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『CUBE 一度入ったら終わり』劇場という名のCUBE。__入れば、出れない。

2021年10月鑑賞 30/100点 公開当時 劇場で鑑賞
ネタバレあり。

2021年10月22日。暑さも和らいで涼しくなってきた頃だった。スチュエーションスリラーの傑作、『CUBE』が邦画版となって劇場公開されるのだ。元々はアメリカ製作の洋画で、低予算ながらも名作と名高い映画だ。それを菅田将暉、岡田将生、斎藤匠、吉田光太郎、杏、名だたる名役者達でリメイクする。期待に胸を膨らませて、銀幕が上がのを待った。この映画が、トラップだとも知らずに。

CUBE(洋画原作)のストーリーはこうだ。

ある時、主人公は謎の立方体の中で目を覚ます。なぜ自分がここにいるのか、どうやって来たのか、記憶が無い。部屋の様子を見ると、上下左右には扉が一つずつある。扉を潜っても、全く同じ内装•構造の部屋。それが延々と続いている。

立方体の中を世彷徨っている内、主人公は幾人か同じ境遇の人間と出会う。脱獄犯の男性、数学科の女子大生、警察官の男性、サヴァン症候群の男性、精神科医の女性、そして主人公(設計士の男性)。なぜこの立方体に閉じ込めれているのか、なぜ自分達は集められたのか。6人は出口を求め、立方体の中を彷徨う。

立方体の部屋には、素通りできる部屋とトラップのある部屋がある。トラップの種類は様々で、入った人が死ぬような仕掛けになっている。火炎放射器が設置されてあったり、人を串刺しにする槍が出てきたり。死と隣あわせの中、トラップを掻い潜りながらアテも無く進む主人公一向。

脱獄犯はトラップを見分ける工夫を、警察官は皆を励ます勇気を、精神科医は皆がパニックに陥らないような知恵を、女子大生は数学の知識で建物の全体象予測する。それぞれが持つ力を駆使して、この状況に立ち向かっていく。無気力な主人公とダウン症の男性を除いて。

しかし出口を見つけられず、食べ物も飲み物も無く、徐々に追い詰められていく主人公達。脱獄犯はトラップで死に、勇気ある警官は凶暴な本性をあらわに、一番冷静だった精神科医は取り乱す。極限状況の中で、それぞれの本性が浮き彫りになる。だがそんな中、女子大生へが脱出への重要な手がかりに気づく。この建物は、ある数式に基づいて動いている。その数式がとければ、出口への手がかりになる。その数式も、サヴァン症候群の男性が解くことができる。

突如見出せた光明、希望を取り戻す一行だが、暴徒と化した警察官が他立ち塞がる「皆んな死ねばいい」と。果たして、主人公達は生還できるのか__。

というのが、元々の『CUBE』のあらすじである。

集められた6人、それぞれに割り振られた役割。協力し合えば、全員で生還できる__はずだった。死に直面した人間が見せる弱さ、それでも奮い立つ強さ。その2つが浮き彫りになる時、CUBEが見せる結末はいかに。

・・・結論から言おう、今回のCUBE邦画版にそういった上述の要素は無い。
長々と書いたが、原作にあった良いところが一つも無い。集められた6人に役割も無く、身元不明•職業不祥の6人がふんわりとCUBEの中で出口を探していく。そして出口を探しながら適当にいがみあい、唐突に主人公のトラウマが上映され、、何となく和解して、脱出する。※一応予告編に人物紹介あり。

物語の最初と最後、登場人物達に女優の杏が問いかける「あなた達は誰ですか」と。
それは登場人物達への問いかけであり、視聴者の代弁でもある。この映画は、原作ファンを劇場という名のCUBEに閉じ込めるトラップ。一度入ったら、終わり。

この映画を見た後の帰り道は、少し寒かった。

以上。




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