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養育費未払いの父親が死んだとき 子の辿る運命 遺族年金の理不尽①
私には重度知的障害を伏せ持つ自閉症かつ強度行動障害者の21歳娘とADHDの高校生の息子を一人親で育てなければならないという宿命がある。重度障害者という社会的受け皿の非常に少ない中で、常時介護者を抱え、世帯主として生計を維持することは、相当に困難を極める。
離婚したのだからそうなるのだが、それに加えて、元夫は56歳で死亡した。子どもたちが18歳と15歳の時だった。
そこで問題となるのが、遺族年金の受給権である。遺族年金は、老齢年金と同じように、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2階建てで、制度設計されている。先妻である私は離婚したから、もちろん元夫の遺族ではないので、遺族年金は全くないが、争点は子の存在だ。子は親が離婚しようとなんだろうと遺族であり、正当な相続人なので、遺族年金を支給されたって良いはずが、世帯は私に所属するため、遺族基礎年金は受給権が停止され、結果的に支給されない。これもおかしく不思議な話だと考えている。
しかし、遺族厚生年金の受給権は残されている。2階建ての2階部分だけは請求することができる。元夫の死亡を知ったきっかけは、養育費の未払い金について債権回収の手続きで強制執行を進める際に、裁判所からの郵送物が届かず、元夫の住民票を裁判所に提出する必要があり、住民票を取り寄せた時に知った。「除籍」死亡のことだ。すでに元夫の死亡から半年経過していた。死人に対し、養育費は請求できない。当然だが仕方ない。預貯金は相続人代理人として、金融機関を調べたが、すでに財産は全くといっていいほどになかった。今後は、養育費の代わりに遺族厚生年金を受給することでしか子らの生計費用を元夫の子どもとして確保する手段は残されていない。
そこで、遺族年金の支給手続きを年金事務所へ手続きに行った。その場で知ったが、再婚した元夫の妻が私たちに死亡を知らせず、とっくに遺族年金を受給していた。年金事務所の手続きは予約し、状況をあらかじめ伝えておいたにも関わらず、2時間以上かかり、職員はバックヤードに行き、離席したままで相当に待たされた。
本来、再婚した子のない妻と、遺族の子では遺族年金は、子に優位性を持たせている。第一受給権は子にある。他の相続人がいるのに死亡を知らせることもなく、遺族年金は劣後するにも関らず、後妻は一人でとっくに受給していた。そんなことだと思っていた。そういう夫婦だ。生存中から夫婦二人で、先妻の子どもたちを貧困に陥れ、障害がある子の生計を放り出し、無責任に離婚後1か月で再婚し、後妻は後妻で、夫の死亡後、安穏と遺族年金で暮らしている。算出すると後妻の遺族年金額は年間120万円程であった。構わず、こちらはこちらで、子らが正当な受給権を持つ者として、遺族年金手続きを進めた。養育費は途中から未払いになっていたが、強制執行を3回実行し、元夫の死亡日の2か月前にも差押をしていたし、元夫の母が健在であった頃は長い期間、元夫が頼んだ子らの口座へ、それぞれ月一万円の入金があった。この振込も養育費の一部として認められると考えていた。時間はかかったが申請から4ヶ月後、子らに遺族厚生年金の受給が始まり、ようやく子ら2人合わせて月額5万円ほどの生計費に充てる費用を確保することができた。遺族の子のない妻一人で月に10万円に対し、こちらは子ども二人で5万円とは随分な差ではあるが。さらに、子の遺族年金も18歳に到達する歳の3月までであり、障害のある子は20歳までである。それで支給は打ち切られ、また妻に戻るのだ。
安堵したのは束の間だった。私の子どもたちの遺族年金受給権が決定したことで、元夫の再婚相手が遺族年金の受給権を取消処分され、後妻は不服申し立ての審査請求をした。これが結果的に後妻に遺族年金の受給を再び認め、子供たちの遺族年金の受給権を取消されるというなんとも理不尽な結論になっていく。