[本]「つなぐ」「こえる」「動く」の方法論 (科学技術社会論の挑戦 3)1章
書誌情報
藤垣, 裕子, 小林, 傳司, & 塚原, 修一. (出版年). つなぐ、こえる、動くの方法論. 科学技術社会論の挑戦 3. 東京大学出版会.
著者情報
調 麻佐志さんは東工大の先生で科学計量学×STSを掲げているので、私が目指すところにかなり近い先生です。もとは東大の総合文化の広域システムなので教養学部の私と本当に近いです。
↓は以前紹介した標葉先生との共同の調査になっています。
https://www.nistep.go.jp/wp/wp-content/uploads/NISTEP-NOTE-No3.pdf
リサーチマップはあまり更新していない?
要約
科学計量学(scientometrics)の構成要素として量・質・類似性を挙げ、それらを批判的に解説した後に、その例としてMartinとIrvineの研究が紹介される。
方法論に関しては控えめで、STSらしく科学計量学万歳という論調ではない。EBPsの高まりの中で「政治のための科学」としての活用が期待されているが、大学ランキングやIFを無批判に受け入れる「数字の独り歩き」といった現状や、科学計量学の代理変数の限界を把握しているはずの当該の学者は、その結果の責任についても自覚的であるべきだとする。つまり、科学計量学それ自体と、その応用について批判的であった
第1章 科学計量学
・科学計量学の構成概念:成果の量・質(インパクト)・類似性
・量:論文の「本数」でいいのか?という疑念
・質(インパクト):被引用数で表象するが、さすがに質の代理変数とはいえないため、インパクトにとどまる。それを差し引いても、引用の動機・理由・解釈・意義には疑義が残る。
*多分、有名すぎて引用されない論文や、批判のために引用されるものもあるから?
・類似性:当初は共引用論文(=論文Aと論文Bが論文Cを引用していたら近い)
の指標が使われていた。現在は他の指標も使うし、ベクトル化したコサイン類似度が主流。以前紹介した論文↓
・科学史家プライス(1963)が創始者①メタ科学としてとらえた②批判的であった。←STS由来?
・ガーフィールド:インパクトファクターとSCIの人
・SEIの目的はあくまでモニタリングで、not モデル
・MartinとIrvine(1983):
①モデル作成:
②代理変数:科学的成果の代理変数として被引用数を採用したが、
・代理の限界の自覚:「質」ではなくあくまでインパクトとした
・誤差の最小化:個人の論文ではなくループ単位にしたり、複数の変数を採用した→収束したら評価可能?(←厳しすぎる気がする)
・「政策のための科学」:どこに投資すべきか like 計量経済学
・大学ランキングの恣意性→しかし、KPIに使われる
・IFはガーフィールド自身も評価に使うのには否定的;分野/ジャーナル間の引用慣行の違い