『富士五湖奇譚呻母村』組み上がらないパズル
山梨県にあると噂される行っては行けない集落
その名も呻母村(うめくぼむら)
この映画は、うめくぼ村を取材する3人の人物によるオムニバス形式で描かれる。
アマゾンプライムレビュー評価:星1.5
レビュー数:79
最初に申し上げておくが、この映画ではそれっぽい霊現象も起こらないし
うめくぼ村が何かもわからないし、村に閉じ込められたりもしない。
突如白装束を着た女性があらわれて、人を突き飛ばしたり追いかけたりする。
複雑に絡み合わない3つの物語は、一体どんな結末を迎えるのか。
最初に登場するのは
謎の人形を盗んで行方不明になる青年、おなりい。動画配信者である。
彼は動画映えのために、うめくぼ村にあった人形を盗む。
盗んだ際に白装束の女に追いかけれたが、何とか車で逃げることに成功する。
だが後日、彼の先輩が彼を家訪ねると、おなりいはいない。先輩が合鍵を使って部屋に入るも、生活していた形跡はあるも姿を消している。おなりいは、この日を境に失踪することに
2つめのエピソードは霊能力者を名乗る怪しげなおじさん、皆川。
エピソードの冒頭でオカルト番組の取材を受け、かつて有名だったらしいことがわかる。今は不況で仕事もなく、細々と除霊活動をしているようだ。番組のクルーから除霊活動をしている様子を撮影したいと言われ、承諾して現場に向かう。除霊している様子を撮影するクルーの一行。無事に作業も完了し、報酬を受け取る皆川。だが、お金を受け取るシーンを撮られたことで「こんなところを撮るな!」と急に怒り出す皆川なのであった。
3つめのエピソードは、〈ダークツーリスト〉と名乗るミフユ。
〈ダークツーリスト〉なる謎の職業を自称しているが、平たく言えば心霊スポットを巡る動画配信者・・・だと思われる。ミフユは、うめくぼ村があるとされる山に一人突撃取材を敢行する。そうして取材の途中、うめくぼ村を探すミフユだが・・唐突に現れた白装束の女性に突き飛ばされ、気を失うミフユ。目覚めると周囲誰もおらず足が折れ曲がっており、出血している。山奥に一人取り残され歩けない状況。ケガによる遭難で命の危機を迎えるのであった。
絶望的な状況の中、ひとりカメラの前で喚き始めるミユフ。「帰りたい」「こんなところ来たくなかった」と支離滅裂に叫ぶ。その様は、人間が持っている死ぬことへの根源的な恐怖を思い出させる。圧巻の独白である。この映画で一番恐怖を感じるポイントなので、ぜひこのエピソードだけでも見て欲しい。
ここしかない、唯一の見どころである。
そして3つの物語が語られた後、そして物語は最後のエピソードを迎える。
ラストは、遭難から生還したミユフの独白で締められる。
遭難時のケガのせいか、片脚が無いミユフ。
詳細不明だが、不気味な雰囲気を感じさせる。
ミユフは語る。
「(白装束の)女の人に追いかけられて怖かった」
「けど、またダークツーリズムしたいなあ」と。
このシーン、文字で起こすと意味不明である。
だが映像で見ると、遭難から生還した片脚の女性が「また行きたい」と不気味な
笑顔で微笑むシーンであり、視聴者に何とも言えない不安感を与えてくる。
以上で映画の内容は終了となる。
一応、皆川が除霊した家がうめくぼ村と関連あるように思えた時もあったが
それは私の妄想かもしれない。行方不明になったおなりいも見つからず終いで
映画は尻切れトンボに終わる。
独立した3つの物語は、それぞれ関係があるようで無い。
ミステリー映画などでは、登場人物同士の発見されていなかった共通点を
ミッシングリンクと呼んだりする。これが物語の重要な鍵だったりするが
この映画にはそれが無い。
点と線が繋がるようで繋がらないこの不快感。
一見の価値あり。
全体を通して見ると、結局何が何だかよく分からなかったが
ミユフの独白シーンはA級映画にも引けを取らない怖さなので
ぜひ見てほしい。また、安易にCGを使わず全てをPOV形式で撮影
することで、独特の臨場感を醸し出している点も高評価である。
この映画が気になったあなたも。
気にならなかったあなたも。
ぜひ、アマゾンプライムでうめくぼ村の住人になろう。