0.5の男
Amazonプライムで、0.5の男というドラマを見ている。
松田龍平演じる、両親と住む40歳の引きこもりの男(主人公)のところに、自宅の建て替えと同時に妹家族が引っ越してきて、同居する、という話だ。2世帯プラス引きこもりで2.5世帯、それが0.5の由来だ。
これが面白い。妹夫婦のところには、中学生の女の子と保育園に通う男の子が居るのだが、まず男の子が主人公になつく。子供は素直なので、主人公が悪い人間でないことを直観的に見抜くのだろう。戦隊モノのオープニング曲のダンスを、主人公が一緒に踊らされたりする。
そのうちいろいろ事件が起きる。ある日男の子は、保育園を逃げ出す。主人公の母が、消えた孫を探しに出かけようとするのだが、ひと工夫して主人公を自分の代わりに行かせることに成功する。そしてそれが主人公が引きこもりを始めてから、昼間に出かける最初の機会となる、というのが第2話の内容だ。
第3話は、おねえちゃんのほうに事件が起きる。思春期で、おねえちゃんのほうはちょっと難しい年頃だ。主人公のことは、キモいおじさん、としてしか認識していない。
しかし、転校して間もないその子は、学校にうまく馴染むことができない。疎外感を感じて学校をサボることになる。時間を潰すのにゲームに興じるのだが、対戦相手にゲーム界でカリスマ視されている相手(Q太郎)が現れる。実はそれが主人公なのだが、姪っ子のほうはそのことに気づかない。現実世界ではキモいと言っている主人公を、ゲームの中では師匠と呼んでいる。
ある日、不登校が親にバレて、女の子が逃げ込んだのは、あろうことか主が外していた主人公の部屋。鍵をかけて女の子が、今度はその部屋に籠城する。
その後、結局女の子は籠城をやめて部屋から出てくることになるのだが・・・。このときも主人公が問題解決の一翼を担う。籠城したくなる人の気持ちは誰よりもわかっているからだろう。これをきっかけに2人の距離は縮まる。
この話を見ていて思うのは、引きこもりの中年男であっても、役に立たない人間というわけではないことだ。主人公も甥っ子の影響を受けるし、甥っ子も主人公に助けられる。姪っ子も主人公に助けられるし、主人公も姪っ子と触れあって気持ちがほころぶ。この作品が主人公をそういうふうに描いているから、ではあるのだろうが、一見なんの役にも立たなそうな「0.5の」男であってもその存在はちゃんと人の役に立っている。そのことが私の心に響いた。
まだ第3話までしか見ていないので、続きを見るのがひたすら楽しみだ。
ちなみにNHKの夜ドラ「バニラな毎日」も、たまたま見てみたら面白かった。こちらには、役に立たなくてはならないことへの脅迫観念を持つ、登場人物が出てきた。
社会としても、個人的にも、役に立たないことを許容できる余裕を持ちたいものだ。
寒い季節は家でカウチポテトも悪くない。(了)