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迫り来る「2025年の崖」日本経済を蝕むレガシーシステム問題とは?

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はじめに:DX推進を阻む「2025年の崖」とは? – 日本経済の成長を止める見えない足かせ

「2025年の崖」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?

これは、経済産業省が2018年に発表したDXレポートで初めて指摘された、日本経済に深刻な影響を及ぼす可能性のある問題のことです。

https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf


例えば、日々の生活を支えるインフラシステム、金融機関の基幹システム、製造業の生産管理システムなど、社会や経済の根幹を支えるシステムが、もしも老朽化によって機能不全に陥ったらどうなるでしょうか?

先日も埼玉県で道路の陥没事故が発生し、メンテナンスが行き届かない構造的な課題が問題視されるようになりました。

2025年の崖は、ITシステムの老朽化による経済損失の問題です。埼玉での道路陥没事故と同様に非常に深刻な問題にまで発展する可能性があります。

本記事では「2025年の崖」の背景にある構造的な問題を整理していきます!


「2025年の崖」の正体 ─ レガシーシステムがもたらす危機

定義と背景:年間最大12兆円の経済損失

「2025年の崖」とは、老朽化し、複雑化・ブラックボックス化した基幹システム(レガシーシステム)の維持・運用が困難になり、2025年以降、年間最大12兆円[1]もの経済損失が発生するという問題です。

12兆円という損失額は、日本の国家予算の約1割に匹敵します。例えば、2024年度の一般会計歳出総額は約112兆円ですから、その規模の大きさが理解できると思います。

もしこの12兆円を、医療、教育、環境対策といった分野に投資できたとしたら、日本社会はどれほど豊かになるでしょうか。

逆に、この巨額の損失が現実となれば、私たちの生活に直接的な影響が及ぶことは避けられません。

この試算の根拠となっているのは、レガシーシステムの維持・運用費の増大、システム障害による業務停止、DXの遅延による競争力低下など、多岐にわたる要因です。これらの要因が複合的に作用し、2025年以降、損失が加速度的に拡大していくと予測されています。

なぜ「崖」なのか? ─ 複合的な要因が危機を加速 – 単なる技術的問題ではない

この問題が「崖」と表現されるのは、まるで断崖絶壁から落ちるように、ある時点を境に状況が急激に悪化することを示唆しています。そして、その背後には、単なる技術的な問題だけではない、複合的な要因が複雑に絡み合っています。

2025年の崖の発生要因

人材の断絶 技術者の高齢化と若手IT人材の不足

レガシーシステムを扱える技術者の高齢化は深刻です。彼らは、COBOLやPL/Iといった古いプログラミング言語や、メインフレームと呼ばれる大型汎用機を操る、長年の経験と知識を持つベテラン技術者です。IPA(情報処理推進機構)の調査によれば、これらの技術者の60%以上が50歳以上であり、引退の時期が近づいています。

しかし、彼らの知識やスキルは、容易に代替できるものではありません。レガシーシステムは、長年にわたる改修や追加開発が繰り返され、複雑化・ブラックボックス化しているため、システム全体を理解し、適切に保守・運用できる人材は限られています。

一方で、デジタルネイティブ世代は、レガシー技術に魅力を感じず、最新技術を扱う企業や成長分野へと流れる傾向が強まっています。経済産業省の試算では、2025年には約43万人、2030年には最大79万人のIT人材が不足すると予測されており、技術継承が滞り、人材の断絶が深刻化しています。

デジタルネイティブ世代は、具体的にはクラウドやAIなどの最新技術を扱う企業に魅力を感じる傾向が多いそうです。
スタートアップ企業外資系企業は、高待遇自由な働き方最新技術に触れられる環境を提供し、優秀な若手人材を積極的に獲得しています。


その結果、レガシーシステムを抱える企業は、若手人材の獲得競争で不利な立場に立たされ、技術継承がますます困難になっています。まるで、魅力的な職場を求めて、優秀な若手が地方から都市部へと流出してしまうような状況です。

また、個人的にもエンジニアとして感じることが「システムの保守は面白みがない」ということです。
他の人が構築したシステムなおさら、その内容を理解するにも時間がかかるため非常に苦しい業務になります。

この辺りはAIを活用した既存システムのリプレイスを進めることが非常に求められていると思います。

システムの老朽化 – 20年以上稼働するシステムが全体の6割

日本企業のITシステムの80%以上がレガシーシステムに依存していると言われています。これらのシステムは、1980年代から2000年代にかけて構築されたものが多く、20年以上稼働しているものが全体の6割を占めると見込まれています。

長年稼働しているシステムは、ハードウェアやソフトウェアの老朽化が進み、故障のリスクが高まります。また、サポート終了した技術も多く、セキュリティ上の脆弱性が放置されたり、障害発生時の対応が困難になったりする可能性もあります。

さらに、レガシーシステムは、最新技術との連携が難しく、DXを推進する上での大きな足かせとなります。例えば、クラウド、AI、IoTといった最新技術を活用するためには、システムのモダナイゼーションが不可欠ですが、レガシーシステムがそのボトルネックとなっているのです。

※モダナイゼーション:古くなったシステム(レガシーシステム)を、新しい技術や設計で作り直したり、置き換えたりすること。

コスト構造の歪み – IT予算の9割がシステム維持費に消える異常事態:

多くの企業では、IT予算の90%以上が既存システムの維持・運用に費やされています。これは、まるで老朽化したインフラの維持にばかりお金がかかり、新しいインフラ投資ができない状態に似ています。

冒頭に記載した上下水道のインフラと似たような状況ですね、、

レガシーシステムの維持・運用には、高額な保守費用老朽化したハードウェアの維持費専門技術者の人件費などがかさみます。

その結果、新規技術への投資やDX推進に必要な予算が圧迫され、技術的負債がさらに増大するという悪循環に陥っています。


技術的負債の累積

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