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『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』ファンサービス極まる

TVアニメ版・劇場版に関する重大なネタバレあり。

本作は、2002年〜2005年にかけて放送されたTVアニメ
機動戦士ガンダムSEED
機動戦士ガンダムSEED DESTINY
の続編である。

まず申し上げたいのが、本作は一見さんお断り映画である。
作中世界で非常に重要となる主人公の出自や、人種間抗争
や政治的な問題については一切説明されない。

そのため、本稿ではそれらを簡単に振り返りながら
感想を述べたい。

なるべく専門的な用語を使わず、わかりやすく解説したいので
設定の細かなところで不備があるかもしれないが、ご容赦願いたい。

本作のガンダムSEEDの世界には、2種類の人間がいる。

①出産前から遺伝子調整を経て生まれた、人為的な改造を受けけた優秀な人間たち
〈コーディネイター〉。主に宇宙に住んでいる。ザフト軍という軍隊を所持。
②改造を受けていない普通の人間〈ナチュラル〉。主に地球に住んでいる
地球連合という武力集団でザフト軍に対抗している。

物語は、ザフト軍(改造人間の集団)VS地球連合(普通の人間)の構図で進んでいく。

この2つの人種は、お互いを見下し合っているため基本的に険悪である。
遺伝子改良を受けた人間たちはとにかく優秀で、全員がアメコミヒーローのように
強くて頭もいい。そのため選民思想が強く、改良を受けていない人間を見下している。
一方で普通の人間たちが弱くて虐げられているかというとそうでもなく、地球側として
一致団結して改造人間集団と戦って何とか拮抗している。

さらにはお互いに核兵器を平気で撃ち合うモノだから、人々の対立・憎しみは頂点に達している。

そんな中どちらにも属さない中立国に住んでいた青年、キラ・ヤマト。
彼は住んでいたコロニーが戦闘に巻き込まれ、ひょんなことから地球連合の
宇宙船である〈アークエンジェル〉にのり、ガンダムのパイロットとして戦う
羽目になってしまう。

この主人公であるキラ・ヤマトが今作最大のキーパーソンであり、この世界の火種でもあり希望でもある。まずお伝えしたいのが、このキラ・ヤマトという人物。一言でいえば〈最強〉なのである。

作中世界でも通常とは異なる遺伝子改良を受けており、SEED世界では誰も彼に勝てない。呪術廻戦でいうところの五条悟であり、進撃の巨人におけるリヴァイ兵長であり、ワンパンマンにおけるサイタマなのである。

そんな最強な男、キラ・ヤマトだが、人間的には問題がある。
基本的はウジウジしていて内向的なのだが、生まれ持った高い能力を鼻にかけている
傲慢な一面がある。

友達の彼女と浮気した後、その友達に向かって
「君(普通の人間)は僕(最強の改造人間)に勝てない」と
人種差別煽りをしてみたり。

今回の劇場版では
「だってみんな・・僕より弱いじゃないか」と泣きながら逆ギレしてみたり。

ナヨナヨしている風に見えて、やりたい放題なのである。
てっきり今回の劇場版で成長した姿が見られると思っていたのだが・・
その性根は全く変わっておらず、今回の戦争の火種にもなっている。

さて、そんな今回の劇場版では
TV版で恋人らしき関係となったヒロイン、ラクス・クラインとキラ・ヤマトの
関係が描かれる。

TVアニメ版では、2人が一緒に暮らしている様子が描かれており
恋人であるところは察せれるのだが、明確な描写はなかった。

今回の映画では、そんな二人の関係に振り切っており
〈キラとラクスが愛し合っていることの確認〉が主題になっている。
これに関しては、賛否両論あるかもしれない。

だが、個人的には
はシリーズファンである私が最も見たかった瞬間でもある。

映画の前半では、とにかく主人公キラ・ヤマトとラクス・クラインがすれ違う
様子が描かれる。

愛し合っているのに、それをハッキリ口にせずスレ違うキラとラクス。
ヒロインを攫って洗脳し、我が物としようとするイケメンの敵。
ウジウジするキラ・ヤマトを殴って説教する親友。

油を引いた鉄板のようにベタベタな展開ではあるが
私は二人が好きな分、ついハラハラして見入ってしまった・・。
このあたり、まるで少女漫画を見ているような感覚である。

映画の後半では、キラが敵の本拠地に乗り込んで
ラクスを取り戻す。その後、新型ガンダムに搭乗して敵を倒す。
というお決まりの展開。
水戸黄門の印籠であり、暴れん坊将軍で上様が登場するシーンである。

前半でヘイトを貯めた分、とにかく敵の怒る姿・散り様が爽快である。
洗脳してでも得たかった女(ラクス)が目の前で恋敵(キラ)とイチャつきながら
ビームを撃ってくる。敵からすれば怒り浸透のこの展開。これを見ずして何を見る
。滅茶苦茶に爽快である。

そして「君にもいい人現れるよ」という主旨で放たれる
ごめんなさいあなたとは付き合えませんビームは必見である。

二人は弾幕の応酬の中で、敵に説く。
とにかく愛が大事なんだと。今は孤独でも、未来できっとあなたを見てくれる
人が現る、と。正直なところ失恋真っ只中の男に言うには、あまりに
酷なセリフで笑ってしまった。

さて、「愛が大切なんだ」というのはありきたりで雑な回答にも聞こえるが
ここでTVアニメリーズで最大の敵であった二人のことを思い出したい。

ガンダムSEEDの仇敵
ラウ・ル・クルーゼ隊長からの問い。
今より良くあろう、誰よりも優れていたいという欲求。
人体実験・遺伝子操作・クローン技術。
その結果、ゴミのように消費される命、軽んじられる倫理。
決して消えない人間の業。殺し合うしかない世界。
この世界は間違っている。
ならばいっそ、全て壊してしまえばいい。
全て滅んでしまえばいい。

ガンダムSEED DESTINYの黒幕
デユランダル議長の提案。
蹴落とし合い・殺し合いの螺旋から降りないのが人間ならば
誰かが全部管理してしまえばいい。
不平等が生まれ苦しむのが人間ならば
仕事も結婚相手も、何もかもを全てを
生まれ持った遺伝子で決めてしまえばいい。

この二人問いかけに
キラ・ヤマトとラクス・クラインはこう答えてきた。

世界が間違っていても
それでも、守りたいものがある。

殺し合いをやめられなくても
それでも、人には自由意思があるべきと。

そして今回の劇場版の答えはその集大成ともいえる。
人間にとって大切なのは、愛なのである。
人の憎しみを唯一忘れさせるのは、愛し合うことなのだ。
奪いあうのではなく、身近にいる人の優しさに気づき、
争いの螺旋から降りて、理解し合うことを放棄しないのだと。

これはSEEDシリーズが一貫して主張してきたテーマでもある。

もちろんファンの中には「難しいことを全てぶん投げて、手薄だった
主人公とヒロインの恋愛模様を描いただけやん!」

という人もいるだろう。

・・・・実際それは、その通りだ。
ファンサービスに振り切ったネタ感が強い
映画であることも否めない。

ズゴックの中から
イージスガンダムが出てきた時は
「もっとカッコ良くて出てきて良いのでは?」と疑念が湧き

ステラの思念体がシンを守るシーンは
「なんでギャグ調で表現するの?」と不満に思った。

本シリーズのシリアスな面が好きな人ほど納得できない
シーンがあるのは確か。

ユニコーンガンダムで描かれた〈可能性〉
水星の魔女で描かれた〈祝福〉

近年のガンダム作品で描かれたような
重厚さはSEEDにはないかもしれない。
他のガンダムと比べると、キャラ愛偏重の軽薄な映画かもしれない。

だけどそれでも、それでもだ。
私はガンダムSEEDが帰って来てくれて嬉しい。
おかえり、ガンダムSEED。

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