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かもしれない弁天 【毎週ショートショートnote】


やけくそな帰宅途中。ブランコを漕ぎ続けている5才ほどの女児が目に入る。


「お母さんはどうしたの?」


腰を屈めて話しかける。


「おそらのうえ…」


母親を思い出したのか女児は急に泣き出した。



「向こうに四つ葉のクローバーがあるかも!おじさんが探すからね!泣かないで!」


女の子の泣き声は段々小さくなる。


「あった!しかも2つ!」


人生初に興奮気味だが、急いで女児のもとに駆け寄る。


「見て!!クローバー持ってるといいことがあるかもよ。」


「くろーばー?」


ぱぁっと明るくなる。


「ほんとに?」


「さぁ一緒にお母さん探そっか?」


「おじちゃん、ちょっとみみかして?」


「ん?」


俺は腰を屈めた。女児は口元に手を当てコショコショ話しかける。


「おじちゃん、やさしいからこれからいいことがおきるかもよ」


「え?」


消えていた。女の子が、空の色もオレンジ色に染まったままである。四つ葉のクローバーが確実に握られていた。


新しい七福神がやって来た。

その名も"かもしれない弁天"


参加させていただきました🙇

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