風は秋いろ、の日。
酷暑の2023summerも
そろそろ、去っていく。
酔芙蓉の花が、咲き始めて、
薔薇が蕾をふくらませて、
箒草はうっすら茎を赤くして
暑さに疲れたわたしを、
もうすぐですよ、
いまに、秋が
空色の睫毛を
風に揺らしながら
金木犀の匂いと共に
やってきますよ
と、励ましてくれる。
買っておいた秋の苗たち。
夫に車を出してもらって
アパートから、庭へ運んだ。
それぞれ、植えて、秋を待つ。
それからは、ひたすらに
雑草を抜く。
秋の草たちも、雨が降るたび
柔らかに健やかに
新しい芽を、どんどん出して、
わたしは、草たちと
終わらない追いかけごっこ、
をしているような気持ちになる。
鬼さんこちら、手の鳴るほうへ
と、草たちがわたしを呼ぶ。
果てしない追いかけごっこ
だけれど、わたしを呼ぶ草は
春、夏、秋、では、
姿が違う。
春には春の草、
夏には夏の草
秋には秋の草
ちゃんと、時期をずらして
世界に現れる、草たち。
草取りの他には、
散った百日紅の花を、
箒で集めたり、
伸び過ぎた枝を切って
束ねたり、
そんなことも、
勤勉に、やる。
18時には、夕闇となる。
夫と、近くのrestaurantで
しづかに食事をした。
デザートに頼んだ
プリンのキャラメルが
ほろ苦くて、秋、だった。
庭へ戻り、虫の音のなか
夫と、ふたり、花火をした。
60才と54才の夫婦が
たのしいね
きれいだね
と、花火をした。
わたしたちは、もう
人生を半分以上、
いや、それ以上、
生きてしまった。
残りは、少ない。
少ないから、花火も
草取りも、たのしく美しい。
この年齢になると、
いちにちいちにち、が
たからものだね、と
わたしが言うと、
夫も、うなずいた。
夏の終わり、風は秋いろ。