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奇跡のインド10

お昼休みに部屋に戻って横になると、疲れが出る。同室のSさんはこの日、スワミジのお話を聞きに行く番だったので部屋には居ない。このままのんびり昼寝でもしようかとも思うが、街に繰り出す魅力も抗しがたい。迷ったすえ、結局一人で街に出かけることにする。

前日、利用者登録の待ち時間を利用して、アシュラムを出て右に向かって歩いてみたので、この日は左に向かうことにする。幸い、リシケシは治安がいいらしいので、特に怖いことはないが、牛や犬や猿がいるのが怖い。
牛に襲われることはなさそうだが、犬に噛まれたり、猿に引っ掻かれたりすると狂犬病にかかる。狂犬病は致死率100パーセントらしいから、噛まれたら血清を打たねばならず、そうするとなにかと厄介なことになるようだ。犬と猿には気をつけないといけないが、どっちもやたらたくさんいるのだ。街には興味深いものがいろいろ売っていて飽きないが、動物は怖い。
そんな思いをしながらも、私は橋を渡って向こう岸に行ってみる。私が見てみたいと憧れていたガンジス川を渡るのだ。興奮して何枚も写真を撮った。

向こう岸は、こちら側よりより混沌としていて、店も多い。露店で売っている食べ物もおいしそうだが、お腹を壊すのは嫌なのでパスする。いくつかの商店に入ってみるが、商品の値段もわからないので食指が動かない。
しかし、ストールやパシュミナ製品を売っている、ちょっと洒落た店を見つける。中に入ってみると、素敵なストールが手頃な値段で売っている。fixed priceと書いてあって、明朗会計だ。義母がストール好きなので、まずは1枚買っておこうと思うが、自分のぶんにしてもいいし、結局2枚買う。さっそく戦利品があって、この日は満足だった。

夕方は小さな部屋でキールタンを歌う会に参加する。しかし今度は楽器演奏付きだ。ハルモニウムという楽器演奏が付くと、キールタンはより一層楽しくなり、私はノリノリで歌う。
そのあとにガンジス川に移動して、アラーティの儀式に参加する。アラーティというのは、ガンジス川に祈りを捧げる儀式のようだが、やることと言えば夕暮れどきの中、歌を歌って火をガンジス川に向かってぐるぐる回す。意味はよくわからないが、神聖な感じがする儀式だった。私は儀式のあと、ガンジス川に足をつけてみたが、水は冷たかった。
そしてアラーティのあとも、例によってプラサード(お供え物のお下がり)が振る舞われる。この日のプラサードは甘いお菓子だけでなく、温かくて辛いサモサが配られ、実に美味しかった。でもこのあと、ダイニングホールで夕食もちゃんといただいた。


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