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僕のはなし

上京して5年が経った。
東京、それは自立している人と出会える街。
少しのきっかけで大きな仕事が舞い込む、夢のある街。
歩いているだけで精神がすり減る街、東京。
自分を表現できる街、東京。
覚悟がないと生き残れない街、表現できないと埋もれる街、
それが東京。

東京は夢で溢れている。
芸能人がその辺歩いてたり、気づけば友達が有名になっていたり。
僕は俳優志望で東京に出てきたけど、今はフリーターと大差ない。
コロナでやる気を失い、そこから全く立て直せなかったからだ。
人間は楽に流されるのが基準の生き物だし
僕はそうやって例に漏れず流された。
東京は情報量が多すぎるから、一度自分を見失うと戻ってくるのが大変だ。
焦ってた。でも腐りたくなかった。
なんとかギリギリの状態で見て見ぬフリしたり、ちょっと見てみたり。

次第に癒しを求めるようになって、老人がいるようなところに
顔を出したり、働いたり、あと自然を感じる場所へ良く足が向いていた。

都心にとある純喫茶を見つけた。
店内はスナックのような造りで、テーブル席はソファが片面に続いており、右手にカウンターのある細長い形になっている。
老夫婦が経営しているっぽくて、基本的には一人営業。
その日はおばあちゃんがいて、お客は僕一人で貸切状態。
テレビでは孤独のグルメが流れている。
見てみたかったやつだなあと思っていたら、おばあちゃんが僕のソファ席の延長線上に腰掛けた。
見ず知らずのおばあちゃんと孤独のグルメを見ている状況に高揚感を覚えた。
仲良くなりたい反面、どこの馬の骨かもわからない若者がいきなり密室で2人の時に話しかけてきたら怖いかなとか、何話すんだとか、コーヒー飲みながら考えてた。
そしてふと横を見ると、おばあちゃんが寝ている!
無防備すぎる!
しかもキッチンの方からパチパチと音が聞こえない?
少し覗いてみると、底が焦げたパスタが鍋に入っている。
明らかに火から目を離してはいけない火力!!
おばあちゃん寝てるし。
さすがにキッチンはカウンターの中にあるから入るわけにもいかない、起こすのも急に肩叩いて心臓止まったら困るし。
タバコを一本嗜み、悩んだ挙句、バイトの時間も差し迫っていたので
会計という名目でおばあちゃんを優しく起こして、店を出たのでした。
都心にもこんなに無防備な店があることが心配になった。
同時に東京のおばあちゃんとの経験に感謝した。
そして僕はなんて東京人な考え方になっているんだと恐怖した。

僕は思う、東京人と東京生まれは別物なのではないかと。
なんというか、一般に東京人と呼ばれている人たちと、東京生まれを同じにしてはいけない気がしている。
だって東京に住んでいる人の半分くらいは、たぶん上京組だ。
彼らって、本当は助け合いたいけど様子見で声かけられなくて諦めちゃって他人に冷たくなっている人たちだと思ってる。
東京生まれは悪気なく他人の気持ちに無頓着で、自分の生をまっとうするのが普通、と言った感じ。
あぁだから総合的に東京人は冷たい印象がつくのか。
(※個人の感想です)
他人とのコミュニケーションが疎かになると不安になる人は多いと思うんだけど、そうやって一度自分で大きな想像の黒い渦を作り出しちゃうと、簡単には抜け出せないよね。
本質を理解できないまま側だけ郷に倣おうとすると自分の目的を見失う。
でもそういうのって他人が教えてくれる場合はほぼ無い。
ってな感じで、最近は教育についても考えさせられてた。

僕の家は至って普通、もしくはそれ以上。
そんな普通の幸せの中にいたのに僕は満足できなかった。
ずっと寂しかったし母という人間に依存しているタイプだった。
親は素晴らしいけど優柔不断な人だから万年貧乏人。
考えてみれば僕は昔から、他人の家庭と自分とを比べてる。
幼い頃から一番仲の良い友人は、4人家族で理想を形にしたような家庭。
他人を羨むのってガキの頃までにしたいけど、大人になってもやめられないよね、悲しい。

そしてある時、僕は東京の一等地と呼ばれるところに実家があるような友人たちに出会う。
彼らはとても良い奴で、金銭感覚も僕とは大差なく、むしろお金無いのかなと思わせるくらいだった。
それに彼らといると子供みたいな遊びがたくさん出来てすごい楽しい。
だから僕が彼らの生き方に気づいていくのは出会って何年も経ってからなんだけど、結論、お金持ちの教育というものを目の当たりにしていくわけだ。

まず、彼らはお金無いんじゃなくて、必要なことのために不要なものにはお金使わないようにしてただけ。
僕はお金ないの恥ずかしくて見栄張るタイプだから、それわかった時はすごい恥ずかしかった。
そんな感じで、彼らとの感覚の違いを叩き示される時もある。
学歴も根本の考え方も選択の仕方も違う。
彼らの親族に会うと、あたたかさに涙ちょちょ切れだし
でも自分の子は自分の子だよなと感心させられる時もある。
自分の脳みその貧しさや、彼らのふとした言動に差を感じて落ち込むことも多いけど、彼らから与えられるものも非常に多い。
今ある人生を最大限に楽しんでも良いんだなとか
僕は僕の納得のいく人生を歩むべきだよなとか。
それは僕の子孫にも繋がっていく事だから。
ひねくれずに受け入れた僕にも感謝。

一度は東京に埋もれてしまった僕だけど、
今は何事も楽しんでいれば、楽しいと思うことについてってれば、結果は後からついてくるんだと思えるようになった。
幸い親身になって話を聞いてくれる友人もいる。
僕は僕の機嫌を取り続けられる人間でありたい。

東京に出てこなければ出会えなかった人たちがたくさんいる。
東京に出てこなければできなかった経験や、考え方がたくさんある。
世界は東京だけじゃないし、想像もできないくらい広いと思うけど
僕は上京してきて良かったと思っている。
僕の人生計画表はまだまだこれから。
楽しい日々を継続していくのみ、俳優の仕事を取るのみ。

ここまで見てくれてありがとう。

マカロニ


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