ブリリアマーレ有明
「あのタワーマンション、私の一生の買い物だったわ。」
そう、あの東京湾を一望できるブリリアマーレ有明の27階、1LDK。煌びやかな夜景に酔いしれながら、私は何度もそう自画自賛した。でも、高層階からの眺めは、同時に私の人生を見下ろしているような、そんな感覚にも苛まれていた。
高給取りの彼との結婚を機に、私はこのマンションを購入した。彼の転勤で海外へ行くことになり、私一人でこの広すぎる部屋に住むことになったのだ。最初は寂しかったけれど、次第にこのマンションは私だけの城になった。
しかし、彼が錦糸町のキャバクラ嬢と不倫していることが発覚し、私の心は無茶苦茶になった。離婚を決意し、マンションを売却することにした。得た利益を暗号資産に投資し、大儲けすることができた。
ドバイ行きを決めたのは、衝動的な決断だった。砂漠の真ん中にそびえ立つ摩天楼、そして、自由なライフスタイルに惹かれた。
ブリリアマーレ有明の鍵を返却し、スーツケース一つでドバイへと旅立った。新しい土地での生活は、言葉の壁や文化の違いに戸惑うこともあったけれど、それ以上に、自由で開放的な空気に心が躍った。
ドバイでの新しい生活の中で、私は人工授精を通じて男の子を授かることを決意した。しかし、その男の子が成長するにつれて、彼の顔立ちや仕草が、かつての夫にそっくりであることに気づいた。毎日その顔を見るたびに、過去の記憶が蘇ることもあったが、それでも私は新しい人生を歩む決意を固めた。
高層階からの眺めは、もう必要ない。どこまでも続く砂漠の水平線を見つめながら、私は新しい自分を見つける旅に出た。