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セレッソ大阪 2025シーズン展望
セレサポの皆様、お疲れ様です。
シーズン開幕が近づいてきたので、今回はその展望を書いていきたいと思います。
新監督 アーサー・パパス
というわけでまずは監督の話。
正直、パパスの指揮する試合を細かくチェックしたわけではないので、何もハッキリしたことは言えないが、アンジェ・ポステコグルー現トッテナム監督の下でコーチを務めた経験があるので、100%同じとまでは言わなくても、おそらくアタッキングフットボールを目指すと思われる。
実際、ほんの少しだけキャンプの様子を見てきたが…あまり詳しく書くことは禁止されているが、まぁやりたいことはこんな感じなんだろうな、というのは見て取れた。多くのセレッソサポーターの予想と、そう違わない方向を目指しているんじゃないかなと思う。
一つ言えるのは、昨季までの戦い方とは大きく異なるという点。まずはここに選手達が適応しなくちゃいけない。かなり時間は掛かると思う。昨季までのように無理やり縦にはつけないで、やり直してサイドから、またやり直してサイドから…というサッカーにはならないと思う。縦につけることを求めるだろうし、真ん中から攻めることも求めるだろう。
そして失った瞬間のカウンタープレス。即時奪回。
攻撃的に振る舞うからこそ背後には広大なスペースが広がるので、そこを使わせない高圧力のプレスは前線の選手にとって必要不可欠だし、一方で万が一背後を使われた際にカバーするスピードは守備陣に強く求められるだろう。
ぶっちゃけ、非保持の精度を高める…要はブロックを構えるところとプレスに出るところの使い分けやその精度、ブロックの強固さを高めていく…というよりは、「保持の時間を長くして相手陣内でサッカーをしようぜ」という発想で作られるチームになると思う。だからカウンターに対する脆さは…これ以上は書かないけど、まぁそういうことだ。あとはどこまで"それ"を突き詰められるか。この手の監督なら、突き詰めていくしかないと思う。
目指すサッカーはハッキリしているし、となれば各ポジションにもどんなタイプの選手が必要かもある程度は明確。
じゃあ、各ポジションに必要な食材は取り揃えられているのか?
ここはちょっと疑問に思うところ。
後手を踏んだ補強戦略
今季のセレッソの選手編成を見たとき、申し訳ないが「後手を踏んだ」「したい補強を思う存分できたわけではない」と言わざるを得ない。
そもそも監督選定の時点で大きく出遅れてしまい、それに伴って補強戦略も長い間ストップしてしまった事実がある。
今更、大岩氏がどうとか日本サッカー協会がどうとか言っても仕方ない。外からでは分からないことが多すぎる。ただ現実にあるのはチーム編成に遅れが生じてしまったというところ。
更に、先ほど「パパスの目指すサッカーはハッキリしていて、各ポジションに必要なタイプもある程度は明確だ」と書いたが、じゃあ各ポジションに必要なタイプが、それなりの枚数で揃っているのか?という点に不安を覚える。
例えば最も分かりやすいところで書くと、前線の左サイドのポジション。
昨季ここのポジションを務めたのは主にカピシャーバと為田。既に2人とも退団してしまっている。確保できた代役は、新外国人のチアゴ・アンドラーデのみ。明らかに足りないので、昨季は右サイドでの起用がメインだった柴山や阪田は左サイドでの起用がメインとなっていくと思う。
…ということはつまり、国内で左サイドの経験のある選手は皆無というわけだ。
しかもマリノスがそうであったように、あのサッカーをするなら両ワイドは比較的ウインガー気質な選手が好まれるはず。先ほど挙げた3名のうち、いったい何人が「左サイド」で「ウインガー」的な役割をこなせるか…できないと言い切っているわけではなく、不透明な要素が多い。
トップのポジションだってそうだ。
ラファエル・ハットン、中島元彦、上門、古山らがここで起用されると思うが、純粋なCFというと…。個人的には、あのサッカーをやるならFWは前線で収められて、尚且つフィニッシュにも絡めるという、純粋なCFを複数用意すべきなんじゃないかと思うが、そうはならなかった。
左サイドバックは単純に枚数不足だ。
高橋ニコはアンダー代表での定期的な招集が見込まれるし、舩木はCBとの兼任だ。登里は故障が増えつつある。毎試合出てもらう、とはいかないだろう。
CBについても、あのサッカーをやるなら真っ先に求められるのは、背後をケアできるスピードと対人能力。だからマリノスにはチアゴ・マルチンスが必須だった。
決して誤解してほしくないのは、今いる選手の能力が足りていないと言いたいのではない、ということ。これはあくまでタイプの問題で、パパスの目指すサッカーを体現する上で、必要なタイプが揃っているかどうか。
もちろん、予算には限りがあるので欲しい選手を何でもかんでも獲得できるわけではない、というのは承知の上。
だけど、それにしても梶野統括部長の補強方針からは「監督のサッカーに合う選手を獲る」という思惑を、申し訳ないが過去一度も感じたことはない。
今季も、そのパターンに漏れなかった…という感想しかない。それでいてタイトル獲得できない原因を熱量不足に求めるのだから…あんまり書くと長くなるのでやめておく。
選手編成
とは言ってもこのメンバーでシーズンは始まるので、ポジション毎に見ていきたい。
GK
キム・ジンヒョン
福井光輝
上林豪
不動の守護神ジンヒョンが今季も最後尾に君臨。そのジンヒョンのセカンドという難しいポジションを託されたのは町田から加入の福井。経験豊富な選手なので心配はいらないはず。更に明治大学から"復帰"の上林を加えて将来も見据える。布陣だけ見れば盤石の体制。
気になるとすれば、今季のサッカーはGKのカバーエリアが広くなることが予想されるので、決してエリア外まで飛び出していくタイプではないジンヒョンがどこまで適応できるか。
CB
進藤亮佑(右)
西尾隆矢(左右?)
畠中槙之輔(左)
舩木翔(左 SBと兼任)
(田中駿汰?)
右の進藤、左の畠中、左右の西尾。そしてレフティの舩木。安定したメンバーに見えるがパパス体制に適応できるかは未知数な面々。今季はビルドアップでの貢献に加えて、自陣に広がる広大なスペースをカバーすることも求められるのでかなりの高負荷が予想されるが、この枚数で足りるかどうか。ヨニッチ退団以降、CBは入るよりも出て行く数の方が多く不安材料ではある。(そもそも昨季だって舩木をCBとして計算してシーズンに入ったわけではない)
新加入の畠中はアタッキングフットボールへの適応力に期待したい。その他の面々も、それぞれ個性的で違った強みのある選手達。組み合わせ次第では1+1がいくらにでもなりそうなメンツだ。
SB
奥田勇人(右)
中村拓海(右)
登里享平(左)
高橋仁胡(左)
舩木翔(左 CBと兼任)
(大迫塁?)
左右2枚ずつ揃えることには成功。ただ左に関しては不安要素あり。登里が負傷離脱し、更に高橋仁胡も代表招集で離脱。早速、左のCBとして計算していたであろう舩木を左SBに回すこととなった。(つまり左CBの控えは不在)
今季のサイドバックは難易度の高い立ち回りを求められそうで、かなりの負荷が掛かると思う。それが不安材料でもあり、でも逆に言うと若い奥田や中村、高橋がそれをモノにしてくれたら一気に化ける可能性も秘めている。
個人的には、このサッカーで、サイドバックにあの動きを求めるのなら、高橋仁胡に最も期待を寄せたい。
ボランチ
田中駿汰(CBと兼任?)
喜田陽
香川真司
奥埜博亮
松本凪生
大迫塁
平野佑一
枚数は足りている。唯一、不満のないくらい数が揃っているポジションかもしれない。主将を務める田中駿太の起用は確実だろう。相方は喜田陽が最有力か。真司、奥埜のベテラン勢が後ろに控えていると思うと心強い。(ちょっと前までこの2人におんぶに抱っこだったから。)平野は故障が癒えてから。個人的には、キャンプでは松本凪生の動きが良かったなと感じたので期待している。
トップ下
北野颯太
ブエノ
(中島元彦?)
ここがなかなか読めない。ライン間で受け手になれる&カウンタープレスの強度という部分では颯太。ボールを持ってから違いを作れるのはブエノ。違った特徴があって、どちらが起用されるか難しいところ。個人的には、元彦こそこのポジションで使ってみてほしいが…。個人的な予想では、開幕は颯太の起用が濃厚と見る。
WG
ルーカス・フェルナンデス(右)
阪田澪哉(左右)
柴山昌也(左)
チアゴ・アンドラーデ(左)
ジャルンサック・ウォンコーン(右)
古山兼悟(右)
右の一番手はルーカスで固い。問題は左。新外国人のチアゴ・アンドラーデはまだコンディション調整中で、どこまで仕上がってるのか不透明。となると阪田か、あるいは柴山の起用もあり得る。柴山は今季は左での勝負となりそう。左サイドをモノにできればプレーの幅も広がるかもしれない。阪田は数少ない仕掛けられる選手。それも左右どちらも使えるってことで、期待しかない。古山の右WG起用はトレマで一定の成果を見せたが果たして。
このポジション、とにかく計算が立たなさすぎる。ザ・ウインガーという選手は多くない。それがどう出るか。誰にだってチャンスはあるだろう。
トップ
ラファエル・ハットン
中島元彦
上門知樹
古山兼悟
新外国人のラファエル・ハットンが一番手か。ただ決して純粋なCFではなく、どちらかというとWGも出来そうなタイプ。そのタイプが、ハマるかハマらないか。
元彦はこのポジションでの起用かもしれないが、彼の本領が発揮できるかと言われると…。本当はトップ下に置きたい。それは上門も同じ。やはり1人で最前線に立つタイプではない。その点、古山が最もCFっぽいかもしれない。
マリノスなんかを見てると、とにかく縦パスをFWに当てて落としてを何度も繰り返すので、純粋なCFが少ない現状には少し不安を覚える。
ということでこのポジションも不透明な要素が多い。
今季をどう戦うか
個人的には「我慢のシーズン」になると思っている。
開幕から内容も結果も伴う充実したシーズン…にはならないだろう。そりゃそうなってほしいが、そうなる要素があまりにも少ない。
監督のやりたいサッカーと選手のタイプがマッチしていない、と書いたが、裏を返せば選手達がパパスの攻撃的なサッカーに適応していけば…という希望はある。伸び代ってやつだ。そこに懸けるしかない。
幸い、若い選手が多く、新体制とハマれば大化けする選手だって出てくるかもしれない。
何が起きるかは、分からない。
ただ、いずれにせよ我慢の時期から始まるだろう。
問題は、その我慢がいつまで続くか。
我慢の限界が来るのが先か、新たに取り組んでいるサッカーが花開くのが先か。
今季はここに尽きると思っている。
新たなサッカーを着実に積み上げていけたとしても、もし長期間結果が伴わなければ、監督の求心力が落ちてしまう。すると、積み上げていたはずのものさえ出来なくなって、チームは崩れていく。それが最悪の事態。
それはもしかしたらスタンドの雰囲気だって同じかもしれない。サポーターがどこまで我慢できて、後押しの空気感を作り出せるか。あるいは、不満が出てしまうのが先か。
だから我慢はするけど、一定のタイミングで、一定の結果は出していかないといけない。
それは決して、タイトルやらトップ3やら、あるいは降格圏などから逆算して考えたら…という意味ではなく、クラブが、選手が、サポーターが、新しい取り組みを信じ続けられる限界を迎える前に…という意味で。
選手達がパパスのサッカーに適応するか。
もしくはパパスが選手の特徴に応じてサッカーを微調整できるか。
ここに着目していきたい。
で、これには当然時間が掛かる。だからこその我慢。数試合で判断は出来ないかもしれない。でも、そういうシーズンだと腹を括る。
一方で我慢しすぎて瓦解してしまっては意味がない。先ほども書いたが、やはり人間のやることなので結果が出ないと心も離れてしまう。そうなる前に手を打たなきゃいけない。そこの判断をいつ下すか。常に適切なジャッジをし続けなければならないという、本当に難しいシーズンだと思う。
多少波があっても小菊さんなら上手いことやってくれるだろう、悪くても中位に落ち着くだろう、という安心感に甘えていた過去数シーズンとはワケが違う。そういった難しさがある。
だけど、難しくしてしまったのはセレッソ自身でもある。だからクラブとしてここを乗り切らないといけない。
大袈裟かもしれないけど、そういうシーズンになるんじゃないかなと思っている。
と書くとネガティブな感じになるが、正直前体制はマンネリ化していて何が起きるかある程度予想できてしまっていた中で、今季は本当の意味で「何が起きるか分からない」というワクワク感は、ある。
大きく若返った選手と、大きく入れ替わった首脳陣が、予想もできないような化学反応を起こすことが出来れば面白いチームになっていくと思う。