子どもたちとの関わり方/Z世代や発達障がい児とどう向き合うか


1.子どもとの関係構築


私自身もそうであり、多くの指導者が頭を悩ませている問題が、子どもたちが話を聞いてくれないということである。

集合してから各メニュー開始までに数十分かかってしまう…
ミーティングでの話やピッチでの指示・指導が聞き流されてしまう…
なんてことはざらにあった。

話を聞いてくれないことに腹が立ち、つい「やる気がないなら帰っていいよ」などと突き放してしまうような発言をしたことも少なくなかった。

恐らく、私自身がこの10年間で最も頭を悩ませたテーマの一つだと思う。

結論として、
・子どもたちとの信頼関係を築く
・子どもの立場に立って接する

という至って当たり前の答えにたどり着いた。

子どもと大人、選手と指導者ではなく一人の人間として接することが重要である。

子どもはガミガミ怒れば怒るほど「またなんか言ってるわ」と聞き流す癖がついてしまい、逆に話を聞かない子になってしまう。

周りに対してリスペクトに欠ける行動(暴言や暴力)があった際は厳しく叱ることも大切だが、基本的には説教口調ではなく何が良くなくて、なぜ良くないのかを理解してもらえるよう、論理的に語りかけるようにしている。

また、ピッチ内でのコーチングスキルや知識・技術面で信頼してもらうことも大切だが、ピッチ外での他愛もない会話や遊びを通して「この人、悪い人じゃないな」と思ってもらうことも必要である。

"人間が動くときは頭ではなく心"

時には話を聞いてもらうため、惹きつけるためのテクニックも必要だが、結局のところ人が動くときは頭ではなく感情であり、まずは選手一人一人の感情や性格に寄り添った関わり方をする必要があると考えている。

大人でも仕事や私生活で、「これしてあげた方が親切だし喜ぶだろうな」と思っても「この人にはそこまでしなくていいや」「なんか頼み方が腹立つから断ろう」と思った経験は少なからず一度や二度はあるのではないだろうか。

同じ内容でも誰に言われるかで響き方が違った、なんてこともあるだろう。

子どもたちも人間なので「正しいとわかっていてもこの人の言うことは聞きたくない」と思うこともある。
また、気分が乗らない日もあれば、兄弟組や保護者がサッカー経験者という理由で半ば強制的に入部してきた為、サッカーに興味がない子もいる。
ワンオペで十数人を見ている指導者からすれば、一人のためにそこまで時間を割けないと言いたくなるだろうが、そんな子達に対しては、まずは話を聞いてあげてほしい。

子ども同士の嫌なことを言われた・追い抜かれたなどのいざこざはよくあるが、子どもにとっては重要な事であり、大きなトラブルに発展する可能性もある為、指導者側が勝手に「そんな事か」と決めつけて適当にあしらわずにきちんと話を聞いてあげて解決策を提案するなど、子ども目線で対処してあげる必要があると考えている。

2.定期的な面談の実施


担当カテゴリーの選手たちとは月1回15分程度の面談を設けており、ピッチ内外の話を聞かせてもらっている。

自信がなく消極的なプレーが多い選手と話しをしてみると、保護者からの過度な圧が怖くて力を出しきれないという思いがけない角度からの問題が発覚することもあった。

チーム内のみならず、プライベートがうまく行っていないことがプレーに影響することも多々ある。
当然、指導者が全てをケアすることは困難だが、話を聞いてあげるなど心の拠り所となることでプレーの質やモチベーションの向上にも繋がると考えている。

こちらが気づいていない選手間の関係性や上下関係みたいなものも見えてきたり、普段ピッチでは伝えきれないこちらの想いを伝えることでチームビルディングにも良い影響をもたらすことが出来る。

3.Z世代との関わり方について


最近、よく耳にする“Z世代“(1996年〜2015年生まれ)との関わり方については、育成のプロである黒田剛監督(現町田ゼルビア・元青森山田高校)が以下のように語っている。

いくつかある感情のなかでも特に「悲劇感」は、人の心や行動を強く動かす要素のひとつです。

チームメートから自分が一員として認められない、自分は仲間から信頼されない、となっている現状が悲劇感となり、「二度とこんなミスはできない」「仲間から信頼されたい」という感覚になり頑張ろうとします。彼の心には火がつき、次は絶対にやらなきゃならないというモチベーションに変わるわけです。嫌われたくないし、認められたいから。

黒田剛(町田ゼルビア監督)

Z世代は「評価されたい」という気持ちと同時に「チームの一員として認められない」ということに強烈な焦りを感じる世代です。ですから激しく叱ったり、パワハラのような態度をとるのではなく、そういったZ世代ならではの感情コントロールの方法を駆使することが適切な指導に繋がります。

黒田剛(町田ゼルビア監督)


育成だけでなく仕事でも応用できるものであり、大変興味深く、勉強になる為、ぜひ読んでいいただきたい。


4.発達障がい児やメンタルヘルスとの向き合い方


先日、小中学生の11人に1人の割合が発達障がい、もしくはグレーゾーン(発達障がい疑い)であると発表された。

実際、私が指導者を始めた10年前から現在まで、高い割合で一学年に一人は発達障がいや小児うつなど、こころの病を持っていたりグレーゾーンと呼ばれる分類の子どもがいる。

学校に行けずホームスクーリングを選択している子や、大事な試合前は強い緊張感と恐怖心があり、家から出られない子もいる。

中には、事前に保護者が発達障がいであることを伝えてくださったり、大変有り難いことにできる限り保護者の方がそばにいてくれることもある。
しかし、中々言い出しづらかったり、そもそも保護者が症状に気づいていないなど、こちらとしても判断と対応が難しい場合も少なくない。

もちろん一つの個性であり、変に病人扱いや腫れ物扱いをしたり、周りが不満を持つような特別扱いをすることは正解ではないと思う。

あくまで平等に、ただ、その子に合わせた関わりや支援をするというのがベストではないかと考える。

「例えば、おなかが痛いと言っているのに、おなかの痛み止めの薬を出さずに肺炎の薬を出したら、全然違う効果になる。発達支援も同じで、本来ここ(本人の課題)に支援をしていかないといけない」

Ecold(エコルド)代表 北村耕太郎さん


こころの問題はなんとなくタブーとされているが、実際問題として増えてきており、大人がしっかりと目を向けるべき事案である。

メンタルヘルスを「心が弱い」という時代はとっくに過ぎており、精神論や根性論で乗り越えられる問題ではない事を理解することが大切だ。

また、指導者や保護者などの大人もそうだが、チームメイトである子どもたちにも理解を促す必要があり、チーム全体で取り組んでいく必要がある。


なお、以下が発達障がい児への対応方法の一例である。

  • 伝えるときは簡潔に、直接的に、具体的に、論理的に

  • 見通しを明確にし、変更する場合は事前に連絡する

  • 本人の気持ちを否定せずにメリットや目的、意味を伝える

  • 注意を引き付けてから伝える

  • タイムリーにフィードバック(指摘・注意する/褒める)する

  • 否定や叱責・指摘より、肯定語で伝える

  • ゆっくり、やさしく、ていねいに本人に話しかける

  • 話の内容は、はっきり、短く、具体的に話す

  • 本人の年齢に応じた話しかけをする

  • 余裕を持って本人の思いを聞く

参照:https://happy-terrace.com/column_data/how_to_communicate/


上で述べたように、子どもたちの性格や感情に寄り添った関わり方はマストとなる。
リーグ戦やカップ戦のレギュレーションや指導者自身・チームの評価を気にするあまり目先の勝利に目を向けられてしまいがちではあるが、大人のエゴで勝利至上主義にならず、ベンチメンバーのフォローも行いながら、全員が分け隔てなくサッカーを楽しめる環境を提供してくれるチームがさらに増えていくことを切に願っている。

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