t検定で仮説検定を行う方法(第4回)
仮説検定の基本とエラーについて理解しました。今回は、具体的な仮説検定の手法であるt検定について説明します。t検定は、2つのグループの平均を比較するための有力な方法です。
t検定の基本
t検定は、以下の3種類があります。
1標本t検定:
単一のグループの平均が特定の値と異なるかどうかを検定します。
2標本t検定(独立t検定):
2つの独立したグループの平均が異なるかどうかを検定します。
対応のあるt検定(ペアt検定):
2つの関連するグループ(例:同じ被験者の前後比較)の平均が異なるかどうかを検定します。
2標本t検定の手順
2標本t検定を例にして、具体的な手順を説明します。例えば、新しい教材が学生の成績に与える影響を検証する場合を考えます。
仮説の設定:
帰無仮説(H0):新しい教材の使用前後で成績の平均に差はない。
対立仮説(H1):新しい教材の使用後の成績の平均は、使用前の成績の平均と異なる。
データ収集:
新しい教材を使用したグループと使用しなかったグループの成績データを収集します。
検定統計量の計算:
各グループの平均と標準偏差を計算し、t値を算出します。
t値の計算式は次の通りです
p値の算出:
t値を基に、対応するp値を計算します。これは、t分布に基づいて行います。
結論の導出:
有意水準(通常は0.05)とp値を比較し、帰無仮説を棄却するかどうかを決定します。
具体例で理解する
次に、新しい教材が成績に与える影響を具体的なデータで検証してみましょう。
仮説の設定:
帰無仮説(H0):新しい教材の使用前後で成績の平均に差はない。
対立仮説(H1):新しい教材の使用後の成績の平均は、使用前の成績の平均と異なる。
データ収集:
新しい教材を使用したグループの平均成績は80点、使用しなかったグループの平均成績は75点、標準偏差はそれぞれ5点、4点、サンプルサイズは各グループ30人です。
検定統計量の計算:
t値を計算すると、次のようになります
p値の算出:
t値に対応するp値を計算し、例えばp値が0.0001であるとします。
結論の導出:
p値0.0001は有意水準0.05以下であるため、帰無仮説を棄却し、新しい教材は成績を向上させると結論付けます。
まとめ
t検定は、2つのグループ間の平均を比較するための強力な統計手法です。仮説設定からデータ収集、検定統計量の計算、p値の算出、結論の導出までの手順を理解することで、データに基づいた意思決定が可能になります。次回は、仮説検定における分散分析(ANOVA)について学びます。