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『非常宣言』 愛を叫ぶ。家族への愛を。

80/100点 ネタバレ有り。 2023年1月鑑賞

飛行機の中でバイオテロが起きるパニックムービー。

韓国からホノルルへ向かう飛行機の中でばら撒かれた殺人ウィルス。
バイオテロが起きた機内で、生き残る方法を模索する乗客とその家族。
感染の危機に怯え、見殺しにしようとする世論。

ベタな展開と言えばそれまでだが
全てが高水準でまとまっており、見応えがある。

バイオテロを解決すべく、地上で奔走する刑事役にソン•ガンホ。
飛行機を墜落させまいと機内で奮闘する元パイロット役に、イ•ビョンホ。

刑事は、機内で撒かれた殺人ウィルスの出所を探る。
飛行機に乗っている妻を助けるために。
元パイロットは、機長の死んだ機内で操縦桿を握る。
一緒に乗り合わせた娘を守るために。

2人の主人公が、地上と空のそれぞれで事件の真相に
迫っていく。ワクチンはあるのか、飛行機を無事に着陸させることは
出来るのかと。

最も美しかったのが、物語終盤で機内の乗客全員が死を決断する場面。
見つかったワクチンが効くかわからない。世論と政府は未知のウィルスを恐れて着陸を許さない。そんな状況の中で「自分たちにも、地上に死んで欲しくない人達がいる。怖い気持ちは同じだ。だから、着陸はしない」と。

そう言って乗客全員が家族と別れを告げるシーンは、分かっていても泣いてしまう。
料理がまずくても、いつもケンカしても、本当は愛してる。ここから先の未来に自分がいなくても、生きて欲しいと。そう泣きながら愛を叫ぶシーンは、日頃忘れがちな大切な気持ちを呼び起こしてくれる。

だが、そんな乗客達や政府の決断に、刑事役のソン•ガンホが待ったをかける。
「俺は自分にウィルスを投与する。ワクチンが効いたら飛行機を着陸させてくれ」と。
ここからはお約束の展開ではあるが、投与されたワクチンは効果を発揮。飛行機もイ•ビョンホが無事に着陸させ、生存者達は無事に日常生活に戻る。

ラストは、イ•ビョンホンがソン•ガンホを訪ねるシーンで
終わる。庭先でバーベキューを行い、楽しそうに交流する生存者達。みんなが笑顔の中、ウィルの後遺症で車椅子となり痛ましい姿となったソン•ガンホが登場。
娘を守り切ったパイロット。代償を負いながも妻を救った刑事。
2人の主人公の対峙で、物語は幕を閉じる。


と、ここまでベタ褒めで書いてきたが、多少気になる点もあった。
物語中盤、飛行機が成田空港に強行着陸するシーンがあるのだが、なんと日本の航空自衛隊が発砲して着陸を阻止するのだ。

私はこのシーン、やり過ぎ感が強くて笑ってしまっのだが…
エンタメ作品とはいえ、自衛隊が安易に発砲している点はやはり気になる。この点を見過ごせなない人には、許せないポイントだと思う。また、展開自体はパニック映画ではありがちな展開であり目新しさはない。

映画を見慣れている人には、少し物足りなく感じるかも知れない。
だが、乱高下する飛行機や、地上で進行する捜査パートの迫力が総じて高く
映画館で見る分には充分に楽しめる作品である。

追い込まれた時、人は地上と空で愛を叫ぶ。
ぜひ、劇場で。

以上。

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