アンビグラムは魔法ではない #1
2023/09/25 高橋
この記事はアンビグラムは知ってるけど作ったことはない、という人を対象に書きました。#1では基本的な流れ、#2ではいかに可読性を上げるか、というテーマで書いていきます。
はじめに
挑戦的なタイトルになってしまいすいません。確かに、世の中には天から舞い降りたとしか思えない神懸かり的アンビグラムがありますが、少なくとも僕のアンビグラムに関してはある程度作り方が整備され、こうしてnoteを書けるほどに体系化されてきたのでこんなタイトルにしました。
なにより、どんな活動であっても無意味に神格化され敷居が高くなるのは、僕の最も嫌うところであります。日本語話者のみんな、文字で遊ぼう!こんなにも文字がある言語が母語になる確率はマジで稀有だよ~~~!漢字!カタカナ!ひらがな!作り放題だ!!!
記事の紹介
本文に入る前に、個人的に勉強になった記事を貼っておきます。合わせてどうぞ
↑フロクロさんの記事です。形の対応付けについての解説が大変丁寧です。
↑Σさんの記事です。和文アンビグラムの達人の思考を覗けるのは超有難い。エッセンスがたくさん詰まっています。
↑いんふぃにてぃさんの記事です。1作品の構想から完成まで全部見せてくれるので作り始めるハードルがぐっと下がるはずです。キリンがかわいい
文字の制定
この記事で扱う作り方
制作する上でアプローチは、①任意の好きな熟語をアンビグラムに仕立てる、②アンビグラムにしやすい熟語を見つけて作る、の2種類あると思います。
両方紹介できるに越したことはないのですが、①は比較的難易度が高く自分自身まだ研究中なので、今回は②を主に取り扱います。
インチキ脳の認知機能
人間の文字の認識能力は意外にも適当だったりしますよね。(補完能力が高すぎるという方が妥当なのかな)単語のスペルがめちゃくちゃでも最初と最後の文字があってれば英文が読める!みたいな研究が一時期流行りましたが、あれを読んだことある方なら実感を持てるかもしれません。アンビグラムを作るうえでの醍醐味はまさにここで、自分が長年培ってきた日本語の認知機能をいかにすり抜けるか、という点にあると思います。(そしてうまく騙せたときの脳汁がやばい!)
描画アシスト機能を使おう!
なので、アンビグラム制作のキモは「文字はどこまで歪めても読めるのか?」を探ることにあります。ここが一番根気のいる作業で、時間としても長いのですが、デジタル作画の場合は描画アシスト機能を使うことでいくらかその負担を軽減することができます。
私はprocreateというソフトで描いていますが、大抵のペイントソフトには点対称、線対称の描画を行う機能があるはずです。
アナログ作画の場合は、向きを変え2回描いた上で見比べる必要がありますが、この機能を使えば「この線は省いても読めるんじゃね?」「ここはちょっと形変えても大丈夫そう」といった閃きをリアルタイムに反映することができます。試行回数をスムーズに、ストレスなく重ねることができるので作業効率が上がるし、なにより楽しいです。僕は最早これなしでは作れません。
是非描画アシスト機能をONにしてから記事を読み進めてみてください。
似ている部分を探す
僕のアンビグラムの作り方としては、「似ている部分を探す」→「なんとか読めるようにする」なのですが、文章で書くのは難しいので画像を交えて説明します。
比較的簡単な例なので、拙作「東北大学」における対応、「東」⇔「学」を見てみましょう。
僕が似ていると思ったポイントを書き込んだものが下の図です。
こんなレベルで似ているといっていいのか?という疑問は最もですが、問題ありません。この程度の差異なら記事#2で扱う技術でなんとでもなります。まずは己の直感を信じましょう。
コツとしては、「月」「目」などといったパーツのこまごました中身は無視して、文字の大まかなつくりに注目してみることです。今回の例でいえば「東」という字の真ん中の「田」の部分は無視できるパーツです。経験上、こういったパーツの中身は書き込まなくても、あるいは元の字とはかけ離れた形でも周りの文脈でなんとなく推定できてしまいます。(字影とでもいいましょうか、とにかく人は中身ではなくシルエットに重きをおいて識字しているような気がします。)
似ている部分が見つかったら、どれだけ字を変形させても可読性が保たれるかの試行錯誤を始めます。以下、下書き~完成までを貼ります。
ちょっとしたテクニックとして、文字を薄目で見る、というものがあります。こうすることで自動的に上で述べた見方に近くなると思います。(僕が文章を薄目で読んでいたらアンビグラムを探している最中です)
もう少し気づきの例を挙げておきます。
どうでしょうか?こんなこじつけみたいな発見でいいなら出来そうな気がしてきませんか。完成品だけみると到底出来ないように思えるかもしれませんが、意外と地道な作業だけでアンビグラムは作られています。そして世の中にはたくさんの言葉があります。
対応の方法について
話が前後してしまい恐縮ですが、最後にアンビグラムの種類について軽く触れておきます。僕が主に作るのは回転型とよばれる、180度回転させても読めるスタイルのものですが、他にも対称型(線対称)、内包型(マトリョーシカみたいなの)、振動型(同じ形なのに複数の文字に見える)などがあります。(前に挙げたフロクロさんの記事内で詳しく扱っています)
なぜこれらの知識が大切かというと、対応させたい箇所の位置関係によっては回転型以外を使う必要が出てくるからです。が、僕はほとんど回転型しか作っていないので、この記事では回転型を前提にしています。すいません…
近日中に#2を投稿します。お楽しみに!