第4節 セレッソvsサガン
待ちに待ったリーグ戦初勝利。
長かった。
とてつもなく長かった。
2022年9月14日以来179日ぶりのリーグ戦勝利。
熱が冷めないうちに振り返っていきたいと思います。
今回からTACTICAListaさんの力をお借りして、図で説明してみます。
変えてきたスタメン
この試合を語る上で欠かせないのは第4節にしてスタメンを動かしてきたことでしょう。
リーグ戦初スタメンが香川真司、松田陸、加藤陸次樹の3人。
まずは香川真司。
こちらはコンディションが上がってきたこと。そしてキャンプで取り組んでいたと言われるボール保持型の433で、清武が務めていた左IHのポジションに入るとしたら真司しかいないということでしょう。
そして松田陸。
色々心配されましたがルヴァンでは変わらぬ熱い姿を見せてくれサポーターを安心させました。中3日のこの試合でも引き続いてスタメン。
さらに加藤陸次樹。
陸次樹もキャンプ終盤はコンディションを落としていたこと、さらに新加入レオセアラの加入でベンチに追いやられる形になっていましたが、ルヴァンで元気な姿を見せてこの試合でも続けてのスタメン。
あとはクルークスが外れ、毎熊が一つ前で起用されたことが大きなポイントか。
まずはここら辺の意図を考えていきたいと思います。
スタメン変更の理由考察
正直試合のマッチレビュー的な趣旨で書いては他の人に敵う気がしないので(笑)
あくまでもシーズン全体、あるいはここ数年を一つの流れで見たときにどうして今日このメンバーこの戦い方になったのか?という点に重点を置いて話していきたいと思います。
しかしあくまでも自分の個人的な視点。とにかく「自分の頭の中を整理する」ことがこのnoteの目的なので。
小菊監督はレッズ戦後「攻撃は良かったが守備がマズかった」という趣旨のコメントをしていたし(攻撃も良くなかったやろ!というのは一旦置いといて)、鳥栖戦後のインタビューでも「(今日のメンバーを選んだ理由を問われて)攻撃では意図的に崩す場面もあって点も取れていたが、強みであった守備に課題があったから」ということを言っていたので、このメンバー変更には色々な理由があるにせよ、最大の目的は守備の改善にあったことは明白だと思います。
その守備改善のために打った手が、陸次樹と毎熊を前線で起用すること。
守備を改善するなら後ろに手を加えるのでは?と言われそうだし実際それも一つの解決方法ではあるけど、今のセレッソの課題と照らし合わせたときにこの毎熊を動かすという判断は妥当なものだったと思います。
今季失点が止まらない理由の一つに、「ボランチの間や裏を使われる」というものがありました。
セレッソは前からプレスをかけることを志向していますが、今季は前線の選手が入れ替わった影響もあってかその前プレが全くハマらず、いいように掻い潜られていました。
実際、選手達のコメントからも「前線のプレスがハマらなかった。意思統一ができていなかった」というものを何度か聞きました。
結果、奪いきれずに陣形を広げられボランチの裏や間を使われてヨニッチが飛び出して対応→クリアし損なうと後ろには鳥海(西尾)しかいない、サイドバックのカバーも間に合わないという事態に繋がっていました。
なので前線のプレスをより強度高く行うために、陸次樹と毎熊の起用があったのではないか。
決してレオセアラとクルークスが悪いというわけではなく、正直今のセレッソのFWと右サイドに関してはかなりオーバータスク(特に尋常じゃない走力を求められる)なポジションなので、あくまでも向き不向きの問題。レオセアラとクルークスだってかなり献身的な選手だとは思います。
実際、この2人のプレスから先制点が生まれているので、采配自体は的中と言えるでしょう。
右サイドのオーバータスクについては後ほどもう一度出てきます。
続いて攻撃面。ボール保持。
こちらはキャンプから取り組んでいた433の清武のポジションに香川を置くという形。やはりチームとして433に取り組んできた中でその肝とも言える清武の離脱は大きな誤算だったはず。
しかしここにきて香川がコンディションを上げてきたおかげで、香川なら清武と似たような役割を任せられるのでは?ということで、そのまま清武の位置に当てはめたのだと思います。
個人的には、この左IH香川というのはすごく効いていたように思います。
左の低い位置まで降りることで山中と為田を前線に押し上げ、攻撃を活性化させていました。
山中が低い位置にいたままボールを受けるとタッチライン際でプレスに遭い、詰まってしまう。だけど真司が降りて山中が上がることで(さらに隣には為田もいる)、相手のプレスの基準点をボカすことができる。ここで出来た時間を香川に使わせ、攻撃を作ってもらおうということだったのでしょう。これはかなり効いてきたと思います。
一方で終盤、香川に代わって上門が入ったあとは全くボールが持てなくなりました。上門は香川ほど降りて来ず、為田もそのまま左サイド、山中も低い位置のままで、山中にボールが入ったらサイドでプレスにハメられ大きく蹴るしかなくなったのが大きいと思います。
ただこれも決して香川が良くて上門が悪いという話ではなく、個性の違いなので仕方のない部分。
で、この433には一つ課題があって、それはネガティブトランジション時のリスク管理。IHの2人、奥埜は前線へも駆け上がっていくなど縦横無尽、香川は低い位置で受けて捌いたあと自身も前線へ行く。徳真がアンカーの位置に入る割には比較的動く選手。山中は言わずもがなサイドをオーバーラップ。要はボールを失った瞬間、後ろの枚数はかなり手薄なわけです。
これを解決するために打った手が右サイドの人選。
まずは松田陸。彼はもはやお馴染みとなりましたがビルドアップ時は低い位置で組み立てに参加します。このビルドアップ時の低い立ち位置が、そのままネガトラ時のリスク管理に役立つという算段なのではないでしょうか。ボールを失った瞬間、たとえば左サイドバックの山中はボールより前にいると思いますが、松田陸はボールより後ろでリスク管理をする立ち位置にいることが多い。このポジショニングが攻守(+切り替えの局面)で役に立つ。
そして毎熊。
彼の凄さはその切り替えの早さ。ボールを失った瞬間、自分がプレスに出れる位置なら猛然とプレスに行くし、相手の攻撃を遅らせるためなら逆サイドまでも追いかけ回すし、もし自分の近くにボールがなくても一気に戻ってボランチ近辺のスペースを埋めに行く。
先ほど「ボランチを動かされてそのスペースを使われることが多い」と書きましたが、その解決方法として毎熊に頑張って戻ってもらう、という手段を用いたのでした。
だから右サイドはオーバータスクなんです。
前から追う、交わされたら全力疾走で戻る、誰かが失ったらすぐに戻ってスペースを埋める、一方で攻撃でも前に出ていかないといけない。
これを全てこなしている毎熊が異常なだけで、クルークスが悪いわけではないと思ってます。
もちろん課題もあって、これだけ走り回ってもらう分、毎熊が得点に絡む機会というのは正直少ない。
もっとサイドの選手も得点に絡ませたいということで獲得したのがクルークスだったのでしょう。
だけどクルークスは毎熊ほどは走れない(繰り返しますがクルークスは走れますが毎熊が走り過ぎなだけです)
その皺寄せが、ボランチ近辺のスペースへと繋がってしまう。
今思えば、アンカーの割に「動」の性格が強い徳真より、ビルドアップ時は比較的動かず相手を引きつける役割を担ういわば「静」の性格が強い原川が開幕時に起用されていたのも、この辺の事象を見越してのことなんじゃないでしょうか。
ボランチ近辺のスペースを使われる可能性があるから、敢えて原川を使っていたのか…
徳真が開幕前にコンディションを落としていたという情報があるので定かではないですがね。(あと原川も決して動かないタイプではないので。笑あくまでもビルドアップ時の徳真と原川を比べたら、の話)
結果は勝利
色々と手を打ってきたわけですが、結果としては大成功だったのではないかと。前線からのプレスは行く場面と行かない場面が整理された印象だし、上手くいかず交わされても毎熊がカバーし事なきを得ることが多かった。
ボール保持の局面でも左右でWG・IH・SBの3人がいい関係を作ってボールを前進させることが出来ていました。
一方でしっかりと課題も見ておきたいと思います。
今回も、選手が交代すると仕組みの維持ができなくなり、ボール保持がおぼつかなくなりました。
そしていつもの、終盤の失点です。
今回、本田風智にシュートを打たれた場所は本来なら奥埜か徳真が見ておくべき場所かと思います。しかし奥埜は右サイドに釣り出されており、徳真は右サイド奥深くに侵入された際にそこのカバーへと向かっていました。そこからの折り返しで一つ内側を使われたときに、カバーしてる選手がいなかった。
ここを誰が見るのかっていうのは難しいかなと思ってます。個人的にはボランチがあそこまで動く必要はなく、まさに今回空けてしまったバイタル近辺、クロスに対してマイナスのスペースをボランチに埋めてほしい。
でも今のセレッソでは、あそこを埋めるのはおそらく右サイドの選手なんでしょう。つまりあの場面ではクルークス。たしかに、よーく見返してみたら「毎熊なら戻ってたかもな…」と思わなくもない。
もしボランチが2枚とも出て行っていい、その代わりサイドの選手がそこをカバーするというのがチームとして正解なのだとしたら、その仕組み自体少し無茶なものなんじゃないかと思わざるを得ないです。
この試合で得られたもの
これも色んな感じ方があると思うので、個人的な意見を書きます。
大きいなと感じたのは、昨年から積み上げてきた「ハードワーク」「良い守備から良い攻撃へ」に今一度立ち返る選択をして、そして昨年の良かった頃のような試合運びが出来て、結果が出たこと。これは何より大きいと思います。
それに加えて香川含めた433でのボール保持という、昨年にはなかったものもその片鱗を少し見せられた試合だったと思います。
気になるのは「じゃあこのまま行くのか?」というところ。
個人的には、やはりもう一度クルークスとレオセアラをこの中に組み込む方法を探すのではないかと。
そりゃそうですよね。せっかく獲得したんですから。
正直言って守備面は毎熊に頼ってる部分があって、攻撃時は香川の力に頼ってる部分があります。特定の誰かに無理をさせたり依存する戦い方ではなく、ある程度は誰が出ても似たような組織を維持できるような状態を作り上げてほしいところです。
いずれにしても、負けるよりは勝つ方がいいので鳥栖戦の結果は素晴らしいと思ってます。
「立ち返るべき原点」がこのチームには存在していると、実感することができたのが何より嬉しかった。
いっちょまえに図で解説ごっこしてみましたがツッコミどころ満載だと思います。どうかお許しください。
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