった深湯はなくし、皆同じ深さにしました。

このように物理的広さを確保したのですが、心理的に広く感じる工夫もしました。(効果は?)
というのは、皆さん、浴室のタイルの色について気が付いていますか?まあ気が付かないのが当たり前だと思うんですが、流し場のタイルがピンクっぽくて、湯舟のタイルは水色っぽいというのにはお気づきですよね。これはこれで意味があるのです。あとで説明します。問題はその上の方。グレーのタイルです。横の広い面は明るめのグレー。手前と奥の狭い面には濃い目のグレーにしてみました。これは色彩心理的により遠く、深く見えるはずなのです。効果があったかどうかよくわからないですけど。


2.シンプルにする

入ってすぐの休憩所の仕切りをなくし畳にしたこと自体、シンプルにすることに従った改装ですが、その上にあったシャンデリアを取り除いたことで、ぐっとシンプルになりました。もう一つ、休憩所にある真ん中の邪魔な鉄筋柱。さすがにこれを取り除くことはできない。でも以前、この柱の3面は鏡張りでした。私はどうもこの鏡が目障りで仕方なかった。この際この鏡をほかの壁と同じ壁紙で覆ってしまいました。

脱衣場への入り口、脱衣場、流し場と湯舟のレイアウトの変更は、「広くする」のと「シンプルにする」のと同義でした。ただ、良かったのか悪かったのか、浴室のタイル画を埋めてしまったのはやりすぎでしたでしょうか。以前金春湯には夕日の海に浮かぶ帆船のタイル画があったのですが、埋めてしまいました。このタイル画もかなり金額が張るものだったらしいのですが、何となくガチャガチャしているような感じがして埋めてしまいました。その代わり「いまだ満ちず。」という意味を込めて上弦の月のオブジェを付けました。


3.静かにする

これはあまり実現できなかったテーマです。私が考えていたのは、音もそうなのですが、「静かな水面」を実現したかったのです。これは私も好みなのですが、あまりブクブクジャバジャバした湯舟より、水面が鏡のような「静かな」お湯につかりたいという希望があったためです。しかし温度や衛生面での管理を考えると何かしらお湯をかき回す方が、より良い水質を保ちやすいということで、あまり理想に近づきませんでした。

温湯の浴槽はジェットバス



4.ぼーっとできるようにする

もちろん、休憩室や脱衣場でもそうなのですが、一番は湯船につかりながら「ぼーっとして」ほしかったのです。2007年の改装以前は、湯舟につかりながら、洗い場が丸見えでした。特に女湯では、湯舟に使っていながら洗い場で体を洗っている人の一挙手一投足を気にして監視している人が多く、それが原因でいざこざが良くあったものでした。そんなことは気にせず、ぼーっと湯舟に浸かってほしいものだと思い、湯舟と洗い場を壁で区切ってしまいました。
これが効果てきめん。それ以来、ほとんど女湯のいざこざがほとんどなくなりました。お互いにストレスなくリラックスして帰ってほしいですもの。

さて、次はタイルの色です。前述のグレーの壁は、奥行きを深く見せるためでしたが、洗い場の赤系、湯舟の青系には、色彩心理学では、赤系は長居がしにくく、青系は長居がしやすい色だそうで、つまりあまり洗うのに時間をかけずに、お湯の中でゆっくりしてくださいという色使いにしてみました。効果があったのかどうかはわかりませんが、湯舟の方は私が入っていても落ち着く感じがします。自画自賛かな。

色といえば、休憩所や脱衣場の壁紙の色も「サーモンピンク」。心理的に落ち着く色と言われています。なんか洗い場の色に同じような色を採用したのと矛盾するような気もするのですが。


こんな感じですが、上手にできたでしょうか?目的はどの程度達成できたのでしょうか。設備や建築、デザインなど、まったくの素人が「こうしたい」というだけで2007年の改装が進みました。


次回は「銭湯に対する思い」です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?